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【承】 祝福の花火
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「兄ちゃん!」
呼びかけられハッとした。
俺は十年後の未来になんの希望も期待も持てない。嵐と十年後も一緒にいるなんて……ごめん、想像できない。あまりに世代が違いすぎるから現実味がないというか。
「俺、兄ちゃんとずっと一緒に居たい。頭悪いけど、兄ちゃんの役に立てるなら進学しようと思うし、お菓子のことももっと勉強したい」
それは違う。それこそ違う。間違ってる。
「俺はそんなこと望んでない」
突き放すような言葉に嵐は言葉をなくし、俺の腕の中でわかり易く蒼白とした。
けど違うよ。最後まで聞いて。
「一時の感情に流されて、人生を選択する必要は無い。ちゃんと考えた方がいいって言ってるんだ」
「ちゃんと考えた!」
だが間髪入れずに言われた。
「俺には夢なんてなくて、やりたいことも、夢中になれることもなくて、……大学に行けるような頭もなくて……、けど高校卒業したらイヤでもなんかしなきゃいけなくて……」
将来への不安。
嵐にとって将来は "期待" じゃなくて "不安" なんだ。この年で、不安……なのか。
それはきっと自信が無いからだな。自分の取り得も特技も、何も無いと思ってしまっている。
「それでも兄ちゃんのためになるなら、この先頑張っていける気がしたんだよ。何でもいいんだ。パティシエになれるならそれがいいだろうけど、例えば経済学だったりマーケティングだったり、デザインのさ、仕事とかでもいいかなって思ってる。お店のポスターとか業者通すと高いだろ? あとはほら。ネット販売とか、ホームページ作れるような技術とかを学んでもいいかな……って」
嵐の言葉は思ってるよりずっと現実的だった。俺の後を追うようにパティシエになるなんて単純なものではなくて、店を持とうとしている俺のサポートに回るような職業。
すごく嬉しかった。すごく感動した。
けど自信の無い嵐は一生懸命説明してくれるその声を震わせていて、それがもう……とんでもなく愛おしくて、気付けばもう一度嵐を抱きしめていた。
例えばもしも俺と別れる時が来ても、手に職を付けておくというのは絶対的な強みだ。
「嵐……っ、ありがとう」
この先、二人三脚で店をやって行けるのなら俺とてそれに越したことはない。でもこれじゃ俺より遥かに若い嵐を縛り付けるような気がする。でも、もしもこいつの将来に俺という人間が役に立つのなら、いくらでも踏み台にしたらいいとも思う。
「辞めたくなればさっさと辞めればいい。俺のやりたいことにお前を道連れにするつもりは無いから。だから……やりたいことが見つかるまで、俺の店で働いてくれるか?」
大きく見開かれた嵐の瞳に微笑み、俺はコイツのためにも絶対に店を成功させなきゃいけないと誓った。もちろん嵐が居なくてもそのプレッシャーはあるんだけど。
「ほんとに……?」
驚いた嵐に俺は頷き、いつか必ず頼もしくなるだろうこいつに思いを馳せた。
僅かな静寂の合間、どん……っと遠くで花火の上がる音がして、俺達はベランダへ向かった。
色とりどりの花火が綺麗に見えて、俺達の選択を……俺達の将来を、まるで祝ってくれてるみたいだった。
「頼りにしてるよ……嵐」
背の高い嵐の頬へキスをする。
背伸びした俺のつま先は、この先もずっとずっと嵐に恋をするんだろう。
呼びかけられハッとした。
俺は十年後の未来になんの希望も期待も持てない。嵐と十年後も一緒にいるなんて……ごめん、想像できない。あまりに世代が違いすぎるから現実味がないというか。
「俺、兄ちゃんとずっと一緒に居たい。頭悪いけど、兄ちゃんの役に立てるなら進学しようと思うし、お菓子のことももっと勉強したい」
それは違う。それこそ違う。間違ってる。
「俺はそんなこと望んでない」
突き放すような言葉に嵐は言葉をなくし、俺の腕の中でわかり易く蒼白とした。
けど違うよ。最後まで聞いて。
「一時の感情に流されて、人生を選択する必要は無い。ちゃんと考えた方がいいって言ってるんだ」
「ちゃんと考えた!」
だが間髪入れずに言われた。
「俺には夢なんてなくて、やりたいことも、夢中になれることもなくて、……大学に行けるような頭もなくて……、けど高校卒業したらイヤでもなんかしなきゃいけなくて……」
将来への不安。
嵐にとって将来は "期待" じゃなくて "不安" なんだ。この年で、不安……なのか。
それはきっと自信が無いからだな。自分の取り得も特技も、何も無いと思ってしまっている。
「それでも兄ちゃんのためになるなら、この先頑張っていける気がしたんだよ。何でもいいんだ。パティシエになれるならそれがいいだろうけど、例えば経済学だったりマーケティングだったり、デザインのさ、仕事とかでもいいかなって思ってる。お店のポスターとか業者通すと高いだろ? あとはほら。ネット販売とか、ホームページ作れるような技術とかを学んでもいいかな……って」
嵐の言葉は思ってるよりずっと現実的だった。俺の後を追うようにパティシエになるなんて単純なものではなくて、店を持とうとしている俺のサポートに回るような職業。
すごく嬉しかった。すごく感動した。
けど自信の無い嵐は一生懸命説明してくれるその声を震わせていて、それがもう……とんでもなく愛おしくて、気付けばもう一度嵐を抱きしめていた。
例えばもしも俺と別れる時が来ても、手に職を付けておくというのは絶対的な強みだ。
「嵐……っ、ありがとう」
この先、二人三脚で店をやって行けるのなら俺とてそれに越したことはない。でもこれじゃ俺より遥かに若い嵐を縛り付けるような気がする。でも、もしもこいつの将来に俺という人間が役に立つのなら、いくらでも踏み台にしたらいいとも思う。
「辞めたくなればさっさと辞めればいい。俺のやりたいことにお前を道連れにするつもりは無いから。だから……やりたいことが見つかるまで、俺の店で働いてくれるか?」
大きく見開かれた嵐の瞳に微笑み、俺はコイツのためにも絶対に店を成功させなきゃいけないと誓った。もちろん嵐が居なくてもそのプレッシャーはあるんだけど。
「ほんとに……?」
驚いた嵐に俺は頷き、いつか必ず頼もしくなるだろうこいつに思いを馳せた。
僅かな静寂の合間、どん……っと遠くで花火の上がる音がして、俺達はベランダへ向かった。
色とりどりの花火が綺麗に見えて、俺達の選択を……俺達の将来を、まるで祝ってくれてるみたいだった。
「頼りにしてるよ……嵐」
背の高い嵐の頬へキスをする。
背伸びした俺のつま先は、この先もずっとずっと嵐に恋をするんだろう。
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