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39 *グリファード視点
自供しないヴァシムやヴァシムの親族達の中で、話そうとしない者達には、自白剤が使われ、次々と明らかになるウォーレス侯爵家の実態。
ヴァシムの祖父が、外国で目にした薬草を、自分の住む国の領地に植えて、同じ様に精製したのが始まりだった。
株を増やし、親しい者達に分け与え、それがこの国では確認が取れない植物と知ると、口コミで領地内で広まっていった。
需要があるとわかった、前々代のウォーレス侯爵は、独占市場にしたくなり、息子である前ウォーレス侯爵と共に市場を広めると、この薬草に中毒性と幻覚作用が現れ、国は非認可とし、生産や取り扱いに厳罰を処する法を作った。
それに面白くないのはウォーレス侯爵家で、取締りが後手に回ってしまった国が悪い、とばかりに証拠を残さない様に手を回し、闇取引のみに徹底した。
既に味を占めていたウォーレス侯爵家は、更に薬物として、幻覚作用の副作用が出ない様に、研究を重ね始め、治験をする為に親族を選ぶ様になった。
前ウォーレス侯爵の前妻、ヴァシムの母の弟、ライアー子爵に事業を手伝って欲しい、と頼み、治験者とさせて薬物中毒者にしてしまう。
その異変を感じていた、ライアー子爵夫人とヴァシムの母も止めさせようとしたが、ヴァシムの母も夫に逆らった事により、跡取りであるヴァシムが産まれてから、同じ様に治験者にされ死亡していた。
ライアー子爵夫人は、夫と義理姉の不審な死に、心痛が重なり、心労の薬の過剰摂取で亡くなってしまう。
これ等は書面では証拠は出ては来ず、主に前ウォーレス侯爵の自白剤からの自供となった。
「胸糞悪い!」
「同感です」
自白剤で聞き出してきたスチュアートが、グリファードに報告をしたのは、エルシアとグリファードの結婚式から、更に数日経っていて、毎日グリファードの苛立ちは増していっていた。
「これ…………陛下や王太子には知らせてあるか?」
「はい、同じ報告が行っています」
「直接手を掛けたのは、ライアー子爵家の血筋だけか………」
「私も叔母はヴァシムを産んでから、亡くなったと聞かされてましたけど、良心がある方だったから、殺されたと知った時は、目の前の叔父を殴り殺してやりたくなりました………」
「我慢したんだから、お前も良心があるんだよ………裁判で罪状が決まる迄は、心が休まらないだろうが、我慢してくれ」
中毒者が増えて、その治療法さえもまだ確率はされてはおらず、中毒症状者は隔離生活をさせられている。
それは、その中毒者達の生活そのものを脅かし、家族を悲しみに追いやっているというのに、私欲を肥やし続けていたウォーレス侯爵家の為さり様には、グリファードも怒りしか向いてはいない。
「こんな報告………エルシアが知ったら、悲しむだけでは済まないな………知っていたら、止めさせたのに、と言いそうだ」
「今、妊娠初期なのですから、心痛になる様な事はお知らせしない方が良いかと………ヴァシムに対する気持ちは消え去ったとは思いますが、愛していらっしゃった男ではあるので………」
「……………嫉妬するから、そのエルシアの気持ちを代弁する様な言葉は慎め」
「世間一般論に過ぎませんよ………というより、世論でそう呟く者も居ないとも限りません。婚約期間が長く、結婚式の招待状も送られていた時期に、結婚するどころか別の男、グリファード殿下と結婚したんですから、勘繰る輩は多い筈です」
結婚する相手を条件の良い男に乗り換えた、と真相を知らぬ者は言うかもしれない。
先見の明があった、と言う者ならまだ良いが、1人だけ助かっておいて王子妃か、と世間では見られ始めているエルシア。
エルシア本人は、悪阻に堪えながら、王子妃教育の勉強もあり、王城内で姿を見られていて、その目は温かい物ではない。
「ちょっと、エルシアの様子を見てきて良いか?」
「駄目ですよ。エルシア妃も多忙で、勉強する事が山積みなんです。スカーレットが常に傍に居て何故か同じ様に勉強していますが、そういえば何故なんです?」
「視野を広げるには良いじゃないか。スカーレットだって勉強してきた事は、侍女として役立つ事しかして来なかった。お前が陞爵となれば、働く事も減らせるだろうし、令嬢として自分向上させたいんだろう。エルシアもスカーレットと一緒なら頑張れる、と言ってるんだし、気が紛れてるんじゃないか?」
スカーレットの気持ちはまだ固まっている様には見られておらず、それでも、もしもという事もある。
マスタングからの求婚をスカーレットが承諾したら、スカーレットは王太子妃になるのだから、その為の勉強を始めても早くはない。
むしろ遅いだろう。
そして、反対意見が出る要素は、出来るだけ除去するに限るのだ。
「まぁ………エルシア妃の邪魔さえならなければ、私は口出ししませんが………」
「裁判予定日迄、日は無いんだ。スチュアートは出来るだけ沢山の情報を引き出せよ」
「分かってます」
ウォーレス侯爵家の裁判予定日迄、どこ迄判明するのか。
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