決戦の夜が明ける ~第3堡塁の側壁~

独立国家の作り方

文字の大きさ
92 / 103
第2堡塁の衝撃

第91話 19歳の防大1学年

しおりを挟む
 戦闘艦「しなの」艦載機による豪快な空中戦と、第3堡塁爆撃の衝撃は凄まじく、師団の残存兵力は、大いに士気を下げる結果となった。


「、、、、三枝、、お前、いつの間に空軍なんて手配していたんだ?」

 それは、何とも歯切れが悪く聞いてくる城島だった。

「黙っててすまなかったな城島、敵が航空攻撃を仕掛けて来ることは予想されていたが、完全に敵を欺くには、こちらの手の内を全て公開することが出来なかったんだ」

 それにしたって、徹底的な秘密保持であった。
 龍二は、もちろん生徒会参謀部や陸軍工科学校の生徒達を信頼していた。
 しかし、防諜とは、そういうものだと、何故か理解していたのである。
 それは、優れた軍人が持つ安全弁とも言えた。
 
 三枝龍二、この時点で19歳の防大1学年、そして陸軍中尉である。
 
 彼のそう言った能力が、正当な評価を得るのは、恐らくまだ先の事になるだろう。
 しかし、その能力を間近で見せられた者の中には、それに気付くことが出来る者も何名か存在していた。
 
 如月 優と、通信見習いで指揮所に参加中の、経塚 雅司である。

 当然、城島や幸も、三枝の異常性には気付いていたが、優と経塚の二人は、その思考過程まで異常であることに気付き、その思慮深さに恐怖すら覚えていた。

 それは、二人にとっていつかは越えなければならない目標に思えた、、、のだが、到底超える事なんて出来ないとすら感じた。

 恐らく、この兄弟達には、何か秘密があるに違いない、そう、秘密が。
 そう思わなければ、生まれ持った龍二の能力に、嫉妬せずにはいられないのだ。
 何しろ、龍二も自分たちも、戦術教育など、未だ受けたことなど無いのだから。


 そんな時であっても、龍二は冷静に指揮を執り続けた。

「第3堡塁からの砲撃に注意せよ、もう、砲撃来るぞ」

 一同がまだ、しなの艦載機による圧倒的な攻撃の余韻に浸っているその場の空気に割くように、、龍二の激が飛ぶ。
 そう、まだ徒歩兵は第2堡塁に到達すらしていないのだから。

「第1堡塁の要塞砲部隊、全弾射耗して構わない、第2堡塁に向け、弾幕を発動」

 一同は耳を疑った。
 いくら今が勝機であっても、要塞砲だけが全弾撃ち尽くしてしまえば、再び自分たちの砲撃は、自隊の砲兵部隊と迫撃砲部隊のみになってしまう。
 口径が大きく、破壊力の大きな、要塞砲部隊が撃てなくなってしまえば、最後の第3堡塁攻略が困難になることは明白だった。

「ねえ、三枝君、どうして要塞砲部隊だけにこれほどの射耗を強いるの?、分担して砲撃させた方がいいんじゃない?」

 一般常識で言えば、優の言う事が正しい。
 これは、砲兵術の基本中の基本である。
 一つの砲に大量射耗させるより、全ての砲に射撃を分担させた方が、いざ敵の砲兵との撃ちあいになった時、優勢に戦う事が出来る。
 しかし、撃ち尽くして門数が減ると、同時多発的に使用できる砲の数が少なくなってしまうため、威力が落ちてしまうのだ。
 実は、優は密かに戦術の勉強を始めていたため、そのことに気付いていたのだ。
 それは、憧れでもあり、友人でもあり、そしてライバルでもある三枝龍二に、少しでも追い付きたい、負けたくないという気持ちが働いていた。
 そうしないと、自分はいつまでも徳川 幸と、友人以上に進めないと、そしてまた彼女も自分を男として見てくれないだろうと、そんな想いから来る行動であった。
 そして優は、砲術に関して、自分はいくらか龍二よりも知識があると考えていた。

 、、、しかし、それが実際には、それがそうではないという事を、思い知らされるのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

異世界宇宙SFの建艦記 ――最強の宇宙戦艦を建造せよ――

黒鯛の刺身♪
SF
主人公の飯富晴信(16)はしがない高校生。 ある朝目覚めると、そこは見たことのない工場の中だった。 この工場は宇宙船を作るための設備であり、材料さえあれば巨大な宇宙船を造ることもできた。 未知の世界を開拓しながら、主人公は現地の生物達とも交流。 そして時には、戦乱にも巻き込まれ……。

【シスコン】シスターコントロール ~兄のダンジョン探索を動画サイトで配信して妹はバズりたい!~【探索配信】

釈 余白(しやく)
キャラ文芸
 西暦202x年、日本を襲った未曾有の大災害『日本列島地殻変動』により日本での生活環境は一変してしまった。日本中にダンジョンと呼ばれる地下洞窟が口を開き、周辺からは毒ガスが噴出すると言った有様だ。  異変から約一年、毒ガスの影響なのか定かではないが、新生児の中に毒ガスに適応できる肺機能を持った者たちが現れ始めていた。さらにその中の数%には優れた身体能力や頭脳を持つ者や、それだけでなく従来とは異なった超能力と言える特殊な異能力を持つ者もいた。  さらに八十年ほどが過ぎて二十二世紀に入ったころには人々の生活は落ち着き、ダンジョンを初めとする悪辣な環境が当たり前となっていた。そんなすさんだ世の中、人々の娯楽で一番人気なのはダンジョンを探索する限られた者たちの様子をリアルタイムで鑑賞することだった。  この物語は、ダンジョン探索に情熱を燃やす綾瀬六雨(あやせ りくう)と、その様子を配信してバズりたい綾瀬紗由(あやせ さゆ)という、どこにでもいるごく普通の兄妹が身近な人たちと協力し楽しく冒険するお話です。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

織田信長 -尾州払暁-

藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。 守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。 織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。 そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。 毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。 スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2022.04.04) ※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。 ※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

処理中です...