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ライオネルの不運
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馬車に馬が付けられ、ライオネルを乗せたアスラン。手当てはアルジャーノンの兵士にさせれば良い。
「エヴァーナとの国境砦しか通行を許可しない………即刻、国王を連れて帰れ!!」
「戦争だ!!戦争になるぞ!!」
「安心しろ、ライオネルにそんな余力は無い」
アルジャーノン兵士達に、戦いを挑まれても、既に痛みで意識が無い状態で説得力も無い。
「戦争したかったら兵士を立て直して出直したら?それだけの財政があったらね」
「ロ、ローウェン様は兄上を心配ではないのですか!?」
「別に?如何でもいいよ、そんな奴………ほら、さっさと治療しなよ、医療班も居るんだろ?」
アルジャーノンから連れて来た医療班が必死にライオネルを治療しているが、滞在許可は一切与えず、アルジャーノン兵士達を追い出したアスランとローウェン。
「姿が見えなくなったら、僕も行くよ」
「そうだな………後は任せた」
「もっと早く帰りたかったけど、それも運命………ちょっと長くなるし、帰って来れないかもだけど、落ち着いたら必ずナーシャを呼ぶから」
「あぁ、早くしてやってくれよ………親友」
「へへへ……親友と思ってくれてたんだ」
「当たり前だろ?ライオネルから俺を守ってくれたのは他でもないお前だからな」
「ありがとうね、アッシュ」
「礼だと思ってくれ」
「……………え?足りな……」
「早く行け!!待ち伏せするんだろ?」
ローウェンが調子付きそうで、アスランはローウェンの言葉を遮った。
ライオネル1行が離れて行くと、ローウェンが馬車に乗り込む。
「仕方ないから、アッシュが寂しく無いようにライオネルを送り届けたらまた直ぐに戻ってくるよ………アルドール公爵が下準備してくれてたから、ちょっとなら帰って来れる筈だしね」
「それは任せる……いい国にしろよ、アルジャーノンを」
「任せてよ!何の為にグレイシャーランドの国政を担って来たと思ってんの?」
「……………だな……助かったよ、俺も」
「行ってくる!」
ローウェンの乗せた馬車は出発し、アスランは王城門の騒ぎの鎮静を兵士に任せ、城に戻ろうとする。
「………ナーシャ」
「くっ………うっ……ローウェン様……」
「見送りぐらいすれば良かったじゃないか」
ナーシャが泣いて王城入り口で立っていた。
「お兄様………」
アスランに抱き着くナーシャ。そのナーシャの髪を撫でて慰めるアスラン。
「だって…………ローウェン様はこれから起こす事、私に見て欲しくないんでしょ?」
「…………まぁな……」
「なら………私は待つ、て決めたの………私……ローウェン様の影の部分も癒せる様に頑張るから!………私、アルジャーノンに行っても頑張るから!いつまでも、ローウェン様の親友で居て!お兄様!!」
「当たり前だろ…………ローウェンの統治なら、今迄より往来がしやすくなる筈だ」
「うん………うん………きっとローウェン様……無事に帰って来るもん!私に『ただいま』て言ってくれる筈だもん!!」
「あぁ…………ローウェンには、リタの義父上も居る………大丈夫だ」
これから起こる事は、近隣諸国を震撼させた。たった数時間で、アルジャーノンの内乱が終わるのだから。
「陛下!!………陛下が意識を取り戻されました!お気を確かに!!」
「………う………るさ……」
馬車で揺られながらエヴァーナの国境付近に到着し、ライオネルを砦内で療養させようと、先触れの兵士を出した後で、休憩を取っていた所に、ライオネルの意識が回復したのだ。
「ぐわっ!」
「わぁぁぁっ!敵襲だぁ!!」
「な………何……だ……?」
「陛下を逃がせ!」
騒ぎになるアルジャーノン陛下達。
「ライオネルを探せ!」
「首を取れ!!」
砦側から、アルジャーノン兵士達も駆け付けて来る。グレイシャーランドとエヴァーナとの国境砦にも関わらず。
「味方兵だ!」
「助けてく…………ぐわっ!」
アルジャーノン兵士達がライオネル率いる兵士達に襲い掛かる。グレイシャーランドの兵士との共闘だった。
「何故同胞を襲ってる!!」
「わ、分かりません!」
よく見ればライオネル側の兵士を襲うアルジャーノン兵士の二の腕には赤いスカーフを巻いていた。
「愚王、ライオネルを倒せ!!」
「な!何だと!謀反だと!!」
次々と倒されるライオネル側の兵士達。もう、残るのは医療班に守られたライオネルのみ。
「いい姿ですな」
「!!………そ、その声……」
「大方、我が娘に言い寄って、処罰されたのでしょう」
「!!」
「全く………情けない姿だね、ライオネル」
声の主が順番に兜を脱ぐ。
アルドール公爵、ヴァルム元伯爵、ローウェンがライオネルの前に並んだ。
「な!何故待ち伏せ出来る!!」
「知らなくていいんだよ、アンタは………知った所で、もう使えないでしょ」
「な………んだ………と……」
「貴方には死んで貰いますよ………我が娘に、あの世で会ったら、謝って下さい」
「アルドール公爵………それは無理というもの………この男は、奈落に墜ちるのです……天に召されたシャルロット嬢には会えませんよ」
「…………そうだったな……なら、近頃潰した領主の元ですな……」
「何か言い残す事あったら、伝えとくよ?まぁ、母上ぐらい?それ以外は却下」
「ふ、ふざけるなぁぁぁぁ!!」
ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!!
2人の男がライオネルに剣を刺し、ローウェンがライオネルの首を跳ねた。
「「「……………」」」
沈黙が流れる。そして、謀反とされたライオネルを裏切ったアルドール兵士達は歓声を挙げた。
「ライオネルの悪政が終わったぁ!!」
「やったぁ!!」
「ローウェン様………いえ、ローウェン新国王……」
「…………うん……」
ヴァルム元伯爵から声を掛けられ、ローウェンは足元に転がるライオネルの頭を掴み、掲げた。
「今よりこの愚王、ライオネルをアルジャーノンに連れ帰る!!ライオネルの弟、このローウェンの手で!!悪政を正す為に、私は帰る!!」
「「「「「うぉぉぉぉ!!」」」」」
エヴァーナとの国境砦前での戦いは、直ぐに広まって行った。
ライオネルを棺に入れ、ライオネル側に同行していた兵士達も、ライオネルの悪政は知っていただろう。それでもグレイシャーランド兵士へ戦いを挑み命を落とした者も連れ帰るローウェン。土に染みる大量の血は消せないが、命を亡くした者達の供養はそのままには出来ず、グレイシャーランドの兵士達に後は任し、アルジャーノンへと旅立つ。
「お見事でした、ローウェン陛下」
「アルドール公爵、ヴァルム元伯爵………いや、もう元じゃないね……爵位に関しては、ちょっと考えるけど、2人の助けがあったから出来た事だよ…………これから、僕の治世、支えて貰ってもいい?」
「私は蟄居しておるのですが?」
アルドール公爵はそう言うが、悪い気はしていない様で、2つ返事で了承した。それはローウェンのうるうると涙目での泣き落としで、落ちただけだともいう。
「陛下!!今からその様では臣下に示しは付きませんぞ!」
「うん、だからそうやって、僕をしっかりしつけてよ………ね?」
「アルドール公爵………ローウェン陛下は諦める人ではありません………公爵が諦めなさいませ」
「ぐぬぬ…………分かりましたよ……王都に戻りましょう」
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