養子王女の苦悩と蜜月への道標【完結】

Lynx🐈‍⬛

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エピローグ

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 レティシャがリーヒルと結婚してから、1年が過ぎた頃。
 シュピーゲル国王族が所有する古城にレティシャは来ていた。

「此処に来るの、久し振りです」
「いつ振りだ?レティシャは」
「………馬車事故の前が最後です」

 馬車を降りて、古城に隣接する湖を眺める。

「水面が綺麗……」
「…………レティシャ、散策は後だ……今は……」
「…………はい」

 一方、古城に住むようになったオルデン前国王は、窓際に向かって喋っている。

「もう直ぐ着く頃かな?」
「………えぇ、見えましたわ……馬車が」
「………そうか、では迎え入れよう……其方は会えぬのが寂しいな……」
「構いません……わたくしは姿が見られるだけで……気配さえあれば………」
「………行ってくる」

 オルデン前国王と話すのは、窓に鉄格子を付けられた部屋に居る、ダーラ元王妃だ。
 古城に幽閉され、終身刑という罰を全うしようとしている。

「………マリサ……どんな娘かしら……レティシャに似ているの?それともリーヒル?」

 レティシャはリーヒルと結婚後、直ぐに子が恵まれた。娘が産まれ、マリサと名付けたその王女は、勿論リーヒルの妹の亡くなったマリサから貰い受けた名だ。
 馬車が到着するのを今か今かと追い、リーヒルが確認が取れた。

「………リーヒル……あ!レティシャ…………あ……あぁ……あの娘が……」

 レティシャが抱く幼い赤子。産まれてから3ヶ月という首が座ったばかりの幼子を、愛おしそうに抱いている。小さい窓から、手を掛け鉄格子を握り締めて、覗き込んだダーラ元王妃。
 ダーラ元王妃が居る部屋から、レティシャ達は豆より小さく見える。マリサはもっと小さい。
 すると、出迎えたオルデン元国王が指をダーラ元王妃の方へ指すと、レティシャ達がダーラ元王妃の方へと向いた。

「!」

 マリサの小さな手を握るリーヒルが、出来もしないのに、手を振って見せたのだ。

「………あぁ……もう………なんて愛らしい……」

 初孫に涙するダーラ元王妃。
 レティシャとリーヒルは初孫を見せに来たのだ。

「見えたかな」
「見えるとも」
「後で、あの塔の下散策しましょう?」
「そうだな、4人で」
「4人?」
「父上も行きましょう」
「余はいい……ダーラが見たいのはお前達が幸せな家族としているかどうかだ。きっと今泣いている」

 数日滞在する予定のレティシャとリーヒル。
 その日程の日課として、ダーラ元王妃の居る塔の下で3人で姿が何度も目撃された。
 その後、国王夫妻が古城を避暑地として、定期的に訪れては、家族水入らずで過ごす事は、ダーラ元王妃が亡くなる迄続けられ、ダーラ元王妃が首都の城に戻って来れた場所は、亡きマリサ王女の横だったという。
 リーヒル治世のシュピーゲル国は、とても平和でリーヒルの傍らには、いつも愛妻であったレティシャが月の様に優しく国を照らし、リーヒルが太陽の様に導いていたのだった。



       ❦ℯͷᏧ❧

※おまけあります♡
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