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その夜、グリファードがエルシアの食事中、エルシアより遅れて現れると、開口一番にエルシアと翌日外出する旨を伝えてきた。
「…………外に出してくれるんですか?」
「あぁ…………1ヶ月後、第二王子の生誕祭があり、その夜会に招待されている。夫婦同伴になるから、エルシアにドレスを新調しようと思って。外注も考えたが、此処に他人を出入りさせたくはないし、外出も目立つから避けたい事だが、監禁されていると言われては、夫として立場も無いからな」
---監禁していた自覚あったのね………私が此処に居る事を隠したがっているから、そう思うのよね
外出出来るのは嬉しいが、グリファードも一緒で違いなく、ヴァシムとどう連絡を取れるのか、と考え込んだエルシア。
「外出と言っても、私が所有する別邸に移動し、其処に外注を呼ぶぐらいなのだがな」
「……………そ、それは……玄関から馬車、馬車から玄関で、外を歩けない………て聞こえたのですが」
「そうだが?それでも外出には違いない」
その外出は常に、ヴィンザード公爵家従者達に常に囲まれているこの今と何ら変わらない。
「わたくし、ドレスなんて要りません。第二王子殿下のお誕生日の夜会にも行きません」
「……………外出出来るのにか?」
「わたくし、第二王子殿下をよく存じ上げませんし、わたくしが参加した所で、殿下を拝察する事は無いでしょう………殿下ご自身、社交場に出られていたお話も聞いた事ありませんし………それに、参加してわたくしに利があるか如何かを考えてもありませんよね………あるとするならば、友人に会える事ぐらいです」
友人には会いたいし、ヴァシムも来るかもしれない。それが確実なら参加したいが、グリファードと外出して、ドレスを新調し、そのドレスでヴァシムの前に立ちたくなかった。
「奥様」
「何ですか、スチュアート」
「今年は、第二王子殿下はご参加されるんですよ。先日、第二王子殿下はご結婚なさり、そのご報告も兼ねて」
「……………それは朗報ですね………噂あったかしら………全く予兆無かった気が………」
「スチュアート、ソレは今エルシアに話さなくても」
「本来、国を上げて祝賀せねばならぬ事なんですが、第二王子殿下が頑なで、時期尚早だと仰ったとか………ご主人様も仕事が落ち着かれたら、奥様ともっと社交場にお出になって下さいね」
スチュアートは少しでも良いから、グリファードが第二王子としての責務を表立って行動して欲しいのだろう。
まだエルシアの中で、グリファードが第二王子だと予想もしていないし、第二王子の誕生日等、如何でも良い事なのだ。
「……………ドレスの事ですが……」
「行く気になったのか?エルシア」
「新調は結構です…………今ドレスは充分用意されて頂いていますし、その中で選びます」
「奥様、それは駄目です!ご主人様とお衣装を合わせなければ!」
「合わせたくありません。それが例え、ヴィンザード公爵閣下の恥になろうとも」
「奥様!」
「スカーレット、エルシアの好きにさせてやってくれ。一応、衣装は合わせた物も用意し、当日迄に決めれば良い事だ。まだ日はある………エルシアがどう思っていようと、私が君を手放す事もないし、私の君にした行動は謝罪すべき事なのも分かっている………しかし、私がそう行ったのには理由があり、今はそれを言えない。君が理解出来た時、私は率直に全てを話そう………その代わり、君もその感想を正直に話してくれ。全て受け止め、どうしたいか話し合いたい」
「……………わたくしの気持ちは変わる事はありません…………ごちそうさまでした」
大きな邸だろうに、エルシアが使う一室で食事するぐらい、徹底した極秘生活なので、食事を終えたエルシアは、1人離れた窓際のソファに座り直り、グリファードから離れ、読みたくもない本を適当に開き読み始めた。
---私が隠されているのは、ヴァシム様が私を探しているからでしょ?それ以外に理由があるなんて信じないわ…………仮面公爵閣下の仮面の下の素顔も火傷の痕が醜いから隠すのでしょう?結婚相手だって、仕方無く私にしたのよ………簡単に手に入ると思われたのは心外でしかないわ
1人離れたエルシアに構わず、グリファードはスチュアートやスカーレット達と和気藹々と話す声がする。
それだけ見れば、グリファードは従者達に慕われているのは分かってしまうし、閨行為以外はエルシアはグリファードに大事にされていると感じ、呪い殺してやりたい、という感情も薄まってしまいそうになっていた。
---憎ませてくれないのね………恨み辛みで罵っても、あの人はただ聞いているだけ。否定も肯定もしない。ただ…………恨んでいいんだ、と返すだけ…………分からない………あの人の事…………私に、乱暴な言葉を言っても、仮面の下に見える赤い瞳は優しさを感じてしまう………
「エルシア、如何したんだ?頭を抱えて………頭痛でもするのか?」
「っ!……………い、いえ………」
「……………本、逆さまだぞ?読書に飽きたなら、何か他の娯楽でも………おい、何かあるか?」
「や、優しくしないで下さい!」
頭痛だとグリファードは勘違いし、エルシアの額に手を当て確認されたが、エルシアはグリファードの手を払い除ける。
「夫が妻を心配しては駄目か?」
「っ!…………申し訳ありません………頭痛ではありませんし、大丈夫です…………少し考え事をしていただけですし」
「そうか………スカーレット、湯浴みは出来るか?」
「はい、準備は出来ております」
「それならば、エルシアに湯浴みを………休ませてやってくれ」
「……………え………」
「今日はもう休むと良い………毎夜、私は抱き潰し過ぎた様だ………今夜は自制する………おやすみ」
毎夜、抱き潰される運命だと思っていた。
1週間、朝迄抱き潰されて、確かに疲れが取れた気はしなかったが、何もする事が無いエルシアには身体を休める時間等幾らでもあり、夜になれば結局朝迄グリファードに付き合えていたぐらいだ。
グリファードも食事を終えていた様で、エルシアの頭を撫でて部屋を出て行った背中は、何処か寂しさを感じたし、エルシアもグリファードの不思議な行動に、呆気に取られるしかなかった。
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