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【結】 俺たちの答え
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夏の暑い日──。
思い出を塗り替えてくれと差し出したスプーンを思い出す。
銀色のスプーンの奥から俺を見る嵐の瞳。何を考えてるのかよく分からないポーカーフェイスだけど、あの時スプーンではなく手を取られてキスされたこと……、一気に思い出した。
嵐……。
こんなことを言われて、ようやく嵐の優しさに涙が込み上がる。
嫉妬してないはずが無いんだ。けどそれ以上に嵐は俺のことしか考えてない。自分を犠牲にしてでも俺のことを優先させる。
嵐……。嵐……!
俺はクラッシュゼリーのボールを作業台に置くと、そっと嵐を抱きしめた。
「無理しなくていいんだ、嵐。俺は嵐に充分思い出を塗り替えてもらってる」
嵐を安心させてやりたくて言ったのに、嵐は俺よりずっと大人で俺よりずっとずっと優しかった。
「そうだとしても、今無理してるのは俺じゃなくて兄ちゃんだよ。俺は兄ちゃんの過去も全部ひっくるめて愛してる。だから無理して作らないなんて言わなくていいし、兄ちゃんがいつかちゃんとあの男を過去だと思えた時、またコレを作ればいいと思う」
寺島が、嵐を「いい男」だと言った。本当に…、本当にそうだと思う。
「俺はどんな兄ちゃんでも……愛してるよ。だから安心して」
……これは無償の愛だ。見返りなど求めない無償の愛。それを、俺なんかが貰っていいのか?
「嵐……」
「ありがとう」
優しい瞳で礼を言われた。礼を言いたいのは、俺の方なのに。
意味が分からなくて首をかしげると、嵐は眉を下げて苦笑いをこぼした。
「高校生の俺なんかを選んでくれて、本当にありがとう。正直……勝算ないと思ってたから」
やっぱり……臆病者。俺と同じ……。お前よくそんなで、寺島のこと殴れたな。すげぇよ……。どこまで、……どこまで俺のこと好きなんだよ……っ。
「バカ……。俺だって嵐のこと……愛してる」
そっと踵をあげ、愛しくて優しい嵐に口付けた。
ピントも合わないくらいの距離。
嵐はこつんと額を合わせてくると、踵を上げる俺を抱き上げて作業台へと座らせた。
「うん、そうみたいだね……。安心した」
そう言って優しく笑うと、またキスをして、きつくきつく抱きしめられた。
「でも…、嬉しかったから。名前……、俺の名前を呼んでくれて、ありがとう……!」
いろんな感情が全部喜んでいるみたいな、おかしな感覚がした。
でも、なんか分かった……。
嵐はポーカーフェイスで言葉数は少ないけど、めちゃくちゃ素直だ。寺島とはまた違った素直さ。
勝算はないと思ったとか、安心したとか、名前を呼んでくれてありがとう……なんて。全然背伸びしようとしてない。俺のせいでいっぱい無理させてると思ってた。実際無理してる時だってあると思う。でもなんか……、俺が素直になったら、嵐もきっと背伸びをしない気がする。
「いくらでも呼ぶよ……」
やっぱり俺たちに理性や背伸びは必要ないんだ。必要なのは素直な心と、無償の愛だけ。
この名前を呼び続けていられることを、俺は永遠に望むよ。
「嵐」
ー 完 ー
思い出を塗り替えてくれと差し出したスプーンを思い出す。
銀色のスプーンの奥から俺を見る嵐の瞳。何を考えてるのかよく分からないポーカーフェイスだけど、あの時スプーンではなく手を取られてキスされたこと……、一気に思い出した。
嵐……。
こんなことを言われて、ようやく嵐の優しさに涙が込み上がる。
嫉妬してないはずが無いんだ。けどそれ以上に嵐は俺のことしか考えてない。自分を犠牲にしてでも俺のことを優先させる。
嵐……。嵐……!
俺はクラッシュゼリーのボールを作業台に置くと、そっと嵐を抱きしめた。
「無理しなくていいんだ、嵐。俺は嵐に充分思い出を塗り替えてもらってる」
嵐を安心させてやりたくて言ったのに、嵐は俺よりずっと大人で俺よりずっとずっと優しかった。
「そうだとしても、今無理してるのは俺じゃなくて兄ちゃんだよ。俺は兄ちゃんの過去も全部ひっくるめて愛してる。だから無理して作らないなんて言わなくていいし、兄ちゃんがいつかちゃんとあの男を過去だと思えた時、またコレを作ればいいと思う」
寺島が、嵐を「いい男」だと言った。本当に…、本当にそうだと思う。
「俺はどんな兄ちゃんでも……愛してるよ。だから安心して」
……これは無償の愛だ。見返りなど求めない無償の愛。それを、俺なんかが貰っていいのか?
「嵐……」
「ありがとう」
優しい瞳で礼を言われた。礼を言いたいのは、俺の方なのに。
意味が分からなくて首をかしげると、嵐は眉を下げて苦笑いをこぼした。
「高校生の俺なんかを選んでくれて、本当にありがとう。正直……勝算ないと思ってたから」
やっぱり……臆病者。俺と同じ……。お前よくそんなで、寺島のこと殴れたな。すげぇよ……。どこまで、……どこまで俺のこと好きなんだよ……っ。
「バカ……。俺だって嵐のこと……愛してる」
そっと踵をあげ、愛しくて優しい嵐に口付けた。
ピントも合わないくらいの距離。
嵐はこつんと額を合わせてくると、踵を上げる俺を抱き上げて作業台へと座らせた。
「うん、そうみたいだね……。安心した」
そう言って優しく笑うと、またキスをして、きつくきつく抱きしめられた。
「でも…、嬉しかったから。名前……、俺の名前を呼んでくれて、ありがとう……!」
いろんな感情が全部喜んでいるみたいな、おかしな感覚がした。
でも、なんか分かった……。
嵐はポーカーフェイスで言葉数は少ないけど、めちゃくちゃ素直だ。寺島とはまた違った素直さ。
勝算はないと思ったとか、安心したとか、名前を呼んでくれてありがとう……なんて。全然背伸びしようとしてない。俺のせいでいっぱい無理させてると思ってた。実際無理してる時だってあると思う。でもなんか……、俺が素直になったら、嵐もきっと背伸びをしない気がする。
「いくらでも呼ぶよ……」
やっぱり俺たちに理性や背伸びは必要ないんだ。必要なのは素直な心と、無償の愛だけ。
この名前を呼び続けていられることを、俺は永遠に望むよ。
「嵐」
ー 完 ー
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