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第1章~捕らわれた少女と召喚術師~
第4話:恐怖の瞳と脱出
しおりを挟む「あの一旦、それ下ろしてくれませんか? 話し合いましょう?」
空亡は努めて平静に言うが、警備員は前に一歩踏み出した。
「話し合いも何もない! お前たちは侵入者である! 即刻手を止めて、床に伏せろ!」
「ですよね! やっぱ無理です、どうすれば?!」
警備員の言っていることは至極真っ当である。
何も言い返せず空亡は焦るが、男は集中しているのか返事はない。 あと頼れるとしたら召喚したモンスターとなるが、そうなれば本格的に敵対と捉えられ戦闘になりかねない。
たとえ自らの手でなくとも空亡は人を傷つけることには強い抵抗があった。
「手足をバラバラにしてみたり」
唐突な男の呟きを空亡は理解できなかった。
「へ?」
「心臓を抉ってみたり、別の生き物を移植してみたり、熱を与えてみたり――
――捕まれば彼らは平気でそう言うことをするよ」
もう誰のことを言っているかは明白だ。
しかし日本でそんなことが行われる、なんてこと空亡には想像もできない。
だけどもしも、
「そんなバカなこと」
「ある。 心が麻痺した研究者なんてよくある話だよ。 君しかいないんだ。 その暗い未来を回避するためには……子供に頼るなんて大人として不甲斐ないが、君が守れ」
「3、2、」
警備員のカウントダウンが終わる寸前、空亡はイデアを見た。
もしもそんなことが起こり得るのだとしたら、
(そんなことさせない。 僕が守る……守るんだ)
誰かを傷つける覚悟。
倫理に反する覚悟。
化け物が本当に化け物になる覚悟。
ようやく空亡の覚悟が決まった瞬間だった。
「1」
「来い」
四つの召喚陣が現れ、そこからいつものメンバーが現れた。
しかしいつもと雰囲気が明らかに違う。
それらはまさに人間に害を成すモンスターであった。
「0……何してる! 早く拘束しろ!」
警備員たちはそこから動けなかった。
顎が勝手にカチカチと鳴り、体が震える。
「む、無理です」
「何をしている?!」
「勝てるわけない……っ」
それは恐怖だった。
空亡はまだ体も出来上がっていない子供だ。 しかし彼から溢れる魔力の圧力が、モンスターあちの覇気が警備員たちの心を折ったのだ。
警備員たちには空亡が得体の知れない化け物に見えていた。
そこに留まっていられたのは、僅かに残された職務への責任感のためである。
「見逃してくれませんか?」
空亡は優しい笑みを浮かべて言った。
「僕はあなたたちを殺したくない」
〇
「よし、完了だ」
優しい警備員たちは空亡の願いを聞き届け、すでにいなくなっている。
男がスイッチを押すと水槽の水がみるみる無くなっていき、空亡たちはついにイデアの本体を救出した。
「じゃあさっさとトンズラしようか」
男についていく形で空亡は建物の中を進む。 ちなみにイデアの本体ははシェイプスターが抱えて走っている。
「出口だ! 僕の車が止めてあるから駐車場へ向かう!」
「分かりました!」
「おそらくこのまますんなりと逃げれるとは思えない……何かあったら戦闘は頼んだ!」
男は戦闘力においてはからきしなようだ。
空亡を頼ってくれるのは空亡を子供と侮っていないと思うべきか、それとも単にロクデナシなのか。
「そこの車に乗り込んで!」
やたらゴツイ車に乗り込むと、エンジンをかけながら男が笑った。
「ほら、門の前にワラワラ集まってるよ」
「どうするんですか?」
「僕がなんでこんなごっつくて乗りずらい車を使ってるか分かるかい?」
「あ、安全運転でお願いします!」
「善処するよ」
そう言いつつも足はペダルを深く踏んだ。
「さあ、そこを開けてもらうか」
目の前にはシールドでバリケードを作った警備員が何十人と行く先を塞いでいた。
「前!」
「大丈夫――跳ねろっ!」
男が叫ぶとバリケード前の地面が薄く光った。
そこには幾何学模様が描かれていて――
――ドン、と下から突き上げるような衝撃に空亡は一瞬目を閉じた。
そして目を開いたその時、空亡たちは空を飛んでいた。
空亡は時間がゆっくりと流れるような感覚に陥った。
下でまぬけな顔でこちらを見上げる警備員たちの表情がやたらはっきり見える。
「YEAHOOOOOOOOOOO」
着地の衝撃でグロッキーな空亡と対照的に、男はやたらテンションが高く声を上げていた。
「こういうの一度やってみたかったんだよね!」
「カラナ見て! 星!」
そして窓の外を指差してはしゃぐイデアに空亡は返事を返す余裕もなく引きつった笑みを浮かべることしかできなかった。
「おうぇ」
「こらこら、ここで吐くなー! ビニール探せ!」
「ねえ、星!」
「シェイプスターなんとかしてくれ!!」
「もらった魔力分はもう働いたぜ……」
車内はカオスの状態のまま、空亡とイデアは次の場所へと向かうのだった。
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