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第3章
本音
しおりを挟む「……真田…先生……。」
漸く喉から搾り出した声は、佐助自身もよく聞き取れなかった。
咄嗟に白濁液で汚れた手を背中に隠すも、流石に動揺ばかりは隠しきれない。
何で…こんな所にいるんだ。
「あ、あの…。遊馬…、その俺…」
酷く狼狽した様子で、真田はしきりに目を泳がす。この様子じゃ、佐助が予想する最悪な状況になっているようだった。
「…見たのか?」
端的にそう真田に尋ねる。
「い、いやっ!み…見ては…いない…」
「…じゃあ聞いてたのか。」
すると途端にびくりと肩を震わせ、真田は俯いた。それが肯定の意味だとわからないほど、佐助も馬鹿じゃない。
「あんた、いつからいたんだ。」
佐助は極力声を低くし、最早敬語を使う余裕もなく、たじろぐ真田に詰問する。すると真田は観念したのか、躊躇いがちに視線を上げて、ぼそりと呟いた。
「…授業が終わってからすぐ…。」
殆ど最初からじゃねえかと、佐助は内心頭を抱える。
「保健室も覗いたけど、北条先生は来てないって言うし、渚に心当たりがある場所を教えてもらって…。それでここに…」
小太郎の奴、余計なこと言いやがって。
心中毒づくも、既に後の祭りである。
「お、俺は別になんとも思ってないからな!同じ男として気持ちはよくわかるし…。」
『おい、これ以上傷口を抉るようなこと言うな』
恥ずかしいやら情けないやらで、今すぐにでも佐助はこの場から逃げ出したかった。それよりも、よくこの距離で聞こえたなと佐助は感心すら覚える。
「…まあ健全な男子高校生だからそりゃ仕方ないとは思うけどな、でも何も俺の授業をサボってまでやるこたぁないだろ…。」
真田は首を垂れて少し拗ねた顔をする。
「いやいやちょっと待て。この寒空の下で1時間もしてたわけねぇだろうが!いつの間にか屋上で寝ちまってて起きたら…その、こうなってたから仕方なく…!」
何かとんでもない勘違いをしているこの天然馬鹿に、佐助は声を荒げて反論した。
「へ?そうなのか?」
真田は小首を傾げてきょとんとする。
昔からこういうことに関しては、確信犯なんじゃないかと思うほど鈍感なところがあったが、どうやらそれは今も健在らしい。
それが余計佐助の癪に障った。
「…それとも何?あんた、これをどうにかしてくれるつもりだったのか?」
ふと唇に弧を描き、佐助は意地悪く真田の耳元で囁いた。
ーーーもうこれ以上俺の中に入ってくるな。
何も知らないくせに。
何も覚えてないくせに。
八つ当たりだと言うのは、嫌という程わかってる。
だけど、俺を知らないあんたの側にいることが、どれだけ俺を苦しめるのかわからないだろう?
嗚呼いっそ、めちゃくちゃに嫌われてやろうか。
「 」
佐助は、‘禁術’を発動させたーーー。
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