僕の「サヨナラ」を忘れないで。

独立国家の作り方

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どうか僕のことを、忘れないで

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 まったくヘマをやってしまった。
 まさか、車に轢かれるなんてね。
 
 冷たい雨が、僕を濡らしてゆく。
 白かった僕の毛並みは、どんどん赤く染まってゆく。

 僕は、もうダメなんだろうね。

 猫としては、長く生きた方だから、死ぬ事に悔いはない。
 でもね、君の事だけが心配だ。
 僕は、彼女が生まれた時から、ずっと見て来たんだ。
 僕のこんな姿、彼女はきっと傷付く。
 どうか、僕の最後は、見ないでほしい。
 
 こんな僕にも、心残りがある。

 君の、花嫁姿が見れなかったことだ。
 図々しく、僕は君が嫁いだ先に居候して、二人の間に出来た子供の顔を見るつもりだったんだぜ。
 僕は、君の膝の上で、陽光を浴びながら昼寝をするのが一番の幸せだった。
 そんな日常が、ずっと続くと思っていた。
 
 まったく、とんだヘマをやらかしたものだ。
 
 僕はね、なんで猫に生まれたんだろう、っていつも思っていた。
 人間の男だったら、颯爽と君の前に現れ、君を口説く行く事だって出来たろう。
 
 死ぬにあたって、専ら気掛かりなのは、君の行く末だけだよ。

 ちゃんと食事は採っているかい?
 勉強は、捗っているかい?
 家族と、しっかり話し合っているかい?
 好きな人は、出来たかい?
 
 、、、、僕は、君の癒しになれたかい?


 体が冷たくなってきた。

 僕は、もう逝くのだろう。

 神様、、、本当はね、、最後に本音を言うならば、
 最後は、彼女の膝の上が良かった。
 あの、至福の時間を、出来ればもう一度、僕は噛みしめたかった。

 でも、それは叶わないだろう。

 だから神様、僕の願いは、ただ一つだけです。

 どうか、彼女を幸せにしてあげて、ください。
 良い、パートナーを見つけてあげてください。
 
 それで、いいのです。


 、、、、でも、どうして?
 僕は、そんな事、望んではいないのに。
 こちらに近付く足音、聞き覚えのある、この声。

 神様、僕は、こんな姿を、彼女に見せたくはなかった。

 きっと、彼女はショックを受ける。
 
 ほらね、、、悲鳴を上げて、、、。

 僕を抱き上げ、、、、

 ねえ、どうか、泣かないで。
 こんな僕のために、君が泣くことなんて無いんだよ。
 ほら、せっかくの君のお洒落着が、僕の血で染まってしまう。
 
 だから、僕を、どうか、抱かないで。

 
 でもね、神様、、、、、
 最後に、僕の願いを叶えてくれて、、、ありがとう。


 強がっていたけどさ、、、、本当は、死ぬのが怖いし、悲しかった。
 本当は、思いっきり泣きたかった。
 怖かったんだ。

 最後に、ワガママ言ってしまえば。

 どうか、僕を、抱っこして離さないで。

 最後は、君に抱かれて、逝きたいから。
 こんなワガママを聞いてくれて、ありがとう。

 こんな僕のために、大泣きしてくれる君の事が、、、、大好きだよ。
 だからね、もう、泣かないで、
 いつもの、笑顔を見せてほしい。
 どうか、僕の事で、泣かないでほしい。

 君の、幸福な未来に、僕を連れて行ってほしかった。

 人間と動物の寿命って、合わないものだね。
 君の事を、天国で、ずっと見守っているから、、、、どうか、今だけは、、、

 僕を、離さないで。
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みんなの感想(1件)

2024.07.19 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

2024.07.20 独立国家の作り方

ありがとうございます!
野良の白猫も、きっと自分の毛並みが汚れないように、気を遣っていたのかもしれませんね。
玄未マオさんの事を、天国から見ていると思います。

解除

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