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第1堡塁の戦い
第69話 陣前突撃の兆候あり
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「、、、そうだね、三枝君、君の言うとおりだ、そこに敵はいないね」
「おい、いくら高校時代からのつきあいでも、何ら根拠もなくそんなことを言うもんじゃないぞ、指揮官であれば明確な根拠に基づき判断すべきだ」
城島がそう言うと、優が少し笑いながら返す。
「根拠なら、あるよ。敵の第一堡塁《だいいちほうるい》前方を見てごらん」
優がそう言うと、敵の第一堡塁正面が最大ズームで画面一杯に拡大された。
「特に変わった様子はないわね」
幸が目を凝らす、そして、彼女は何かを見つけるのである。
「あ、敵第一堡塁正面に、陣前突撃《じんぜんとつげき》の兆候あり」
優がそれを見て、龍二に問う。
「三枝君、君が見ていた敵は、これだね」
当初、幸もその他の者も、何を言っているのかが理解出来なかった、しかし、次第に、その思考に気づき始めるものが出てきた。
「そうか、そう言うことか」
城島も意外と早く気付く。
そう、今回の作戦は、そもそも敵に夜間攻撃の可能性を疑わせる所から始まっている、つまり敵は、これから夜間に我々を迎え撃つための準備をしている事になる。
その中でまず龍二が考えたのが、要塞守備側が通常行わない「陣前突撃《じんぜんとつげき》」である。
この攻撃方法は意外性があり、奇襲効果は絶大だが、鉄壁の要塞防護を、わざわざ自分から捨てて要塞の外に出て行く非常に高いリスクを伴う。
しかし、防御側は攻撃側の3割しか兵員を持てないと言う相対兵力《そうたいへいりょく》でルール上劣る第一師団側は、貴重な戦力を奇襲作戦である陣前突撃に割くため、三枝軍の兵力を出来るだけ分散させて、陣地正面における戦いを有利にさせる必要があった。
そのために、編成完結式《へんせいかんけつしき》の直後に激しい砲撃を加え、三枝軍の機甲戦闘力を割く必要があり、更に偽の空挺降下をする事で、三枝軍の兵力分散を誘導する必要があったのである。
しかし、実兵力を本当に空挺降下させてしまうと、要塞守備兵力と陣前突撃に使用する第一師団の兵力が分散してしまうため、この空挺降下に割く兵力は計算上抽出できないことになる。
この戦いのルール上、途中で兵員を増やす事は絶対に出来ない。
双方は、手持ちの戦力のみで戦うことがルールで決められている以上、空挺降下させるのであれば要塞守備隊から人員を割かなくてはならない事情がある。
龍二は当初から、上条師団長ならそこまでしてくると気付いていたのだ。
そのため、あの編成完結式をわざと長引かせ、敵に自軍の装甲車両を撃たせたのである。
、、、それは即ち、龍二が最初から敵の作戦を全て読んでいたことを意味する。
それを理解出来たからこそ、優は背筋を凍らせたのである。
あの言葉の意味、「空挺降下へ対処する必要がない」、という真意はまさにそこにあったのである。
そして、さらに答え合わせをするならば、あのおかしな時期に下車展開《げしゃてんかい》した理由も、そこには重要な意味があった。
第一師団側は、装甲車両の利点を生かし、昼間に緊迫《きんぱく》し、夜間に下車展開して攻略を試みると予想している、そのため、装甲車両と兵員を、敵が予想もしない戦術的にあり得ない時期に下車展開させることで、敵が予想する、下車展開時期に兵員を撃滅《げきめつ》させるために撃つであろう砲迫射撃《ほうはくしゃげき》を無効化させる意味があった。
兵員を狙った砲撃は、装甲車両へ撃ち込んでも破片効果《はへんこうか》は低い、ここまでの一連の行動は、それら全てを予想してのことであり、今それは龍二の予想通りに進んでいるのである。
そして、優が最も恐ろしいと感じたことは、この後の無線によって証明された。
偵察に行っていた斥候からの無線で
「敵の空挺降下は偽降下《ぎこうか》。実員《じついん》はいません!、物量投下《ぶつりょうとうか》による偽物です!」
この無線を聞いた全員の背筋は凍った。
それは、三枝龍二が、この誰も予想しなかった空挺降下を、起こることとして予想していたことと、それが偽降下であることを最初から見抜き、確認作業すら行わせなかったという「自信」に気付いたからである。
そう、どんなに戦術的にそうだと思っても、実際に奇襲されれば心理として確認したくなるものである。
それをせず、自身の思考に絶対の自信をもってここまで部隊を率いてきたのである。
更に言えば、この無線が全員に傍受《ぼうじゅ》出来る仕組みにしていたことで、三枝龍二という指揮官に対する信頼とカリスマ性を一気に引き上げてしまったこと、これこそが、優が一番驚いたことであり、むしろ恐怖したことでもあった。
そう、龍二は高校時代から、チームの運用をこのレベルで牽引してきたのである。
「おい、いくら高校時代からのつきあいでも、何ら根拠もなくそんなことを言うもんじゃないぞ、指揮官であれば明確な根拠に基づき判断すべきだ」
城島がそう言うと、優が少し笑いながら返す。
「根拠なら、あるよ。敵の第一堡塁《だいいちほうるい》前方を見てごらん」
優がそう言うと、敵の第一堡塁正面が最大ズームで画面一杯に拡大された。
「特に変わった様子はないわね」
幸が目を凝らす、そして、彼女は何かを見つけるのである。
「あ、敵第一堡塁正面に、陣前突撃《じんぜんとつげき》の兆候あり」
優がそれを見て、龍二に問う。
「三枝君、君が見ていた敵は、これだね」
当初、幸もその他の者も、何を言っているのかが理解出来なかった、しかし、次第に、その思考に気づき始めるものが出てきた。
「そうか、そう言うことか」
城島も意外と早く気付く。
そう、今回の作戦は、そもそも敵に夜間攻撃の可能性を疑わせる所から始まっている、つまり敵は、これから夜間に我々を迎え撃つための準備をしている事になる。
その中でまず龍二が考えたのが、要塞守備側が通常行わない「陣前突撃《じんぜんとつげき》」である。
この攻撃方法は意外性があり、奇襲効果は絶大だが、鉄壁の要塞防護を、わざわざ自分から捨てて要塞の外に出て行く非常に高いリスクを伴う。
しかし、防御側は攻撃側の3割しか兵員を持てないと言う相対兵力《そうたいへいりょく》でルール上劣る第一師団側は、貴重な戦力を奇襲作戦である陣前突撃に割くため、三枝軍の兵力を出来るだけ分散させて、陣地正面における戦いを有利にさせる必要があった。
そのために、編成完結式《へんせいかんけつしき》の直後に激しい砲撃を加え、三枝軍の機甲戦闘力を割く必要があり、更に偽の空挺降下をする事で、三枝軍の兵力分散を誘導する必要があったのである。
しかし、実兵力を本当に空挺降下させてしまうと、要塞守備兵力と陣前突撃に使用する第一師団の兵力が分散してしまうため、この空挺降下に割く兵力は計算上抽出できないことになる。
この戦いのルール上、途中で兵員を増やす事は絶対に出来ない。
双方は、手持ちの戦力のみで戦うことがルールで決められている以上、空挺降下させるのであれば要塞守備隊から人員を割かなくてはならない事情がある。
龍二は当初から、上条師団長ならそこまでしてくると気付いていたのだ。
そのため、あの編成完結式をわざと長引かせ、敵に自軍の装甲車両を撃たせたのである。
、、、それは即ち、龍二が最初から敵の作戦を全て読んでいたことを意味する。
それを理解出来たからこそ、優は背筋を凍らせたのである。
あの言葉の意味、「空挺降下へ対処する必要がない」、という真意はまさにそこにあったのである。
そして、さらに答え合わせをするならば、あのおかしな時期に下車展開《げしゃてんかい》した理由も、そこには重要な意味があった。
第一師団側は、装甲車両の利点を生かし、昼間に緊迫《きんぱく》し、夜間に下車展開して攻略を試みると予想している、そのため、装甲車両と兵員を、敵が予想もしない戦術的にあり得ない時期に下車展開させることで、敵が予想する、下車展開時期に兵員を撃滅《げきめつ》させるために撃つであろう砲迫射撃《ほうはくしゃげき》を無効化させる意味があった。
兵員を狙った砲撃は、装甲車両へ撃ち込んでも破片効果《はへんこうか》は低い、ここまでの一連の行動は、それら全てを予想してのことであり、今それは龍二の予想通りに進んでいるのである。
そして、優が最も恐ろしいと感じたことは、この後の無線によって証明された。
偵察に行っていた斥候からの無線で
「敵の空挺降下は偽降下《ぎこうか》。実員《じついん》はいません!、物量投下《ぶつりょうとうか》による偽物です!」
この無線を聞いた全員の背筋は凍った。
それは、三枝龍二が、この誰も予想しなかった空挺降下を、起こることとして予想していたことと、それが偽降下であることを最初から見抜き、確認作業すら行わせなかったという「自信」に気付いたからである。
そう、どんなに戦術的にそうだと思っても、実際に奇襲されれば心理として確認したくなるものである。
それをせず、自身の思考に絶対の自信をもってここまで部隊を率いてきたのである。
更に言えば、この無線が全員に傍受《ぼうじゅ》出来る仕組みにしていたことで、三枝龍二という指揮官に対する信頼とカリスマ性を一気に引き上げてしまったこと、これこそが、優が一番驚いたことであり、むしろ恐怖したことでもあった。
そう、龍二は高校時代から、チームの運用をこのレベルで牽引してきたのである。
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