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デイビッドがなかなか帰って来ない。
家の鍵を閉める訳にはいかないロゼッタは、帰るのを待たなければならなかった。
内側からしか掛けれない鍵しかない家だ。
そんな家は、街には沢山あり、留守にすると勝手に家人以外の輩が侵入し、物を盗まれる事もあるのだ。
だから、貴重な物は家の中には置かない様にしていたし、ロゼッタの身元が分かりそうな、ペンダントだけは、ロゼッタは肌見放さず身に付けていて、無くさない様にはしていた。
「…………ヒック……帰ったぞ~」
「…………お帰りなさい」
安い酒だろうとも、酒に酔ったのも分かる千鳥足と酒の匂いをさせて帰って来たデイビッド。
「やっぱ………金ありゃ、何でも食えるんだ……ケチって不味い飯食うより、よっぽどいいや」
殺意さえも芽生えてきそうな、デイビッドのご機嫌さ。
ロゼッタは空腹を我慢して、デイビッドに用意した料理だったのだ。
数日分の食費を、デイビッドは恐らく全て使ったのだろう。
ロゼッタは内側から鍵を掛け、デイビッドに聞いた。
「お金は余らしてくれた?」
「は?…………ある訳ねぇだろ」
「明日から如何やって食べ物調達するの?」
「…………へへへ……何とかなる……ほら、こっち来いよ」
明日の心配を物ともせず、デイビッドは上機嫌だ。
フラフラと、デイビッドがロゼッタに近付いて来ると、ロゼッタの腕を掴み、ベッドに押し倒す。
「っ!」
デイビッドがベッドにロゼッタを押し倒すのは決まって、性欲の処理だ。
ロゼッタはコレも苦痛の1つ。
デイビッドに買われてから、3ヶ月経っていはいるが、一向に慣れなかった。
優しくもなく、労いもなく、一方的で自己陶酔して終わらせ、満足したら寝る。
幸い、ロゼッタは妊娠だけは回避しようと、月のモノの周期を把握し、妊娠しやすい数日間は、デイビッドとの行為は、月のモノだと言って断っていた。
初夜の時、無謀な抱き方をされ、出血も多かったロゼッタを見たデイビッドも初めてだったんだろう。驚いて月のモノの時に抱いてしまった、と思った様だった。
実際は、ロゼッタがデイビッドとの行為を断る口実で、眠っている間に、ロゼッタが鼠を捕まえて、その血をベッドに染み付かせたからに過ぎない。破瓜の時の血は大した事はなく、デイビッドも知識が無かったから、騙せた様なものだ。
それからも苦痛の夜は時々あり、デイビッドに組み敷かれながら堪えている。
「養えるの?子供出来たら………」
「そん時は………ガキなんて捨てるさ」
「なっ!」
酔っ払っていると横柄な性格になるのはロゼッタは知ってはいるが、自分も親に捨てられた孤児なのに、どの口が言うのだ、と腹が立った。
「貴方みたいな人を増やすの?貴方が?」
「煩い!女が男に盾突くな!」
「ゔっ!」
平手打ちがデイビッドから飛ぶ。
ロゼッタは反抗したい訳ではないが、子を捨てる事はやはり人としての常識的な事ではないと思っている。親に捨てられたデイビッドが、親になったら自分がされた事を子供に強いるのは許せなかったのだ。
デイビッドの生活を見ても予想が出来る未来の子供の末路が。
「お前だって、気持ち良くなるだろ?抗うんじゃねぇよ」
「っ!」
服は中途半端に脱がされ、覆い被されて、ぎこちない愛撫に、無骨な指で少し開いただけの秘部。
濡れていなくても、デイビッドはロゼッタの中に押し入って来るのだ。
デイビッド曰く、挿入っていれば濡れると思っている。
自分勝手に自分よがりの性行為は、ロゼッタでも世の中の男がそうするのが当たり前なんだ、と思っている。
気持ち良くも無いこの行為に、早く終わらせて欲しい、としか思わなかった。
「…………はぁ、はぁ………射精るっ!」
「…………」
1人で勝手に陶酔して終わると、デイビッドは満足して、ベッドで眠ってしまう。
---絶対に妊娠なんてさせないでよ………嫌よ、こんな人の子供を産むなんて……
ロゼッタはデイビッドに気付かれない様に、スカートの裾を上げ、デイビッドから吐き出された白濁を掻き出して、身体を拭いた。
妊娠しない様に願いながら、果てしなく続くと思っている、苦痛の生活から抜け出す希望も無いまま生き延びる為に。
✦✦✦✦✦
「ロゼッタ、出掛けるぞ」
「何処に?私も?」
「あぁ」
何故か、翌日も上機嫌なデイビッド。
その理由も分からないまま、ロゼッタは隣街に徒歩で連れて来られた。
隣街でも大分距離はあり、朝出発しても隣街に到着するのは、昼を過ぎる。
しかもロゼッタは空腹で、昨夜から禄に食べてはいない。一方のデイビッドは昨夜食べ過ぎていたのか、空腹を訴えてはこなかった。
「ふぅ…………疲れたな、流石に」
隣街はロゼッタには見慣れた街並みだ。
3歳からデイビッドに買われる迄の13年間、この街に住んでいたから。
だから、ロゼッタはデイビッドに連れて来られた場所を見て、驚きを隠せなかった。
「え?…………此処?」
「あぁ、そうだ…………お前を売って金にするんだよ」
【妻競売】を目的とした店の前だ。
合法とされている、平民同士の商売で、時には貴族も奴隷を買いに来るのだと、ロゼッタは知っている。
愛人を持つのは違法だが、奴隷は認可されていて、法律の逃げ道に迄されている商売だ。
ロゼッタもデイビッドに買われた時に、競売に掛けられた店だった。
「昨日良い事聞いてよ………お前の顔は好みだがつまんねぇから、それなら妻競売に掛けて妻を変えてみろ、て教えて貰ったんだ」
「…………は?……私は物じゃないわ!貴方に買われたから結婚したけど、売るなんて如何かしてる!そのお金は私に入る訳?」
「は?何言ってんだ、お前…………所有者の俺が売るんだから俺に全部入るに決まってるだろ」
男の結婚は所有する考えで、女は物。
そんな事がまかり通る国なのだ。
「離縁したいなら離縁する方法は他にもあるんじゃないの?」
「は?売れる内に売りゃ金になるだろ。お前が若くて買って貰えるだけ良いと思えよ」
好きでもない男と結婚という誓約もさせられ、要らなくなったら捨てる。
女の人権を求めるのは、ロゼッタには非力だった。
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