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アッシュという男
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ミレーユは風呂場に入ったが、身体を洗えなかった。湯船には水が張ってあったが、そこに入る気にはなれないまま、湯船に手を付き倒れる様に意識を失う。
「ミレーユ、湯を持って来………ミレーユ!」
「…………す~………す~……」
「………寝てやがる……ちょっとがっつき過ぎたか………仕方ねぇなぁ……」
アッシュはミレーユの身体を拭き直し、ベッドに運ぶ。
「…………あ、しまった……敷布変えてねぇ……」
ミレーユを抱き上げたままなので、倒れない様に、椅子を壁に足で移動させ、凭れさせる様にミレーユを降ろすと、敷布を慌てて変えた。
「面倒な女だぜ………この分だと暫く寝てるな………」
ベッドに寝かせると、簡単な食事をベッド脇に用意だけしておいて、アッシュは山小屋を出て行った。
♢☆♢☆♢☆♢☆
ミレーユがあれから起きたのは、翌日の午後だった。
「起きたか」
「……………えっと………」
「風呂、用意しておくから、これ食ってろ」
ベッド脇にあるパンと野菜のサラダと果物。アッシュのものだろうか、男物のブカブカのシャツを着させられていた。 肌ざわりの良い白いシャツに、山小屋が住む男にしては高価な様な物に思う。
「…………美味しい……パンも野菜も……」
涙が出る。砦から出た後に食べたパンもチーズも干し肉も美味しかった。裕福な食事ではないにしても、ミレーユにとってはご馳走だ。
「食べさせてあげたい…………お父さん、お母さん………ミルド……ミューゼ……」
カチャ。
「!!」
「………何泣いてんだ?」
「い、いいでしょ!貴方には関係無いわ!」
「…………あ、そう……所で、お前は料理出来るのか?」
「作れるけど……」
「洗濯は?」
「馬鹿にしてる?農家の娘よ!貴族の令嬢なんかじゃないんだからね!」
「……………まぁ、そうだろうな……じゃあ、俺がここに居ない間、掃除洗濯、あと料理は頼む」
ベッド脇に椅子を持って来て座るアッシュは、ミレーユが食べていない果物を摘みながら話を続ける。
「私にくれた果物じゃないの?」
「食っていいぞ?」
「食べるのに、貴方が食べたら意味ないじゃない」
「果物で胸デカくなるなら、万々歳だな」
「む!………胸!?」
「小せぇよ、お前の胸………起きれるなら何着か服用意しておいた。そこのクローゼットに数着動きやすそうなワンピースを入れてあるから自由に着ていい」
それでもアッシュは葡萄が好きなのか、口に入れては直ぐに房から取って口に運ぶ。
「ねぇ、服もだけどこの首輪は外せないの?」
「それは、お前がまだ『借り入れ』状態だから外せない」
「『借り入れ』?」
「…………う~ん……簡単に言うと、既婚者か未婚者の区別で、首輪は色で組みが分かれてる………1組は今回お前だけだったが、未婚者で所有者が居る証明になるんだ………お前の育った国で言えば『婚約者』、かな」
「は?何で貴方と婚約してるのよ!しかも所有権振り回されていい気分じゃないわ!」
ミレーユは、腹が立ちアッシュに詰め寄る。
「言っただろ、昨日………グレイシャーランドには女が非常に少ない……産まれる子供で女が産まれるのは本当に稀でな………産まれた女児にも平民だろうが貴族だろうが、産まれた直後に『婚約者』が決まる程だ。だが、一妻多夫制の国じゃない………過去その婚姻関係が推奨されていたが、夫同士が争いを起こす事件が多発し、前国王が一妻多夫制を廃止した………それにより一夫一妻制になった国の男は独身ばかりになるし、女が産まれないから近隣諸国に女を譲って欲しい、と掛け合っている」
「…………だから、出稼ぎは未婚女性に、て事なのね?」
「勿論、無料でとは言わない………働き口を探す、結婚したい未婚女を、と条件付きだ………争いは好まんからな、現国王も………だが……お前の村の領主は………」
「お金を着服してる………多分………村には何も恩恵は無かったわ」
「…………農家の娘にしては本当に頭がいい………読み書きも出来ない娘が大半だが、お前は読み書きは?」
「……………出来るけど……」
「………なら、何冊かお前に、暇つぶしをやろう………衣食住は心配するな……掃除洗濯料理、それだけやれば後は何をしていてもいい………その首輪を無理矢理外さなきゃな………その首輪は、所有者の身分を証明する………未婚者であっても、その証明が分かればお前は、男に襲われる事はない」
「……………貴方以外?」
「……………クククッ……そうだ…………お前は本当に面白いな……」
「…………どうもありがとう」
ミレーユはアッシュに気に入られた様で、ミレーユとの会話を楽しんでいる様だった。
「食ったな?………風呂入ってこい…………立てるか?ミレーユ」
「………多分」
「何なら、一緒に入るか?」
「結構!!1人で入るわ!!」
薪を焚き、風呂を用意したのはアッシュだ。感謝しなければならないが、アッシュは一言余計だ。
無理矢理、純血をアッシュに奪われたミレーユは、素直にアッシュを許すつもりは無かった。
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