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おまけ
雅也と結婚式を挙げ半年程経ち、立ち上げた事業も雅也の手腕で軌道に乗り始めていた。それも雅也の父の会社が倒産し、露頭に迷った社員達を引き抜いた事により、ビル迄買い取った雅也はそのまま副社長として働いていたからだった。社長は勿論、美沙緒の父であり、雅也は婿養子に入っている。
雅也の両親は負債を抱え、財産をほぼ無くし、細々と暮らしていた。
「やっと母さんが大人しくなった。」
と雅也は笑っていたが、自分の両親と麗奈との子について援助もしているらしい。それについても美沙緒は知らない振りをしていた。雅也の両親や麗奈との子にも会いたくないと思っている美沙緒の気持ちを汲み、雅也も合わせようとはしないからだ。
麗奈の両親については分からない。負債を抱え、規模は縮小したものの会社は存続しているらしいが、麗奈が一人娘で後継者が居ない為、雅也曰く世襲制では会社は続く事はなく、悪事はしなくなるだろう、との事だった。麗奈の両親に、子供の親権を、と考えたようだったが、麗奈のような大人にされては、と言った雅也は頑なに、親権を譲らなかった。親権は雅也にあるが、両親は死んだのだと教え込ませる事を条件に、雅也は援助もする事で自分の両親に子供を渡したのだ。
「来週末、取引先の祝賀パーティーに招待されてるんだけど、お義父さんが俺に行って欲しい、て言うんだ。美沙緒、体調大丈夫か?お腹重いだろ?」
「大丈夫、安定期に入ったしお酒飲まなければ。」
仕事から帰って来た雅也が心配そうにお腹を擦る。雅也は美沙緒と結婚してから、良き夫で良き父だ。気持ちの無かった麗奈との結婚生活が気にはなっていたが、美沙緒への愛情が伝わる以上、心配は不要だった。
「じゃあ、無理しないように付き合い頼むよ、奥さん。」
「えぇ。」
そして、祝賀パーティー当日になり、久しぶりに華やかな場所に来た美沙緒は気後れしそうになった。身重なパートナーはあまり居ない。取引先の祝賀パーティーだと、パートナー同伴は通例だったからだ。
「………喉、乾いたなぁ……。」
壁の華になるつもりもなかったが、人混みに入って何かあっては、と思い、離れた所で雅也を見ていた美沙緒。
「どうぞ。」
「え?」
「アルコール無しのジュースなので、ご安心を。」
柔らかに微笑む女性。パーティー客であろうドレスアップしている女性が、タンブラーを渡しに来た。
「大変ね、付き添いでしょ?私もだけど、私はまだお腹目立たないから、お酒薦められて困ってたの。」
優しい表情のスレンダー美人の彼女は、美沙緒は覚えがあった。記憶の中の彼女は今の様な、穏やかさはなかったが。
「お久しぶりです、カルナさん、ですよね?」
一瞬驚いた顔をしたが、直ぐに察したようで、返事を返す女性。
「…………あ、やっぱり分かっちゃった?そうかなぁ、て思ってたの。良かった間違えてなくて。」
ニッコリと返した表情をする女性は、穏やかに言う。その表情は美沙緒に安心感を与えた。
「お幸せそうで何よりです。」
「あなたもね。出られて良かった、と言えばいい?あそこに居た経歴の女は、必ずしも幸せになるとは思えないから。」
「えぇ、半年程前に結婚しました。許婚だった彼と。」
カルナはまた驚いた表情をしたが、直ぐに顔を崩した。
「そう、良かったわね!私とは違う経緯だけど、お互いに幸せ掴めて良かった。」
「私、美沙緒、と言います。」
「私は、香水の『香』、浄瑠璃の『瑠』、奈良の『奈』で香瑠奈よ、旦那になった人とあそこで会って、結婚したの。今は2人目妊娠中。」
ポンポン、とお腹を軽く叩く香瑠奈に親近感が湧く美沙緒。
「じゃ、あそこの主人の付け入る隙ありませんね………クスクス。伝言頼まれてたけど。」
香瑠奈は、心底嫌そうな顔をしている。
「やめてよ、二度とごめんだわ。私が身体を許すのも心を許すのも、旦那だけなんだから。」
「…………クスクス、そうですね、私も。………私、香瑠奈さんに会って、話したかったんです、友達になってくれますか?」
「勿論よ、美沙緒さん。私もあなたと話したかった。」
和気藹々と美沙緒は香瑠奈と話をしていると、香瑠奈の旦那が側に来た。
「香瑠奈、楽しそうだな。」
「えぇ、友達出来ちゃった。男じゃないからいいでしょ?あそこに居た子なのよ。」
ニッコリと旦那のスーツの裾を摘み、微笑んだ香瑠奈の腰を自然に抱き寄せ、愛しく見つめる男は、香瑠奈に優しい目線を贈る。そして、美沙緒を見て頷いた。
「そうか、君もあそこに………。」
「はい。美沙緒、と言います。」
「妻と仲良くしてやってくれ。…………香瑠奈、俺はもう少し挨拶しなければならない人が居るから、辛かったら椅子に座って休んでろ、挨拶したら帰るから。あの子も1人にして寂しくしてるだろうし。」
「えぇ、そうね。私も心配だけど、私はまだ体調も大丈夫だから失礼の無いようにご挨拶してきて。本当は一緒の方がいいのだろうけど………。」
と、旦那を見送る香瑠奈。募る話はまだまだ沢山あるが、美沙緒と香瑠奈には時間は充分あった。幸せを勝ち取った2人。苦労の時期を笑って話せる日が来る事を願う。
連絡先を交換し、その後も交流を深めたのは言うまでもない………。
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退会済ユーザのコメントです
感想ありがとうござしました。
続きも考えて、今執筆中なので、三部目も宜しければ、お楽しみ下さい┏○))ペコッ