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第9章
異変
しおりを挟むテスト期間中は、昼前に生徒たちは下校することになっている。
不幸中の幸いとはこの事だと真田はこめかみに手を当てた。
中々保健室に行く勇気が出ず、結局ズルズルと二時間目を終えたのだが、もう真田は限界だった。
テストはあとニ教科残っているが、真田が担当する教科はもうない。
ここで倒れては周りの人に迷惑がかかってしまう。
真田は意を決して保健室へと足を向けた。
「…失礼します。」
カラカラと遠慮がちに保健室のドアを開け、真田は室内を覗き込む。しかしそこに北条の姿はなく、加湿器の水音だけが静かに鳴り響いていた。
北条の事務机の上には外出中と書かれたプレートが置いてあり、真田は少し安堵の表情を浮かべる。
誰もいない保健室は心地良くて、真田はソファに深く凭れかかった。
「う…っ…」
だが、相変わらず頭痛は酷くなる一方で、真田は痛み止めを探し求めて薬棚の硝子戸を開く。
勝手に薬品類を触るのは忍びなかったが、これ以上痛みが悪化すれば業務に支障をきたしてしまう。
いつ戻ってくるかもわからない北条を待っているわけにもいかず、真田は片っ端からめぼしい物を引っ張り出すも、どれも見たことのない薬瓶ばかりで、一体何を飲めばいいのか皆目見当もつかなかった。
「あれ?」
途方に暮れていた時、ふと薬棚の奥に見覚えのある小瓶が置かれているのが目に入った。
『これ、薬局とかで市販されてる鎮痛剤だ。』
真田は小瓶を手に取り、効能が書かれたラベルをまじまじと見つめる。
『頭痛にも効くって書いてあるし、これなら飲んでも大丈夫だよな。』
真田はとりあえず一刻も早くこの痛みから解放されたくて、使い捨ての紙コップに水道水を注ぎ、一気に薬を二錠ほど飲み干した。
『確か薬の効果は30分くらい経たないと現れないんだよな。…それまでベッドで休ませてもらおう…。』
少なくとも、あと一時間は休める筈だ。
真田はそう考え、一番奥のベッドのカーテンの仕切りを閉めてふかふかの布団の中に潜り込んだ。
昨夜は殆ど眠れなかった所為もあってか、段々と意識がぼんやりとしてくる。
だが、睡魔に襲われている時の感覚とはどこか違う違和感を覚えた。
『…?頭がぼーっとしてくる…。でも、別に眠いわけじゃ…ない、のに…。』
なんだ、この感じーーー。
身体が急に熱を帯びたように熱い。
「…ん…っ!」
何だか息苦しくて体勢を変えようとした時に、全身にあり得ないくらいの快感が迸り、真田は思わず嬌声を漏らした。
「ん…だ…これ…っ!?」
鼓動は早鐘のように打ち、真田ははくはくと浅い呼吸を繰り返す。身動きすれば、ほんの僅かな衣擦れで余計に快楽を享受してしまう。
明らかに異常な状態だった。
真田が恐る恐る下肢の間に手を伸ばすと、そこは痛いくらいに張り詰めていて、先走りの液でしっとりと濡れていた。
『嘘だろ…っ、なんでこんなことに…!?』
朦朧とする意識の中で真田は必死に思考を巡らせるも、まともな事など何も考えられない。
「く、そっ!頼む、おさ、ま…ってくれ…!」
手首に血が滲むくらい強く噛み付き、なんとか痛みで気を逸らせようとするも、それさえ強い刺激となって真田の身体を襲う。
「ぅ…くっ!」
どうしたらよいかもわからず、真田はただ手首を噛んでジッとするしかなかった。
その時、ガラリと入口の扉が開く音が聞こえ、真田は一瞬身を固くする。カツカツと小気味良い革靴の音を響かせ、
「誰かいるんですか?保健室を利用する時は問診票に記入してもらわないと…」
カーテンの仕切りから顔を覗かせたのは、北条だった。
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