薄明宮の奪還

ria

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第3部.リムウル 第3章

21.村人たち

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「何と……村を捨てろと、そう言われたのか?」

白いヒゲの生えたあごを落とし、老人は言った。

「……ええ」

カーラが、沈んだ表情でうなずく。

「無理にとは言わない、お前たちが自ら決めることだ、とも」

ザワザワと、周りに集まった村人たちの間からどよめきが起こった。


長老の家に、村の主立った者たち、十数名が顔を揃えていた。

長老の家と言っても他の家とそう変わりない、素朴で小さな家だった。

部屋の中はほぼ人で埋め尽くされている。

集会を開く時はいつも、めいめい敷物を持ち寄って床の上に直接座り込むのだ。


普段は月に一度、農作業が終わった後、夜に行われている集会だった。

しかしカーラたちと共に皇太子ギメリックが村に帰還したという知らせは、夜明けとともに一大事として瞬く間に村中に広まっていた。

男たちはそれを知ると、呼ばれるまでもなく自ら集まってきていたのだ。


「なぜそんな必要がある? フレイヤの涙が見つかったんなら、すぐにでも狂王を倒せるんじゃないのか?」

男たちの一人が言い、周りの数人が、そうだそうだと言うようにうなずく。

「ダメよ、アイリーン様は魔力に目覚めて間もないわ。

 石の力を使いこなせるようになるまで、少し時間が必要なの」

「その間に、敵がここを突き止めて襲ってくると……?」

ゲイルの言葉に、カーラはうなずいた。

「彼が言うには、この辺りに照準を絞って何度も探りを入れられれば、魔力の知覚に反応しない空間があることを悟られてしまうのは時間の問題だろうって」

ゲイルはうなずき、他の面々に向かって言った。

「エンドルーア軍はすでにリムウルの国境を破って進軍中だ。

 街はそのうわさでもちきりだった。

 目立たない小部隊が先陣として素早く移動してきて、ここを急襲することは充分考えられる」

「だからと言って、村を捨てろとは?

 ここが一番安全なことは、皇太子殿下も知っているはずだ」

村人の一人がそう声を上げる。

「向こうも必死なのよ。

 リムウル軍の目をあざむいて、可能な限りの武力で襲ってくるわ。

 安全とは言えない、むしろここにいては皆殺しになってしまうと、彼は心配してるの」


再びざわめきが起こった。

他の国の軍隊ならともかく、相手は魔力のことも熟知したエンドルーア軍なのだ。

当然、幻獣や魔力を使っての攻撃も、同時に行われるだろう。


不安げな顔を見合わせ合っている村人たちを代表し、長老が口を開いた。

「それで、村を捨てて……どうしろと言われるのか? さらに南へ逃げろということかの?」

「それが……」

カーラは一瞬、言いよどみ、それから意を決したように口を開いた。

「リムウル軍に守ってもらうのが一番だって」

皆、一瞬、あぜんとし、それから三たび目のざわめきが怒濤のようにわき起った。

「そんな……素性も知れない団体を、国家の軍隊が守ってくれるわけがないじゃないか」

「そうだ、俺たちはエンドルーア国民だぞ? 密偵と思われればそれこそ皆殺しだ」

「だいたい、なんで他国の王女が石の主なんだ?!」

「そうだ、ギメリック様が石の主ならば……」

「ええぃっ!! 静かにせんか!!」
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