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第二章:約束
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その勢いは俺を圧倒した。
「いいなぁ。やっぱり土田さんは優しい人だ! 貴方に担当してもらう新郎新婦は幸せ者ですね! そんな風に、一緒に、親身になってくれるプランナー……、俺やっぱりいつか結婚する時は、あなたのいる式場で挙げたいです! 貴方にお願いしたい!」
「ご結婚のご予定でもあるんですか?」
思わず聞いてしまう。
「ない! ないんですけども!」
「無いんじゃないですか!」
ツッコむと、彼はコロコロと楽しそうに笑って、「だって、愛し方が分からない」と笑い飛ばした。どうしてそんなに「人を愛すること」が苦手なんだよ。
「昔から苦手なんですか?」
「ん? 何がです?」
とぼけるところじゃないだろ。
そう思うが、悪気もなさそうだ。
「人を愛することですよ。今まで好きだなとか、可愛いなって思った彼女、一人もいらっしゃらないんですか?」
「いや……、なんだろうな。愛せないというよりは、もしかして好きになるのが怖いのかもしれないですね」
無駄に、心臓を一突きされた気がした。
怖い?
理解が追い付かないわけじゃない。でも、一番に思ったのは「一人の方が怖いだろ」という思いだった。
でも、そうじゃないのだ。この人は誰かを好きになって傷つくくらいなら、一人の方がいいと思っている。俺とは少し違う。俺はだって……。
「俺は、一人は……嫌です」
脳裏に浮かぶは、夢の欠片。
俺の名前を叫ぶ誰かが、顔の見えない誰かに引き摺られて姿を消してしまう。「彼を助けて」「お願い」「離して」と叫んで、足の動かない俺を……一人にするんだ。
でも、俺が「行け」と言った。確かにそう言った。だけど本当は、この足を引きちぎってでも一緒に居て欲しかった。邪魔な足なら切り落とせばいいんだから。それで少しでも俺の体が軽くなるのなら、そうでもして一緒に連れて行って欲しかった。離れたくなんかなかったんだ、本当は。
だから俺は……俺は、あぁ、そうだ。真っ赤な空を見て思った。
「来世でもいい……今度こそ、一緒に、と」
そうだ。
俺はそう祈った。そう祈ったんだ──!
目の前が一気に拓けた気がした。
華頂さんは俺の言葉にきょとんとし、「来世?」と聞き返す。
そうだよ、来世だ。俺……っ、夢の中で何度もそれを祈った!
「……えぇ、来世です。来世でもいいから、俺は、好きな人とずっと一緒に居たいと、そう思います」
誰と一緒に居たかったのかは分からない。だけど、俺の名前を叫んで連れて行かれた人は、俺の愛する人だったのだろう。
華頂さんは俺の言葉に恥ずかしそうに微笑むと、「いいですね」と囁いた。
「そんな風に愛してもらえる女性は、幸せ者だ。羨ましいな。俺が立候補したいくらいだ」
そんなどうしようもないことを言って、華頂さんはアイスコーヒーを一口飲むと、「ちょっとお手洗いに失礼します」と席を立った。
目の前から華頂さんが居なくなり、俺は誰にも気付かれないように、涙を拭いた。
トイレに行ってくれて良かった。夢の内容を思い出して泣いているなんて……、知られたくはないから。
泣き叫びながら連れて行かれたキミは……、
「……一体、誰なんだ」
「いいなぁ。やっぱり土田さんは優しい人だ! 貴方に担当してもらう新郎新婦は幸せ者ですね! そんな風に、一緒に、親身になってくれるプランナー……、俺やっぱりいつか結婚する時は、あなたのいる式場で挙げたいです! 貴方にお願いしたい!」
「ご結婚のご予定でもあるんですか?」
思わず聞いてしまう。
「ない! ないんですけども!」
「無いんじゃないですか!」
ツッコむと、彼はコロコロと楽しそうに笑って、「だって、愛し方が分からない」と笑い飛ばした。どうしてそんなに「人を愛すること」が苦手なんだよ。
「昔から苦手なんですか?」
「ん? 何がです?」
とぼけるところじゃないだろ。
そう思うが、悪気もなさそうだ。
「人を愛することですよ。今まで好きだなとか、可愛いなって思った彼女、一人もいらっしゃらないんですか?」
「いや……、なんだろうな。愛せないというよりは、もしかして好きになるのが怖いのかもしれないですね」
無駄に、心臓を一突きされた気がした。
怖い?
理解が追い付かないわけじゃない。でも、一番に思ったのは「一人の方が怖いだろ」という思いだった。
でも、そうじゃないのだ。この人は誰かを好きになって傷つくくらいなら、一人の方がいいと思っている。俺とは少し違う。俺はだって……。
「俺は、一人は……嫌です」
脳裏に浮かぶは、夢の欠片。
俺の名前を叫ぶ誰かが、顔の見えない誰かに引き摺られて姿を消してしまう。「彼を助けて」「お願い」「離して」と叫んで、足の動かない俺を……一人にするんだ。
でも、俺が「行け」と言った。確かにそう言った。だけど本当は、この足を引きちぎってでも一緒に居て欲しかった。邪魔な足なら切り落とせばいいんだから。それで少しでも俺の体が軽くなるのなら、そうでもして一緒に連れて行って欲しかった。離れたくなんかなかったんだ、本当は。
だから俺は……俺は、あぁ、そうだ。真っ赤な空を見て思った。
「来世でもいい……今度こそ、一緒に、と」
そうだ。
俺はそう祈った。そう祈ったんだ──!
目の前が一気に拓けた気がした。
華頂さんは俺の言葉にきょとんとし、「来世?」と聞き返す。
そうだよ、来世だ。俺……っ、夢の中で何度もそれを祈った!
「……えぇ、来世です。来世でもいいから、俺は、好きな人とずっと一緒に居たいと、そう思います」
誰と一緒に居たかったのかは分からない。だけど、俺の名前を叫んで連れて行かれた人は、俺の愛する人だったのだろう。
華頂さんは俺の言葉に恥ずかしそうに微笑むと、「いいですね」と囁いた。
「そんな風に愛してもらえる女性は、幸せ者だ。羨ましいな。俺が立候補したいくらいだ」
そんなどうしようもないことを言って、華頂さんはアイスコーヒーを一口飲むと、「ちょっとお手洗いに失礼します」と席を立った。
目の前から華頂さんが居なくなり、俺は誰にも気付かれないように、涙を拭いた。
トイレに行ってくれて良かった。夢の内容を思い出して泣いているなんて……、知られたくはないから。
泣き叫びながら連れて行かれたキミは……、
「……一体、誰なんだ」
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