その失踪事件には 〇〇人が関与している

独立国家の作り方

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初めての同胞

第46話 中嶋 洋子 ⑥

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 彼の名前は伊賀 邦弘いが くにひろと言い、驚いた事に隣の大学に通う同い年だった。
 どうしてこれまで、彼の存在に気付かなかったのだろうか。今日はあんなにはっきりと天空への糸が見えていたと言うのに。

「解ってくれたかしら、貴方と私は恋人同士ではないの。単なる知り合い。いい?」

「僕たちの距離感は、この世界の人間が言う恋人の距離感だと思うのだけど」

「それは、今あなたが距離を詰めただけでしょ!」

「でも、洋子は拒否していない。 第一、君は服を脱いで僕と接触を試みたのでは?」

 もう本当に止めて!! ごめんなさい、若気の至りです・・・・
 それにしても、洋子・・・・洋子って、いきなり下の名前を、呼び捨て・・・・随分馴れ馴れしいな、こいつ。
 そう、彼は物質的な距離感だけではなく、精神的な距離感も少しおかしい所がある・・あると言うより、もう全部の距離感がおかしい。

「今は私にも余裕がないの。あなたとの距離感は何一つ縮まっていないんだから」

「洋子は・・・・僕の事を名前で呼んでくれないんだね」
 
 あー、もう、いちいちこの人は、ちょっとずつ母性本能を擽ってくるな。
 このイケメンで、こんなチグハグな事を言われたら、言う事聞いてあげたくなるじゃない!

「わかったわ、邦弘君で、いいのよね」

「邦弘、『君』はいらない」

 幼児か! 幼子かあんたは! ・・・・もう仕方がないな。

「じゃあ邦弘、今度は私があなたに質問ね。人型ルアーに釣られた人類は、昇天した後、どうされるの?」

「どうって? 洋子もそれは理解しているじゃない、実験だよ」

「実験って・・・・人体実験?」

「ん-、人体と言うか、まあ、そんな感じじゃないかな? どうしてそんな事をわざわざ聞くの?」

「前に私が釣った男子がいてね、私、その人の事を探しているの。あなた、何か知らない?」

「もちろん知っているけど・・・・どうして洋子はその記憶が無いの?」

 え? 私にも本来あるべき記憶ってことなの? 
 どうも話をしていて感じるのだけど、私とこの人、やっぱり同じルアーだとは思えないのよね。
 彼が当たり前としている知識と、私が当たり前としている常識の、ほとんどが噛み合っていない。
 それは、恐らく私たちが異質な者同士だと言う事を示している。

「お願い、教えてくれるかしら、来栖君の事。彼は今、どこにいるの・・・・もしかして、もう死んでたりするの?」

「まさか! 我々が人類を殺傷するなんて事は有り得ない。魂の損傷はこの宇宙全体としても極めて重罪なんだよ」

「じゃあ、来栖君は生きている? のよね」

「もちろん生きている」

「じゃあ、今、何処に?」

「今の君なら、簡単に理解出来るはずなんだけど。もう、とっくにキャッチ・アンド・リリースされたよ」

 キャッチ・アンド・リリース・・・・それって、もう同じ人間界へ戻されたって事!?
 そんな事、有り得ない! 私のクラスに来栖君は居なかった、私の周囲には、彼は何処にも居なかったわ!
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