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エッグバトル、予選開始!
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雪村の隣に座る太一。
ひな壇後方にいるMonday Monsterは、これから一番乗りで曲を披露するBLACK CATの話を大人しく聞いていた。しかし、ふと雪村が太一を見てからその視線を足元に落とす。そして驚くほど柔らかく、ふわりと笑った。
その笑顔にドキっとしたのは、野瀬だけではない。絶えず太一を見つめていた美月も、陽一も、そしてたまたまかもしれないが、中原もそれを目撃していた。
二人の前に座っている猫居の頭で、視聴者にはしっかりと見えないが、太一はこの時、雪村の手を強く握っていた。
(手を繋いでいる?)
それぞれが心の中にその疑念を抱く。
その直後、雪村が太一にそっと耳打ちをして……ムニっと頬をつまんだ。
(公開イチャイチャか!)
野瀬は完全に打ちのめされ、この三時間、一秒だって見逃すまいと思っていた矢先、早々にソファを立ち上がった。
「カフェオレ……でもいれようかな。みんな、飲む?」
飲むとの返事を貰い、野瀬は心を落ち着かせるためにキッチンに立った。まさかBLACK CATの後ろでこんなに分かりやすくイチャつかれるとは思ってもいなかった。
もうすぐ三月になる。地獄の受験も終わり、学校に行く必要もなく、無事に志望校に合格していた野瀬は、残すところ卒業式を待つのみになっていた。
つまり、極度の太一不足だったのだ。それなのにこの仕打ち。
ただでさえ、卒業してしまったらもうなかなか会えなくなって、常に酸欠のような状態になるというのに。
(……けど、失恋して終わる方が諦めつくかな)
ケトルに水を入れながら、野瀬は自分の気持ちにケジメを付けなきゃならない時が近いんだと感じた。
告白して、玉砕して、終わり。
そしたら卒業と共にこの恋も終わる。全部リセットして、新生活を迎えられる。
だけど、この気持ちを太一に伝える必要があるのかどうかも、野瀬にはよく分からなかった。
雪村と付き合っている疑念はやはり消えない。玉砕することが分かっていて告白してしまえば、そこで野瀬と太一の友情も壊れてしまう。これからどんどんテレビで活躍するだろう太一は、他の友達とは全然別物だ。高校は違えども、会おうと思えばいつでも会える他の友達とは違う。太一とは高校も違えば生きていく世界だって違うのだ。
玉砕して終わって、それで本当に自分はスッキリするのだろうか。優しい太一をすごく困らせることにもなるだろう。
告白なんかしない方がいい。
そんなことを考える。けど、この卒業のタイミングを逃せば、太一への気持ちがきっと一方的に膨れ上がって、苦しい思いをするのは目に見えている。それならやはり玉砕しておいた方が諦めやすい。
考えはこうして堂々巡り。
これはただ告白する決心が付けられないだけなのかもしれない。でももしも、太一が雪村と付き合っているのなら、同性愛に理解があるということ。自分が告白することで、友情まで壊れることはないのかもしれない。でも、そればかりはどちらに転ぶかなんて分からないし、玉砕後、自分はどうしたいのかも、まだよく分かっていなかった。友達でいたいのか、すっぱり忘れてしまいたいのか……。
卒業式まであと二週間と少し。
野瀬はミルクを温めながら、どうするべきか、自分はどうしたいのか、卒業式までじっくり考えようと改めて考え直したのであった。
ひな壇後方にいるMonday Monsterは、これから一番乗りで曲を披露するBLACK CATの話を大人しく聞いていた。しかし、ふと雪村が太一を見てからその視線を足元に落とす。そして驚くほど柔らかく、ふわりと笑った。
その笑顔にドキっとしたのは、野瀬だけではない。絶えず太一を見つめていた美月も、陽一も、そしてたまたまかもしれないが、中原もそれを目撃していた。
二人の前に座っている猫居の頭で、視聴者にはしっかりと見えないが、太一はこの時、雪村の手を強く握っていた。
(手を繋いでいる?)
それぞれが心の中にその疑念を抱く。
その直後、雪村が太一にそっと耳打ちをして……ムニっと頬をつまんだ。
(公開イチャイチャか!)
野瀬は完全に打ちのめされ、この三時間、一秒だって見逃すまいと思っていた矢先、早々にソファを立ち上がった。
「カフェオレ……でもいれようかな。みんな、飲む?」
飲むとの返事を貰い、野瀬は心を落ち着かせるためにキッチンに立った。まさかBLACK CATの後ろでこんなに分かりやすくイチャつかれるとは思ってもいなかった。
もうすぐ三月になる。地獄の受験も終わり、学校に行く必要もなく、無事に志望校に合格していた野瀬は、残すところ卒業式を待つのみになっていた。
つまり、極度の太一不足だったのだ。それなのにこの仕打ち。
ただでさえ、卒業してしまったらもうなかなか会えなくなって、常に酸欠のような状態になるというのに。
(……けど、失恋して終わる方が諦めつくかな)
ケトルに水を入れながら、野瀬は自分の気持ちにケジメを付けなきゃならない時が近いんだと感じた。
告白して、玉砕して、終わり。
そしたら卒業と共にこの恋も終わる。全部リセットして、新生活を迎えられる。
だけど、この気持ちを太一に伝える必要があるのかどうかも、野瀬にはよく分からなかった。
雪村と付き合っている疑念はやはり消えない。玉砕することが分かっていて告白してしまえば、そこで野瀬と太一の友情も壊れてしまう。これからどんどんテレビで活躍するだろう太一は、他の友達とは全然別物だ。高校は違えども、会おうと思えばいつでも会える他の友達とは違う。太一とは高校も違えば生きていく世界だって違うのだ。
玉砕して終わって、それで本当に自分はスッキリするのだろうか。優しい太一をすごく困らせることにもなるだろう。
告白なんかしない方がいい。
そんなことを考える。けど、この卒業のタイミングを逃せば、太一への気持ちがきっと一方的に膨れ上がって、苦しい思いをするのは目に見えている。それならやはり玉砕しておいた方が諦めやすい。
考えはこうして堂々巡り。
これはただ告白する決心が付けられないだけなのかもしれない。でももしも、太一が雪村と付き合っているのなら、同性愛に理解があるということ。自分が告白することで、友情まで壊れることはないのかもしれない。でも、そればかりはどちらに転ぶかなんて分からないし、玉砕後、自分はどうしたいのかも、まだよく分かっていなかった。友達でいたいのか、すっぱり忘れてしまいたいのか……。
卒業式まであと二週間と少し。
野瀬はミルクを温めながら、どうするべきか、自分はどうしたいのか、卒業式までじっくり考えようと改めて考え直したのであった。
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