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しおりを挟むそれから更に1週間、帰りは遅いものの、グリファードは毎日帰ってくる様になり、その間毎夜、エルシアは愛を囁かれながら、貪られる毎日を送っていた。
今思えば、不在の時はちょっと寂しさを覚えた日々を懐かしむ程だ。
それなのに、時間は過ぎ去り、第二王子の誕生祭、言わばグリファードの誕生日の夜会の当日が来た。
「っ!……………エルシア……最高だ、と言いたい!今迄君と会ってきた日々で、一番綺麗だ!」
「あ、ありがとうございます………グリファード様………」
夜会のドレスをまとい、王城に行かねばならぬ時間ギリギリ迄、妻を褒めちぎる夫グリファードに、少し引き気味な妻、エルシア。
夜会開始時間が狭っているのに、出発もしようとしないグリファードは、エルシアの回りをあらゆる角度から眺めていて、凄く滑稽だった。
「グリファード様、王城に行かなければならないんじゃ…………王城は此処から遠くないのですか?」
「……………あぁ、馬車でゆっくり行っても、5分は掛からない」
「……………は?」
「お、奥様!髪が少し乱れてしまいました!直ぐに直します!」
今迄、隠してきたグリファードの素性を、グリファードがバラしそうになっているので、スカーレットが筆頭に侍女達が、言葉を遮った。
それなのに、自らバレそうな事をグリファードが言うので、慌てた様子。
「直したら行こうか、エルシア…………どうせ替え玉用意しているから、遅れても問題無いしな」
「……………え?何か言われました?」
「いや、気にしなくて良いよ。私の独り言だ」
しかし、もう疑われて仕方なかったのだ。
エルシアがグリファードと住む邸は王城内。5分程で着いてしまう場所に、目張りした馬車で向かっても、今迄誤魔化した商店街への時間を考えたらおかしいからだ。
「……………あの………グリファード様………」
馬車に乗り、目張りされていない風景を目撃したエルシアは、グリファードに問う。
「うん……………まぁ、聞かれるのは覚悟したが…………その質問は、帰りで良いかな………着いちゃったし……」
目の前の国の象徴である王城。
門さえも通った形跡も無く、ただ森を抜けただけ。
エルシアの疑問の答えが、グリファードから聞けないのなら、予測して答えを見出すしかない。
邸から外を見た景色は、緑生い茂る木々だけ。
その木々は背が高く、見える空は狭かった。
王城は5階建てだ。邸も5階建てならば見えなくて当たり前で、木々が遮っているとしか思えず、しかも王城と邸の大きさに大差は無かった。
「さぁ…………降りようか、エルシア」
「……………もう、嘘偽り無く、教えて貰いますから………夜会終了後………」
それでも、エルシアはグリファードが第二王子だとは思ってもいない。
隠し事をされる事が嫌だっただけの事。
「あぁ、勿論だ…………今夜、全て君に話す………それで、君が私を…………いや、今は止めておく」
「な…………何なんですか!一体………」
「君に私が嫌われても…………私に目の色を変えても…………私は君を愛してる事は変わらない」
「……………グリファード様………わ、わたくし………不安になります!」
「……………ごめん……だが、夜会中は君から離れる事はないから」
意味深過ぎて、グリファードへの信頼が揺らいでしまいそうになる。
グリファードにエスコートされていても、足元がふらつく思いになったエルシア。
王城に入り、国王、王妃、王太子が入場し、なかなか姿を現さなかった第二王子は、顔さえ晒さずに人影だけ写る衝立を挟んだ姿で、夜会に登場したのだ。
誕生日を祝う言葉の返答も、王太子マスタングが第二王子が病弱だから、と代弁し姿を見せてはくれない。
「王族方に挨拶行こうか、エルシア」
「……………はい、そうでしたね………お祝いしなければ…………グリファード様がお世話になっている王太子殿下にもご挨拶したいので………」
夜会開始から大分時間が経ち、エルシアも両親や友人達に、久しぶりに会えた。
両親には泣かれ抱き締められ、余程心配をしてくれたのだろう。両親はグリファードに何度も頭を下げて感謝を述べていた。
それでもエルシアはグリファードが気になって、両親の言葉も入っては来ず、国王一家の前に来てしまった。
「……………本日は、第二王子殿下お誕生の祝辞を申し上げたく馳せ参じました。ヴィンザード公爵、妻のエルシアがご挨拶致します」
グリファードが国王一家の前に立つと、頭を垂れ、所作の美しい挨拶に変えた。
「……………全く……ヴィンザード公爵………余が其方の願いで結婚を承諾したのに、やっと其方の愛妻を連れて来たか………待ち侘び過ぎて寿命が10年縮んだ………のぅ?妃や」
「本当ですわ…………可愛らしい奥様だこと………お似合いよ、ヴィンザード公爵」
「……………ありがたき幸せのお言葉……」
「本当だよ…………私が婚約者さえも決まってないのに先にするんだから…………上司である私に敬意あるのかな?ヴィンザード公爵」
「……………王太子殿下にはありませんね……」
「グ、グリファード様!」
それは流石に何も知らないエルシアは焦るだろう。
「あははっ!如何してそんなに可愛らしいんだろうね、君は」
「王太子…………少しは場を弁えぬか」
「はははっ………陛下、申し訳ありません……部下であるヴィンザード公爵を信頼しているからこそです、お許しを」
「……………許せ、ヴィンザード公爵」
「構いません………いつもの事なので、慣れております…………此度は、我が妻との婚姻を許可頂き、礼も申し上げたく………」
「其方が幸せなら良い…………エルシア夫人を大切にするが良い」
「大切にするのは勿論の事…………生涯掛けて守りたく思っております」
いつになく、真剣で熱の篭ったグリファードの言葉に、隣で聞いていたエルシアは完全に、グリファードへの思いが固まった。
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