貴方は私を虐げてきたのではないのですか?【完結】

Lynx🐈‍⬛

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 連れて来られたのは、観光ホテル。
 食事をするなら、フロントに立寄る必要はないのに、秀平はフロントへと向かう。

「此処で待ってろ」
「………う、うん」

 フロントの柱の傍で待たされて、未央理はロビーを物珍しくキョロキョロとしていた。

 ---うわぁ……こんなホテルなんて入れるなんて思わなかったよ……てか、此処に泊まる気?大人びたデート、てそういう事?……に、逃げたくなってきた……

 秀平は視界に未央理を入れながら、フロントでチェックインをしているので、逃げたら慣れないパンプスを履いた未央理は直ぐに捕まるだろう。
 気を取り直し、またロビーを見渡すと、目の前で未央理を目部味する外人と目が合った。

『ハイ、君1人?』
「え!が、外人………」
『英語話せる?………1人なら僕と食事しない?僕も1人なんだよ』
『………えっと……もう少し……ゆっくり……話して……』

 拙い英語で未央理も返すが、高そうな宿泊費が掛かりそうなホテルでナンパは無いだろう、と思って対応してしまった。

『ごめん、ゆっくり話すよ。日本語、僕も苦手だから、翻訳アプリ使う?』
「未央理!」
「………あ……」
『失礼、俺の妻に何か?』
『妻?………え?指輪してないから独身かと思ったよ…………あれ?……』
『………オーリー?………オリバーか!』
『シュウ?』

 外人と顔を合わせた秀平は、お互い知り合いだったと気が付いた。

『久しぶりだ!シュウ!元気だったか!まさか連絡する前に会えるとはな!』
『何でお前、日本に居るんだ!イギリスで教師していたろ………旅行か?』
『来月から、お前の学校の教員になるんだよ、期間限定だがな』
『………お前が来るのか!名前迄は聞いてなかったよ』
「ね、ねぇ………知り合い?」

 お互いにスキンシップをし始めたので、未央理が秀平の袖を引っ張って気付かせる。

「あ、あぁ………俺の友人だった……イギリスで教員してるオリバーだ」
「ハイ!オリバーです」
『オリバー、俺の妻………未央理だ。先週結婚したばかりでな、お前にも知らせずに悪かった。急な結婚だったから』
『…………え!先週!新婚じゃないか!』
『………はじめまして……未央理です……!』

 紹介された時、秀平に腰を抱き寄せられた未央理は、いきなりでバランスを崩し、秀平の胸に納まってしまった。

『そう………だから、ナンパするな』
『………ミオリ?………あぁ!お前が執着してた娘か!』
『………オーリー……それは言うな………というか何で知ってる……お前に執着しているなんて言った事なかった筈だ』
『お前がその娘を探していた時期に、俺も日本に居たんだぞ?そりゃ分かるさ』

 早口で聞き取れない未央理だが、単語で聞き取れる部分を繋ぎ合わせて、何となく未央理は自分の事を言われている様な気がした。何より、オリバーが未央理を見て、秀平を揶揄っている様にも見えるからだ。

『それより、オーリー。俺達は飯食いに行くからまたな』
『は?久しぶりに俺とも話ししようぜ?3人で!』
『夫婦のデートに邪魔するな。時間あったら明後日にも連絡する』
『何で明後日?』
『明日もデートするから暇が無い』
『そうかよ、じゃあ1人で寂しく酒飲みに行くさ』
「え?………な、何?」

 オリバーと別れたので、何が起きたのかを把握出来ない未央理。

「オリバーは、俺達の邪魔しないってさ」
「………そんな風には見えなかったけど……3人で、とか……誘われてなかった?」
「………リスニング力弱いようだから、家では英語で会話するか?」
「ヤダ」
「言うと思った」

 ホテルのレストランに入ると、先程乗った観覧車が見える席に座れた。

「わぁ………外から見てもイルミネーション綺麗……」
「気に入ったか?今日のデート」
「うん………本当、大人びたデートだ。少し前なら考えられないよ」
「部屋からも見えるんじゃないか?」
「………っ!」
「今日は此処に泊まるし」
「か、帰らないの?」
「………あぁ」

 車はコインパーキングに停めたのと、泊まるという事で秀平は注文したワインを飲んでいる。
 未央理は未成年で飲めないから、ノンアルコールカクテルだ。
 お洒落なレストランに来る事も、ホテルに泊まる経験等無いと思っていた今迄の生活に、驚いてばかりで、秀平と出会ってから、苛立ちの中に居ても楽しい。

「あんまり贅沢に慣れてないから場違いだよ、私」
「普段は質素だから、たまに贅沢すると有り難みが分かる………記念日ぐらいなら、連れて来てやるよ………誕生日とか、結婚記念日とか……まぁ、今日は誕生日と結婚記念日兼ねてだけどな」
「誕生日過ぎたけど」
「1ヶ月も経ってないから、有効だろ」
「…………ありがと……」

 喧嘩したくない日になってしまった。
 罵る種も無い、秀平のエスコートするデートに、未央理も我儘になりそうになる。
 これが、この先時折だろうが味わえるなら、幸せなんだろうなと思ってしまった。

「………美味いだろ、この店」
「う、うん………よく来るの?」
「………過去な……今日から先は、未央理とだけにするけど」
「っ!」

 秀平の甘い言葉に、鼓動が速まったまま落ち着く事が無くなっていく未央理。

 ---し、心臓持たない……こんなデートなんて思わなかった………ど、如何しよ……この後、萌え死にしないよね、私……

 この日のデート数時間で、単純に好きになりたくなりたくないのに、もう秀平に囚われてしまったと感じた未央理だった。
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