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第五章 月の巫女と黒の魔人
月の巫女と黒の魔人 第六節
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騎士団のキャンプ地で、マティとアランが女神軍としての再編と装備の再チェックを、ボルガ含む兵士や騎士達と相談していた。
「だいたいの内容はこれでしょうか。装備の方の手はずは頼みますボルガ殿」
「おう、任せときやマティ様」
「アラン殿もありがとうございます。貴方がいなければ作業はより時間かかってました。貴方のような方が一緒にレクス様を補佐して頂ければ、私ももう少し楽になれると思わずにいられませんよ」
「ははは、レクス様はまだ補佐しやすい方だと思いますよ。ラナ様は確かにしっかりしてらっしゃるのですが、よく一人で突っ走って気が気でならない時もよくありますから」
「それはまた、お互い苦労しますね」
三人が笑い出すと、突如二つの閃光が頭上を通った。騎士達がそれを意識した次の瞬間に強烈な衝撃と爆音がキャンプ地を震撼させた。
「うおっ!?」
「なんじゃあ!?」
衝撃でビリビリと激しく震え、何本かの細い木が折れて倒れた。アラン達が頭上を見ると、銀色の魔人と黒色の魔人が、互いに対峙して浮かんでいるのが見えた。
「あれはウィル殿!?」
「なんだあの黒い奴ぁっ?ウィル殿とそっくりやないか!」
アランとボルガ達が言葉を終えたばかりに、ウィルフレッドが両手に力を込めては電光が走り、二本の剣が彼の手に握られる。片方のギルバートもまた、笑いながら電光を走らせると、漆黒の槍がその手に現れた。互いの得物を振るい、二人の魔人がさらに切り結ぶ。
「マティ!」
「レクス様!」
森の中から大急ぎでかけつけたレクス達。カイやエリネ達は息を上げながら、上空のウィルフレッドとギルバートを見上げた。
「兄貴…っ」
「ウィルさん…っ」
「うおおっ!」
「ははぁっ!」
赤と青の流星が離れてはまた交差し、その軌跡が絡み合うように空で乱舞する。槍と双剣がぶつかるたびに鈍い金属音とともに火花が散りばめられ、時おり物理法則をも無視するターンを描くその高速機動にレクスが呟く。
「す、凄まじい…、これが魔人同士の戦いなのか…?」
他の騎士や兵士達もどよめきながら、常識を逸した二人の魔人の戦いに見入り、慄く。
「懐かしいなウィル!こうしてやりあうのは何ヶ月前のことだっ!?」
「まだそんなに経ってないだろ…っ!」
「そうかぁっ!?どうやらあんたと俺がここに来るのに時間差があるようだな!けど腕は鈍っていないようで結構だっ!」
やや上に飛ぶギルバートが、下から自分を追尾するウィルフレッドに振り向き、腕の結晶を突き出しては赤い光弾が怒涛の勢いとともに連射される。
「…!」
ウィルフレッドは自分の位置と、下にいるラナ達や騎士の位置を見て、避けるのではなく双剣を振り回してそれら全てを打ち逸らした。弾は周りの森を容赦なく爆撃していく。
「うおおおっ!」
だがそれでも、押し寄せる光弾群を捌ききれず、一発がラナ達のすぐ傍に着弾し、激しい爆風を巻き起こす。
「皆離れて!」
「うわあっ!」
ラナ達は急いで回避できたが、飛散った瓦礫は何名かの兵士達にあたってしまう。
「大丈夫ですか!?」
それに気付いたエリネが急いで治療しにいく。
「っ!ちぃっ!」
それを見たギルバートは舌打ちすると射撃をやめてウィルフレッドに突進する。
「はあっ!」
ウィルもまたギルバート目掛けて斬りつき、二人の剣と槍が斬り結んでは押し合いとなった。ギリギリと金属の擦り声の中で、ギルバートとウィルフレッドは見つめあい、そして同時に互いを弾き飛ばした。
「くっ!」
空中で姿勢を安定させ、次の攻撃を備えようとしたウィルフレッドだが、意に反してギルバートは攻めずにただ彼に向けて槍を構えていた。
「どうしたギル…?」
次の動きに備えるよう構えるウィルフレッド。二人の間に暫く静の状態が続き、下にいるエリネ達も息を飲みながら見守った。
「…やめだ、やめ」
ギルバートがいきなり興醒めたように槍を収めた。
「ギル?なんのつもりだ」
「クライアントからは生け捕りの要望だがよ、このままあんたとやりあったら生け捕りどころか、あいつらもろともこのあたりを更地しかねんからな」
ギルバートはラナの傍に開いた穴を指差す。
「俺達の力、この世界ではどうも強すぎるな。いや、こっちが脆すぎるか?あんたも周りのことが気になって全力を出せずにいるんだろ?このまま戦っても不完全燃焼でつまらねえ」
ウィルフレッドは、屍竜と戦ったとき、アスティル・バスターが予想以上の火力を発揮してたのを思い出す。それもあって、ギルバートとの戦いではより意図的に力を抑えていたのは確かだった。
「だから今日はやめだ。腹も減ってきたしよ」
まるで遠足に飽きて家に帰る様な気軽さで、ギルバートは踵を返して離れようとする。
「まて、ギルっ」
「ウィル、仲間ごっこに飽きたらいつでも来な。今や俺達はアルファチームの、家族最後の生き残りだ。そん時は久しぶりに飲み明かそうじゃないか、最後までな」
そう言って黒き魔人ギルバートは一条の光の如く飛んで離れていった。
「ギル…」
――――――
ギルバートが完全に離れたのを確認すると、ウィルフレッドはキャンプ地に着地し、全身を覆う光とともに元の姿に戻った。そんな彼を、騎士と兵士達はただ凝視するばかりだった。
「ウィルくんっ」
「兄貴っ」
ラナ達が彼の元へと駆けつける。
「みんな…」
ウィルフレッドが振り向くと、物言えぬ痛みが彼の全身を走った。
「うっ、くぅっ!」
「兄貴!?」
「どうしたのウィルくんっ?」
いきなり膝をつく彼を見て、レクス達は慌てて彼を囲んで様子を見る。
「ウィルくん無事かいっ?」
心配そうに手を彼の肩に置くレクス。
「だ、大丈夫だ、ただの反動だっ…アルマ化した後はいつも、ぐぅっ!」
「そんな苦しそうにして大丈夫な訳ないでしょっ?―治癒」
苦悶するウィルフレッドにラナが治癒魔法をかける。青き光とともに暖かな流れが自分の中を駆け巡るのを感じた、だが――
「ぐぅぅっ」
痛みと疲労感は減らずにいまだ体を苛んだ。
(これは、治癒が効いてないの?)
「ウィルさんっ」
ラナが困惑するなか、兵士達の治療を終えたエリネが彼の傍にかがむ。
「ラナ様、私も手伝います」
「ええ、お願いするわ」
「――治癒」
ラナが一旦手を止め、エリネが杖をかざすと、治癒魔法の光がウィルフレッドを包んだ。
…痛みが、退いていく。疲労感も緩和され、体が安定していくとともに彼は大きく息を吐いた。
(エリーちゃんの方は効いてる…?)
ラナはもう一度治癒を彼にかけ、手応えに集中すると、やはり自分の治癒はあまり効いてないと感じられた。
「…ありがとう、ラナ、エリー。だいぶ楽になった。本当にもう大丈夫だ」
「本当に?」
「ああ」
エリネとラナが魔法をやめ、ウィルフレッドがゆっくりと立ち上がる。
「なあ兄貴、さっきの奴…あれがあんたの言っていた…」
「ああ…、俺と同じ世界からきた、ギルバートだ」
カイが会話を続けようとするが、レクスが手を上げてそれを止めた。
「ごめん、その話、あとでテントの中で聞くよ」
この時、騎士団の多くの人たちが、なんとも言えない視線をウィルフレッドに向けてることを彼らはようやく気付く。
「さっきの魔人はどうやら去ったようだな」
「ミーナ先生っ」
森の方からミーナが歩き出るのをアイシャ達が見た。彼女は一旦ウィルフレッドに視線を止めてからラナに話しかける。
「ラナ、レクス。ザーフィアス殿の遺体を火葬してあげたい。人手を貸してくれ。アイシャも一緒に来てくれ。…他の詳しい話は、その後にしよう」
「あいよ」
「ええ。…ウィルくんやエリーちゃん達は先にテントで休んでね」
ラナがカイ達を労うように伝えると、ミーナ達とともに火葬の準備にいった。ウィルフレッドはただ無言に、時おり自分をちら見するミーナを見送っては、エリネ達とともにテントに戻った。一部騎士達の視線に耐えながら――
******
ザーフィアスの火葬は、そのまま湖の傍で行われた。古代竜は力が強大なゆえ、遺体をそのまま放置してはその土地に呪詛など悪影響を及ぼす可能性もあるし、屍竜への防止策としても遺体処理は必要だとミーナが説明した。
火葬は丁重に行われた。魂を安らげる花や香油を供え、ミーナが儀式を執り行い、アイシャが鎮魂の歌を贈った。燃え盛るザーフィアスの体から、美しい青きオーラが天へと舞うのを見たと、その場に居合わせた騎士達は語っていた。
そして太陽が沈み始めた頃、騎士団のテントの中で、アランとマティを除き、昼の時のようにラナやアイシャ達が集まっていた。
「…詳細はラナから聞いておる。異世界の来訪者か…昼のあれを見てなければにわかには信じられない話だな」
ミーナがウィルフレッドをただ平然として見つめ、彼もまた目を逸らさずに彼女を見る。カイやエリネが心配そうな顔を浮かべていた。
「ええ、しかもあれほど強大な力をお持ちしてたなんて。教団の追手を容易く追い返したのも納得できます」
アイシャの口調に嫌味はなかった。
「…ラナやレクス、それにそこの二人は君を信頼しきっているが、今日のこともあるから慎重にいきたい。すまないがこっちなりに君のことを質問して構わないか?」
カイがむっとする。
「なんだよあんたっ、まるで兄貴のことを何かの犯人みたいに言ってさあっ」
「あのっ、ウィルさんは間違いなく信頼できる人なんです。どうか穏便に――」
「落ち着いてカイくん、エリーちゃん。別にミーナ先生は彼の何かを疑ってる訳じゃないわ。単に封印管理者としてより状況を把握したいだけよ」
ウィルフレッドもラナに続いてカイ達をなだめた。
「心配ない、カイ、エリー。何かやましいことを隠している訳でもないし、ギルのこともちゃんと説明しなければならないから、大丈夫だ」
「兄貴…」
「ウィルさん…」
ミーナが頷く。
「そう言ってくれると助かる。そうだな、すまないがまず君の体を診てみたい。構わないか?」
「…ああ」
ミーナは彼の傍へと座り、杖で彼の体を軽く叩いた。その箇所から、奇妙な感覚が波紋のように体を伝わる。さながら『組織』のラボでスキャンされた時のような感じだった。
「な、なんだこの肉体は!?」
ミーナが驚嘆の声をあげる。
「一見普通そうな肉体なのに強靭さが桁違いだっ!普通に若い竜並だぞ!?道理で死霊鎧を素手で粉砕できるはずだっ!」
そう言ってミーナが更に肩を叩く。
「骨格もまるで鋼…いや鋼に似たなんなのか!?でも断然軽いぞっ?脳とか体の至るところに見たこともない金属になってるし、しかもマナがないのに強力な力の波動を感じるっ、いったいこれは…?」
「それは多分、これなんだろう」
ウィルフレッドが上着を脱いだ。胸のアスティル・クリスタルが、青い光を湛えながら脈動する。それを目にしたアイシャとミーナが瞠目した。
「まあ、綺麗…これは魔晶石?いえ、どこか雰囲気が違いますね…」
「体に生えてる?いや、くっついてるのか…?」
ミーナが軽く魔力を込めてそれを杖で叩くと、キィンと何かの反動が響いて彼女が軽く仰のき、ウィルフレッドの体もまた小さく震えた。
「ぬおっ!?」
「ミーナ先生っ」
「ちょっとちょっとミーナ殿大丈夫かいっ?」
ラナとレクスが慌ててミーナを支えた。
「大丈夫かミーナ?」
ミーナは座りなおして心配するウィルフレッドに頷くが、その表情は驚愕に満ちていた。
「あ、ああ…というかなんだこれはっ!魔晶石なんて優しい代物じゃないっ!こんなもの、このハルフェンの誰でも作れんわっ!?精鋭魔法使いが百名集まっても匹敵できない程の膨大な力が凝集した結晶かのようだぞ!?しかもどこか生き物のようにも感じる…っ、一体これは…」
「驚くのも無理はないさ。これは俺の世界でも原理が解明されてないものなんだ」
ウィルフレッドが胸の結晶を撫でた。
「このアスティル・クリスタルは、俺の世界の月の裏側で発見された異星人の船の残骸から――」
「ちょ、ちょちょちょちょお~と待って!」
今度はレクスが驚きの声を上げた。
「月!?月って空に浮かんであるあの月のこと!?その月の裏側に!?いや、そもそも行けるの月って!?」
カイとエリネが頷く。
「俺達もそれ聞いた時驚いたよ。しかもその上に人が住んでるんだぜ?」
「人がっ、ルミアナ様の半身たる月にですかっ!?」
アイシャが手を口に当て、腕の聖痕に無意識に触れる。
「ええ、しかもウィルさんの世界の町には月に行くための、雲を突き抜けるほどの高い建物があるんですって」
エリネの言葉に、ラナまでもが口を大きく開けた。
「たまげたわ…貴方もそうだけど、貴方の世界も相当なものね…」
ウィルフレッドが苦笑する。
「イセイジンとか言ってたが、それってなんなの?」
「ああ、その、どう説明しようか…。月に人が暮らしてるように、遥か遠くの天体にも智慧を持ったが住んでいて、そんな彼らを異星人と呼ぶんだ」
ここまできて流石に全員の頭がぐるぐるし始めた。唯一ミーナだけが興味深々と聞いていた。
「そうか…宇宙仮説…っ!世界が一つの球体で、女神の半身たる太陽を中心に多くの球体が回るあの説…っ。もしその仮説が正しく、他の球体にも女神による命が存在するのであれば…っ!」
「ミーナ先生、話、逸れてますよ」
目を輝かせるミーナを落ち着かせるアイシャ。
「あっ、す、すまん。つい興奮してもうた」
軽く咳をするミーナにウィルフレッドが苦笑する。
「とにかく、俺の世界における異世界の来訪者と考えてもらって構わない」
「簡潔な説明、助かるよ」
レクスもまた苦笑しながら肩をすくめた。
「さっき言ったように、月の裏側で発見した異星人の船の残骸で、このアスティル・クリスタルが発見された。俺が所属していた『組織』はこれを基に超人的な力を持った生体兵器を作り出す、アルマ計画を立ち上げた。…俺はその計画で作り出された兵器の一人なんだ」
「兵器だなんてそんな…」
エリネが悲しそうな顔を浮かべた。
「ラナからは聞いているが、人を兵器に改造するとは…確かに我らの世界では普通には思いつかない恐ろしい発想だ」
「そんじゃ兄貴、ギルバートという奴も魔人になれるってことは…」
「ああ。彼は俺と同じ計画から作り出されたアルマの一人だ。『組織』に入ってから同じチームにいて、指導役や戦友として色々とお世話になっていた」
「でもあの方、ウィル様と違ってとても凶悪そうでしたよね…。どうして彼は争乱を求めるようになったのですか?」
アイシャの問いにウィルフレッドは両手を強く握り合い、どう話すべきか逡巡していた。
「…色々と事情がありそうだな。そこは無理して話さなくてもいい。…ふむ…」
ミーナは一度黙り込んだ。ラナ達やウィルフレッドの情報を整理し、なによりも亡くなる前のザーフィアスの警告を反芻して、どうすべきか決めるために。
(あのラナが誰かを大きく信頼しているのは稀だ。人格的はある程度信用はできるはずだが…ザーフィアス殿の警告は確かなものだし、こやつの力は間違いなく脅威的だ)
「先生…」
「ミーナ様…」
ラナとエリネ達はミーナの反応を待ち続け、ウィルフレッドもまた何も言わずに、静かにミーナを見つめ続けた。
(…だが力が強大故に迂闊に手はだせんな。何か理由をつけて拘束すべきか?いや、教団に与しているもう一人の魔人のこともある。情報もまだまだ足りんし、ここはやはり――)
暫くして、ミーナが真剣な表情で問うた。
「一つ確認したいことがある。あの黒い魔人はおぬしの恩人であるとラナ達から聞いたが、おぬしはそんな彼と本気で戦えるのか?」
ウィルフレッドは顔を引き締めながらも、迷いもせずに答えた。
「勿論だ。昼あいつに言ったように、その覚悟は地球にいた頃から変わっていない。…ラナやエリー達のこともあるしな」
エリネ達に微笑む彼にラナ達も喜びの表情を浮かばせる。
「そうか…正直に言おう。あのギルバートとやらが邪神教団と与している以上、我らはあやつとも対峙しなければならん。だが先ほどの戦いを見て、我々があやつを止められる力があるかどうか非常に疑わしいものだ。恐らく、現状でそれに対抗できるのは同じ魔人であるおぬしだけだろう。だから暫く我らと同行し、あやつに遭遇した場合におぬしに対処してもらいたい。お願いできるか?」
「暫くもなにも、俺は元々最後まで付き合うつもりだ」
力強く頷くウィルフレッド。
「うむ。ならば我からもう言う事はない。アイシャもそれで構わないな?」
「ええ、元々私達を助けた方ですし、ラナ様が彼を信用してるのなら、私も彼を信じます。月の巫女として、貴方の助力に感謝致します。ウィル様」
「良かったっ。ありがとうアイシャ様、ミーナ様っ」
「キュキュッ」
エリネが笑顔を綻ばせ、ルルも嬉しそうに鳴いた。
「さすがアイシャ様だぜっ!…あ、いやさすがですアイシャ様」
「ふっ、我にもアイシャへの半分の愛想あれば良いのだがなあ青二才よ?」
「へっ、アイシャ様はあんたと違ってとても品のある俺達の王女様だ。丁寧に接するのはあたりまえだろ?」
「品のある、か。確かにそうだな」
ミーナがニヤついてはアイシャを見て、彼女もまた意味深そうに目を逸らす。ラナはその意味を全て理解したかのように苦笑した。
「それはそうと、集会までに時間があるんだから、ウィルくんの世界のこともっと聞かせてくれないかしら?」
「あ、いいですねラナ様、私にもぜひ聞かせてくださいっ。なんだか色々と面白そうな話しが聞けそうですっ」
「アイシャ様きっと驚きますよ。兄貴の世界では馬車みたいのが自分で走るだそうですから」
「ほんとですかっ!?」
「しかも空飛べるんだってさ」
「えぇっ!?」
「はは、ウィルくんってホント話題尽きないよね。僕にもぜひ聞かせてもらいたいな」
先ほどの緊迫した雰囲気とは打って変わって、和気藹々な空気がテントを満たす。自分にとっては寧ろこの世界こそ驚異と驚きに満ちてるのにと思いながら、どこか懐かしい暖かな気持ちにギルバート達と過ごした時間を思い出し、胸が軽く締め付けられるウィルフレッドだった。
「ほらウィルさん」
「…ああ」
エリネの声でウィルフレッドは頷くと、先ほどエリネ達にも話していた地球のことを語り始め、ラナ達は興味津々と耳を傾けた。感嘆の声と談笑のなか、ミーナだけが話を聞きながら、真剣な眼差しでウィルフレッドを見つめていた。
【続く】
「だいたいの内容はこれでしょうか。装備の方の手はずは頼みますボルガ殿」
「おう、任せときやマティ様」
「アラン殿もありがとうございます。貴方がいなければ作業はより時間かかってました。貴方のような方が一緒にレクス様を補佐して頂ければ、私ももう少し楽になれると思わずにいられませんよ」
「ははは、レクス様はまだ補佐しやすい方だと思いますよ。ラナ様は確かにしっかりしてらっしゃるのですが、よく一人で突っ走って気が気でならない時もよくありますから」
「それはまた、お互い苦労しますね」
三人が笑い出すと、突如二つの閃光が頭上を通った。騎士達がそれを意識した次の瞬間に強烈な衝撃と爆音がキャンプ地を震撼させた。
「うおっ!?」
「なんじゃあ!?」
衝撃でビリビリと激しく震え、何本かの細い木が折れて倒れた。アラン達が頭上を見ると、銀色の魔人と黒色の魔人が、互いに対峙して浮かんでいるのが見えた。
「あれはウィル殿!?」
「なんだあの黒い奴ぁっ?ウィル殿とそっくりやないか!」
アランとボルガ達が言葉を終えたばかりに、ウィルフレッドが両手に力を込めては電光が走り、二本の剣が彼の手に握られる。片方のギルバートもまた、笑いながら電光を走らせると、漆黒の槍がその手に現れた。互いの得物を振るい、二人の魔人がさらに切り結ぶ。
「マティ!」
「レクス様!」
森の中から大急ぎでかけつけたレクス達。カイやエリネ達は息を上げながら、上空のウィルフレッドとギルバートを見上げた。
「兄貴…っ」
「ウィルさん…っ」
「うおおっ!」
「ははぁっ!」
赤と青の流星が離れてはまた交差し、その軌跡が絡み合うように空で乱舞する。槍と双剣がぶつかるたびに鈍い金属音とともに火花が散りばめられ、時おり物理法則をも無視するターンを描くその高速機動にレクスが呟く。
「す、凄まじい…、これが魔人同士の戦いなのか…?」
他の騎士や兵士達もどよめきながら、常識を逸した二人の魔人の戦いに見入り、慄く。
「懐かしいなウィル!こうしてやりあうのは何ヶ月前のことだっ!?」
「まだそんなに経ってないだろ…っ!」
「そうかぁっ!?どうやらあんたと俺がここに来るのに時間差があるようだな!けど腕は鈍っていないようで結構だっ!」
やや上に飛ぶギルバートが、下から自分を追尾するウィルフレッドに振り向き、腕の結晶を突き出しては赤い光弾が怒涛の勢いとともに連射される。
「…!」
ウィルフレッドは自分の位置と、下にいるラナ達や騎士の位置を見て、避けるのではなく双剣を振り回してそれら全てを打ち逸らした。弾は周りの森を容赦なく爆撃していく。
「うおおおっ!」
だがそれでも、押し寄せる光弾群を捌ききれず、一発がラナ達のすぐ傍に着弾し、激しい爆風を巻き起こす。
「皆離れて!」
「うわあっ!」
ラナ達は急いで回避できたが、飛散った瓦礫は何名かの兵士達にあたってしまう。
「大丈夫ですか!?」
それに気付いたエリネが急いで治療しにいく。
「っ!ちぃっ!」
それを見たギルバートは舌打ちすると射撃をやめてウィルフレッドに突進する。
「はあっ!」
ウィルもまたギルバート目掛けて斬りつき、二人の剣と槍が斬り結んでは押し合いとなった。ギリギリと金属の擦り声の中で、ギルバートとウィルフレッドは見つめあい、そして同時に互いを弾き飛ばした。
「くっ!」
空中で姿勢を安定させ、次の攻撃を備えようとしたウィルフレッドだが、意に反してギルバートは攻めずにただ彼に向けて槍を構えていた。
「どうしたギル…?」
次の動きに備えるよう構えるウィルフレッド。二人の間に暫く静の状態が続き、下にいるエリネ達も息を飲みながら見守った。
「…やめだ、やめ」
ギルバートがいきなり興醒めたように槍を収めた。
「ギル?なんのつもりだ」
「クライアントからは生け捕りの要望だがよ、このままあんたとやりあったら生け捕りどころか、あいつらもろともこのあたりを更地しかねんからな」
ギルバートはラナの傍に開いた穴を指差す。
「俺達の力、この世界ではどうも強すぎるな。いや、こっちが脆すぎるか?あんたも周りのことが気になって全力を出せずにいるんだろ?このまま戦っても不完全燃焼でつまらねえ」
ウィルフレッドは、屍竜と戦ったとき、アスティル・バスターが予想以上の火力を発揮してたのを思い出す。それもあって、ギルバートとの戦いではより意図的に力を抑えていたのは確かだった。
「だから今日はやめだ。腹も減ってきたしよ」
まるで遠足に飽きて家に帰る様な気軽さで、ギルバートは踵を返して離れようとする。
「まて、ギルっ」
「ウィル、仲間ごっこに飽きたらいつでも来な。今や俺達はアルファチームの、家族最後の生き残りだ。そん時は久しぶりに飲み明かそうじゃないか、最後までな」
そう言って黒き魔人ギルバートは一条の光の如く飛んで離れていった。
「ギル…」
――――――
ギルバートが完全に離れたのを確認すると、ウィルフレッドはキャンプ地に着地し、全身を覆う光とともに元の姿に戻った。そんな彼を、騎士と兵士達はただ凝視するばかりだった。
「ウィルくんっ」
「兄貴っ」
ラナ達が彼の元へと駆けつける。
「みんな…」
ウィルフレッドが振り向くと、物言えぬ痛みが彼の全身を走った。
「うっ、くぅっ!」
「兄貴!?」
「どうしたのウィルくんっ?」
いきなり膝をつく彼を見て、レクス達は慌てて彼を囲んで様子を見る。
「ウィルくん無事かいっ?」
心配そうに手を彼の肩に置くレクス。
「だ、大丈夫だ、ただの反動だっ…アルマ化した後はいつも、ぐぅっ!」
「そんな苦しそうにして大丈夫な訳ないでしょっ?―治癒」
苦悶するウィルフレッドにラナが治癒魔法をかける。青き光とともに暖かな流れが自分の中を駆け巡るのを感じた、だが――
「ぐぅぅっ」
痛みと疲労感は減らずにいまだ体を苛んだ。
(これは、治癒が効いてないの?)
「ウィルさんっ」
ラナが困惑するなか、兵士達の治療を終えたエリネが彼の傍にかがむ。
「ラナ様、私も手伝います」
「ええ、お願いするわ」
「――治癒」
ラナが一旦手を止め、エリネが杖をかざすと、治癒魔法の光がウィルフレッドを包んだ。
…痛みが、退いていく。疲労感も緩和され、体が安定していくとともに彼は大きく息を吐いた。
(エリーちゃんの方は効いてる…?)
ラナはもう一度治癒を彼にかけ、手応えに集中すると、やはり自分の治癒はあまり効いてないと感じられた。
「…ありがとう、ラナ、エリー。だいぶ楽になった。本当にもう大丈夫だ」
「本当に?」
「ああ」
エリネとラナが魔法をやめ、ウィルフレッドがゆっくりと立ち上がる。
「なあ兄貴、さっきの奴…あれがあんたの言っていた…」
「ああ…、俺と同じ世界からきた、ギルバートだ」
カイが会話を続けようとするが、レクスが手を上げてそれを止めた。
「ごめん、その話、あとでテントの中で聞くよ」
この時、騎士団の多くの人たちが、なんとも言えない視線をウィルフレッドに向けてることを彼らはようやく気付く。
「さっきの魔人はどうやら去ったようだな」
「ミーナ先生っ」
森の方からミーナが歩き出るのをアイシャ達が見た。彼女は一旦ウィルフレッドに視線を止めてからラナに話しかける。
「ラナ、レクス。ザーフィアス殿の遺体を火葬してあげたい。人手を貸してくれ。アイシャも一緒に来てくれ。…他の詳しい話は、その後にしよう」
「あいよ」
「ええ。…ウィルくんやエリーちゃん達は先にテントで休んでね」
ラナがカイ達を労うように伝えると、ミーナ達とともに火葬の準備にいった。ウィルフレッドはただ無言に、時おり自分をちら見するミーナを見送っては、エリネ達とともにテントに戻った。一部騎士達の視線に耐えながら――
******
ザーフィアスの火葬は、そのまま湖の傍で行われた。古代竜は力が強大なゆえ、遺体をそのまま放置してはその土地に呪詛など悪影響を及ぼす可能性もあるし、屍竜への防止策としても遺体処理は必要だとミーナが説明した。
火葬は丁重に行われた。魂を安らげる花や香油を供え、ミーナが儀式を執り行い、アイシャが鎮魂の歌を贈った。燃え盛るザーフィアスの体から、美しい青きオーラが天へと舞うのを見たと、その場に居合わせた騎士達は語っていた。
そして太陽が沈み始めた頃、騎士団のテントの中で、アランとマティを除き、昼の時のようにラナやアイシャ達が集まっていた。
「…詳細はラナから聞いておる。異世界の来訪者か…昼のあれを見てなければにわかには信じられない話だな」
ミーナがウィルフレッドをただ平然として見つめ、彼もまた目を逸らさずに彼女を見る。カイやエリネが心配そうな顔を浮かべていた。
「ええ、しかもあれほど強大な力をお持ちしてたなんて。教団の追手を容易く追い返したのも納得できます」
アイシャの口調に嫌味はなかった。
「…ラナやレクス、それにそこの二人は君を信頼しきっているが、今日のこともあるから慎重にいきたい。すまないがこっちなりに君のことを質問して構わないか?」
カイがむっとする。
「なんだよあんたっ、まるで兄貴のことを何かの犯人みたいに言ってさあっ」
「あのっ、ウィルさんは間違いなく信頼できる人なんです。どうか穏便に――」
「落ち着いてカイくん、エリーちゃん。別にミーナ先生は彼の何かを疑ってる訳じゃないわ。単に封印管理者としてより状況を把握したいだけよ」
ウィルフレッドもラナに続いてカイ達をなだめた。
「心配ない、カイ、エリー。何かやましいことを隠している訳でもないし、ギルのこともちゃんと説明しなければならないから、大丈夫だ」
「兄貴…」
「ウィルさん…」
ミーナが頷く。
「そう言ってくれると助かる。そうだな、すまないがまず君の体を診てみたい。構わないか?」
「…ああ」
ミーナは彼の傍へと座り、杖で彼の体を軽く叩いた。その箇所から、奇妙な感覚が波紋のように体を伝わる。さながら『組織』のラボでスキャンされた時のような感じだった。
「な、なんだこの肉体は!?」
ミーナが驚嘆の声をあげる。
「一見普通そうな肉体なのに強靭さが桁違いだっ!普通に若い竜並だぞ!?道理で死霊鎧を素手で粉砕できるはずだっ!」
そう言ってミーナが更に肩を叩く。
「骨格もまるで鋼…いや鋼に似たなんなのか!?でも断然軽いぞっ?脳とか体の至るところに見たこともない金属になってるし、しかもマナがないのに強力な力の波動を感じるっ、いったいこれは…?」
「それは多分、これなんだろう」
ウィルフレッドが上着を脱いだ。胸のアスティル・クリスタルが、青い光を湛えながら脈動する。それを目にしたアイシャとミーナが瞠目した。
「まあ、綺麗…これは魔晶石?いえ、どこか雰囲気が違いますね…」
「体に生えてる?いや、くっついてるのか…?」
ミーナが軽く魔力を込めてそれを杖で叩くと、キィンと何かの反動が響いて彼女が軽く仰のき、ウィルフレッドの体もまた小さく震えた。
「ぬおっ!?」
「ミーナ先生っ」
「ちょっとちょっとミーナ殿大丈夫かいっ?」
ラナとレクスが慌ててミーナを支えた。
「大丈夫かミーナ?」
ミーナは座りなおして心配するウィルフレッドに頷くが、その表情は驚愕に満ちていた。
「あ、ああ…というかなんだこれはっ!魔晶石なんて優しい代物じゃないっ!こんなもの、このハルフェンの誰でも作れんわっ!?精鋭魔法使いが百名集まっても匹敵できない程の膨大な力が凝集した結晶かのようだぞ!?しかもどこか生き物のようにも感じる…っ、一体これは…」
「驚くのも無理はないさ。これは俺の世界でも原理が解明されてないものなんだ」
ウィルフレッドが胸の結晶を撫でた。
「このアスティル・クリスタルは、俺の世界の月の裏側で発見された異星人の船の残骸から――」
「ちょ、ちょちょちょちょお~と待って!」
今度はレクスが驚きの声を上げた。
「月!?月って空に浮かんであるあの月のこと!?その月の裏側に!?いや、そもそも行けるの月って!?」
カイとエリネが頷く。
「俺達もそれ聞いた時驚いたよ。しかもその上に人が住んでるんだぜ?」
「人がっ、ルミアナ様の半身たる月にですかっ!?」
アイシャが手を口に当て、腕の聖痕に無意識に触れる。
「ええ、しかもウィルさんの世界の町には月に行くための、雲を突き抜けるほどの高い建物があるんですって」
エリネの言葉に、ラナまでもが口を大きく開けた。
「たまげたわ…貴方もそうだけど、貴方の世界も相当なものね…」
ウィルフレッドが苦笑する。
「イセイジンとか言ってたが、それってなんなの?」
「ああ、その、どう説明しようか…。月に人が暮らしてるように、遥か遠くの天体にも智慧を持ったが住んでいて、そんな彼らを異星人と呼ぶんだ」
ここまできて流石に全員の頭がぐるぐるし始めた。唯一ミーナだけが興味深々と聞いていた。
「そうか…宇宙仮説…っ!世界が一つの球体で、女神の半身たる太陽を中心に多くの球体が回るあの説…っ。もしその仮説が正しく、他の球体にも女神による命が存在するのであれば…っ!」
「ミーナ先生、話、逸れてますよ」
目を輝かせるミーナを落ち着かせるアイシャ。
「あっ、す、すまん。つい興奮してもうた」
軽く咳をするミーナにウィルフレッドが苦笑する。
「とにかく、俺の世界における異世界の来訪者と考えてもらって構わない」
「簡潔な説明、助かるよ」
レクスもまた苦笑しながら肩をすくめた。
「さっき言ったように、月の裏側で発見した異星人の船の残骸で、このアスティル・クリスタルが発見された。俺が所属していた『組織』はこれを基に超人的な力を持った生体兵器を作り出す、アルマ計画を立ち上げた。…俺はその計画で作り出された兵器の一人なんだ」
「兵器だなんてそんな…」
エリネが悲しそうな顔を浮かべた。
「ラナからは聞いているが、人を兵器に改造するとは…確かに我らの世界では普通には思いつかない恐ろしい発想だ」
「そんじゃ兄貴、ギルバートという奴も魔人になれるってことは…」
「ああ。彼は俺と同じ計画から作り出されたアルマの一人だ。『組織』に入ってから同じチームにいて、指導役や戦友として色々とお世話になっていた」
「でもあの方、ウィル様と違ってとても凶悪そうでしたよね…。どうして彼は争乱を求めるようになったのですか?」
アイシャの問いにウィルフレッドは両手を強く握り合い、どう話すべきか逡巡していた。
「…色々と事情がありそうだな。そこは無理して話さなくてもいい。…ふむ…」
ミーナは一度黙り込んだ。ラナ達やウィルフレッドの情報を整理し、なによりも亡くなる前のザーフィアスの警告を反芻して、どうすべきか決めるために。
(あのラナが誰かを大きく信頼しているのは稀だ。人格的はある程度信用はできるはずだが…ザーフィアス殿の警告は確かなものだし、こやつの力は間違いなく脅威的だ)
「先生…」
「ミーナ様…」
ラナとエリネ達はミーナの反応を待ち続け、ウィルフレッドもまた何も言わずに、静かにミーナを見つめ続けた。
(…だが力が強大故に迂闊に手はだせんな。何か理由をつけて拘束すべきか?いや、教団に与しているもう一人の魔人のこともある。情報もまだまだ足りんし、ここはやはり――)
暫くして、ミーナが真剣な表情で問うた。
「一つ確認したいことがある。あの黒い魔人はおぬしの恩人であるとラナ達から聞いたが、おぬしはそんな彼と本気で戦えるのか?」
ウィルフレッドは顔を引き締めながらも、迷いもせずに答えた。
「勿論だ。昼あいつに言ったように、その覚悟は地球にいた頃から変わっていない。…ラナやエリー達のこともあるしな」
エリネ達に微笑む彼にラナ達も喜びの表情を浮かばせる。
「そうか…正直に言おう。あのギルバートとやらが邪神教団と与している以上、我らはあやつとも対峙しなければならん。だが先ほどの戦いを見て、我々があやつを止められる力があるかどうか非常に疑わしいものだ。恐らく、現状でそれに対抗できるのは同じ魔人であるおぬしだけだろう。だから暫く我らと同行し、あやつに遭遇した場合におぬしに対処してもらいたい。お願いできるか?」
「暫くもなにも、俺は元々最後まで付き合うつもりだ」
力強く頷くウィルフレッド。
「うむ。ならば我からもう言う事はない。アイシャもそれで構わないな?」
「ええ、元々私達を助けた方ですし、ラナ様が彼を信用してるのなら、私も彼を信じます。月の巫女として、貴方の助力に感謝致します。ウィル様」
「良かったっ。ありがとうアイシャ様、ミーナ様っ」
「キュキュッ」
エリネが笑顔を綻ばせ、ルルも嬉しそうに鳴いた。
「さすがアイシャ様だぜっ!…あ、いやさすがですアイシャ様」
「ふっ、我にもアイシャへの半分の愛想あれば良いのだがなあ青二才よ?」
「へっ、アイシャ様はあんたと違ってとても品のある俺達の王女様だ。丁寧に接するのはあたりまえだろ?」
「品のある、か。確かにそうだな」
ミーナがニヤついてはアイシャを見て、彼女もまた意味深そうに目を逸らす。ラナはその意味を全て理解したかのように苦笑した。
「それはそうと、集会までに時間があるんだから、ウィルくんの世界のこともっと聞かせてくれないかしら?」
「あ、いいですねラナ様、私にもぜひ聞かせてくださいっ。なんだか色々と面白そうな話しが聞けそうですっ」
「アイシャ様きっと驚きますよ。兄貴の世界では馬車みたいのが自分で走るだそうですから」
「ほんとですかっ!?」
「しかも空飛べるんだってさ」
「えぇっ!?」
「はは、ウィルくんってホント話題尽きないよね。僕にもぜひ聞かせてもらいたいな」
先ほどの緊迫した雰囲気とは打って変わって、和気藹々な空気がテントを満たす。自分にとっては寧ろこの世界こそ驚異と驚きに満ちてるのにと思いながら、どこか懐かしい暖かな気持ちにギルバート達と過ごした時間を思い出し、胸が軽く締め付けられるウィルフレッドだった。
「ほらウィルさん」
「…ああ」
エリネの声でウィルフレッドは頷くと、先ほどエリネ達にも話していた地球のことを語り始め、ラナ達は興味津々と耳を傾けた。感嘆の声と談笑のなか、ミーナだけが話を聞きながら、真剣な眼差しでウィルフレッドを見つめていた。
【続く】
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