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婚約発表
しおりを挟む王都に着いたアニース達。
リュカリオンに世継ぎ誕生での祝いで賑やかなのかと思っていた。
2ヶ月程産まれてから経つ筈なのに、何処もかしこもお祭り騒ぎなのだ。
「こんなに賑やかだったか?」
「いや?………皇子誕生を祝うにしても長いな………。」
不思議に思うアニースとタイタス。
「本当に、ここ最近はおめでたい事続きだな。」
「皇太子殿下ご成婚、第二皇子ご成婚、皇女誕生に、第二皇子の双子のお子様誕生に、皇太子殿下のお世継ぎ誕生に、第三皇子婚約………この2、3年でめでたい事づくしだ!」
「……………え?もう発表されてる?」
「……みたい……だな……。」
「ど、如何して?」
「セシルが隠してた事と関係あるとか?」
訳が分からず、戸惑っていると馬車は王宮に着いた。
「お帰りなさいませ、タイタス殿下、アニース様。」
馬車を降りると、カイルが出迎える。
「ただいま…………なぁ、何でもう発表されてるんだ?」
「兄から聞いていませんか?」
「聞いてないから、カイルに聞いてる。」
「えっと…………ここでは……陛下がお待ちなので、先ずは謁見の間へ………。」
衛兵や、他の貴族達の目もあり、カイルも言葉を濁す。
謁見の間には、既に皇帝、皇妃、リュカリオン、トーマス、コリン、ウィンストン公爵が待っていた。
「父上、ただいま帰りました。」
「うむ、ボルゾイの長旅ご苦労だった。報告は既にセシルからの手紙で知っている。ジャミーラ、ヘルン両姫の件に関しては申し分ない結果であった。サマーン王は非常に残念だったが、アラム王にかの姫達の処分に満足と共に、期待している、と私からも書面を送っておいた。」
「…………はい。」
「………しかし、だ………タイタス。」
「…………?」
何やら言いにくそうな皇帝に、苦笑いするリュカリオンやトーマス、そして困った顔の皇妃やウィンストン公爵。
「何故、ヘルン姫から渡された飲み物を飲んだ?」
「!!………そ、それは……。」
「セシルの判断は正しい………とは思う………アニース姫も大変だったろう……しかし、全裸で部屋を出て、廊下でセシルに詰め寄り騒ぎを起こすとは………それにより、お前は全責任を持って、アニース姫を早く娶らねばならなくなったのだという事は分かるか?」
「……………は……はい。」
「ボルゾイならず、レングストンの侍従達もお前がアニース姫との仲を、そう思っておる。国内外、しかも即位式があるボルゾイには、諸外国の要人も居たのだ………だから、お前達が居る部屋に、誰も近づかぬようセシルが居たというのに………お前はアニース姫の品格を落としたと思わぬか?」
「……………。」
「あ、あの!私が、全部受け止める、とセシルに入れて貰ったのです!タイタス殿下だけのせいではありません!あの時、私が寝てなければ、タイタス殿下を全裸で廊下に等出させませんでした!」
言葉に詰まるタイタスに、アニースはフォローをする。
「アニース姫も、タイタスに嫁ぐと決められた事に感謝する。しかし、其方も無謀と言えば無謀………セシルに唆されたのだとは分かるが、もし結婚前に子が出来たらどうするつもりだったのだ?レングストンはそういう事を好まない風習なのだ………其方自身の身もこの馬鹿な息子から守らねばならぬ。」
「………申し訳ありません………避妊はしてくれましたから、妊娠の兆候はありませんので、ご安心下さい。」
アニースも言いたくないだろう、性の話。
「陛下、それぐらいになさいませ。」
「ユリア?」
皇妃が皇帝の咎める言葉を遮る。
「アニース姫………気にする事はありません。レングストンの、特にこの王族の男達は、性欲が強い様なので、アニース姫が妊娠したとしても、誰も咎める事はありませんわ。」
「皇妃様………。」
「母上!!」
「ユリア!!」
「リュカなんて、ナターシャ妃の結婚式迄待てませんでしたし、トーマスだってトリスタンで閨のしきたり等という事を婚約前にしてしまいましたから、同じようなものです。」
「…………母上………。」
「あれ程宰相が注意深くしていても、それを掻い潜る悪知恵が働く息子達ですもの、まだそれを思えば、媚薬を酔い覚ましの飲み物だと騙されたタイタスは可愛いものですわ。」
リュカリオンとトーマスは本当の事なので言い訳も出来ない。
皇妃のこの言葉に、ウィンストン公爵は珍しく笑っていたのだった。
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