薄明宮の奪還

ria

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第3部.リムウル 第3章

22.一喝

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長老の一喝に、男たちは口をつぐんだ。

「……石については、我ら庶民にはうかがい知れぬことがあるのだろうて。

 ヴァイオレット様が決めたことなら、従うまでじゃ。……そうだな? カーラ」

カーラはうなずき、強い眼差しで、男たちを見回した。

「リムウルは苦戦してるわ。

 得体の知れない魔物や魔力を過大評価して、軍の士気も落ちているそうよ。

 軍幹部や王宮はきっと今、それらに関する情報と、エンドルーアの魔術に対抗し得る戦力を、喉から手が出るほど欲しがっているはずだわ。

 だから、あたしたち魔力保持者の力を貸す代わりに、魔力を持たない村の者たちも含めて軍の庇護下に置いてくれるよう、彼らとうまく交渉すればいい、とギメリックは言うの」


確かにそれは良い手かも知れないが、そんなに簡単に、リムウルの王宮や軍が我々を信用してくれるだろうか……。

皆の思いはもっともなもので、カーラもギメリックにそう言ったのだった。

するとギメリックは、皮肉な笑みを浮かべて言ったのだ。

「リムウルの使者はアイリーンを見知っている。

 彼女を連れて行けば問題ないだろう。

 そして石の主である彼女を王として、お前たちはエンドルーア正規軍の旗を揚げればいい。

 リムウルとはあくまで対等に、国家としての体面を保つんだ。

 お前たちが力を貸さなければ、リムウルはクレイヴを王とするエンドルーアの属国になってしまう。

 そのことを充分にわからせてやることだ」

ギメリックはそれから、少し苦しげな目をしてさらに言った。

「お前たちを戦いに巻き込むのは、本意ではなかったが……

 フレイヤの涙なしでは、俺も一人でエンドルーアの進軍を食い止めることに、限界がある。

 アイリーンと村人たちの安全を確保するために、皆を説得してくれないか?

 俺がそうしろと言ったのでは納得しない者もいるだろうが、カーラ、お前なら出来るはずだ」

「一人で、って、ギメリック、あなた……」

眉をひそめるカーラに対し、反論はさせないという口ぶりで、彼は続けた。

「ひと月ほどは持つと思う、俺が食い止めておく。

 だがそれ以上は保証できない。必ずひと月以内に、全員で、リムウル軍の庇護下に入れ」

「ギメリック! 王位は、あなたが継ぐべきだわ!

 それに一人で戦うなんて無茶よ、狂王がまた襲ってきたらどうするの?

 フレイヤの涙なしで、あなた戦えるの?」

ギメリックは今度はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

「あいつにそんな度胸があるとは思えんな。

 俺が16になる年まで、奴は恐怖に怯えながら王宮に閉じこもっていた。

 自分の代わりに息子を矢面に立たせ、手先を使って俺たちの行方を探していたようだが、決して、自ら出てこようとはしなかった。

 ヴァイオレットがティレルに殺されて……俺が16歳を過ぎても一向に襲ってくる気配がないので、俺の方で何かそうできない事情があるのだとわかったんだろう、ようやく大胆になって、野心を実行に移し、自らも魂を浮遊させてあちこち探り始めたようだが……。

 しかし今回、石の力を操る者と遭遇したのだ。

 再び戦えば自分の命はないと、怯えているにちがいない」

「だったら、エンドルーアは侵略を諦めて軍を引き上げるんじゃない?」

「さぁ、どうだかな。

 今となっては、狂気に駆られているのは狂王ではなく息子の方だ……」
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