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目覚め

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 シヴァが目覚めたのは、翌日だった。
 丸一日、寝て体力を回復したのである。
 ジュリアナもシヴァが寝る部屋に付きっきりでいられないので、ソロに任せていた。
 連絡の術は、アレクセイの侍女が、ジュリアナに伝えてくれていた。
 ジュリアナの侍女ではバレてしまうからだ。

「アレクセイ様は近衛兵を城内に寝かしている等、何を考えておられるのか……。」
「意識無くなった者らしいですよ、王女の公務に付添って、突然倒れたとか、王女の美貌に倒れた軟弱者ですな!」

 はははははは………。

 そんな声をわざわざシヴァが居る部屋の前で平然と言う貴族達。
 ジュリアナが出入りしたら何を言われるか……。

「………言わせとけ、ソロ。」

 目覚めたシヴァは、ソロが明らかに不機嫌なのに気が付いている。
 自分が寝ている間に、何度もあったんだろう。

「わたくしの美貌が何か?開けてくれます?わたくしを助けて戴いた方に、近衛だろうが、貴族だろうが、平民だろうが、敬意を表すのは当然。お兄様がわたくしが無闇に外出しなくてもいいように、ケアを此方にと考えてくれたのです。可からぬ噂を立てては、休める身体も休めませんわ。」
「ジュリアナ王女様………。」

 貴族達は一礼し、そそくさと立ち去っていく。
 アレクセイの侍女に連れられ、ジュリアナも部屋に入ってきた。

「ジュリアナ!大丈夫だったか?」

 ゴホゴホ……。

 ソロが咳払いをする。
 
「………この度は、危険を顧みず助けて戴いて誠にありがとうございます。お元気になられたようで、良かったですわ。」

 ジュリアナがシヴァに一礼し、アレクセイの侍女に目配りさせる。
 ソロも同様だった。
 2人の関係はまだ秘密裏なのだ。

「………ジュリアナ王女様、この様な者を回復の場に使わせてもらい、何とお礼を申せばいいか………感謝致します。大分回復しましたし、暫くしたら、帰りますので。」
「セリナ、お兄様にはお伝えしてあるのでしょう?」
「はい、目覚められた事は直ぐに。」
「この方はそのまま帰らして良いのかしら?」
「確認してまいります。」

 セリナが部屋を出たのを確認し、ジュリアナとシヴァは見つめあった。

「良かった、怪我も無くて。心配したのよ?いつ目覚めるか……。」
「流石にアレは辛かったな………兄上の指輪のおかげだ。直接礼を言えないのが辛いんだが、兄上は俺に会いに来て下さらない……。」
「来たわよ、寝てる時に。指輪無いでしょ?お兄様が指輪を外して持って行ったわ。」
「………あ、会いに行っていいのか………な。」
「意識が無いから、お兄様も近くに来れた、と仰ったから、無理じゃないかしら。…………でも何度か遠くで見てたみたい。シヴァの事。」
「………ズルい、相変わらず……。」
「アレクセイ様ですから。」
「お兄様だから。」

 ショックを受けているシヴァに追い打ちを掛ける、ソロとジュリアナだった。

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