怠惰な召喚術師は最強を飼っている~ファンタジー化した現代で膨大な魔力と召喚スキルを与えられた少年の生きる道~

すー

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第1章~捕らわれた少女と召喚術師~

第14話:無力な子供と救援

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「木霊っ! 木霊っ!」

 玉藻が大木から強引に木霊を引きはがそうとしている。

「木が絡まって離れないっ……空亡くん、手伝って!」

 焦ったようにそう言う玉藻も取り込もうとしているのか、大木から伸びた枝が彼女を取り囲む。

「無理だよ! 一度離れて!」
「やだ! 絶対助けるんだ!」

 枝が玉藻に触れると、彼女は力が抜けたように座り込んだ。

「あれ……力入らない? どうして……?!」

 視認できるほど大量の魔力が玉藻から大木へと流れていく。

 そして空亡の方にも枝は伸びてきている。

 事態は悪い方へと進む。
 好転の兆しは見えない。

 あの塊は、この不思議なダンジョンのような空間は、魔力を吸収する大木は、何なのか、どうしたらこの問題を解決できるのか。
 空亡はどうしたらいいのか分からなかった。 今までは召喚モンスターたちが、万が。イデアが答えを教えてくれた。

 けれど今は誰もいない。

 空亡自身が考え、決断しなければ、取り返しのつかないことになる予感だけは強く感じていた。

 しかしどうしたらいいのか。
 そもそも召喚術のない空亡に出来ることはあるのか。

「分からない……だけど見捨てるなんて選択肢だけは絶対にない」

 今の空亡にあるもの、それは無尽蔵の魔力だけだ。

「そんなに腹が減ってるなら! 僕の魔力を食べろ! その代わりそいつらは放してやってくれ!」

 空亡が枝を自ら掴み、そう叫ぶと大木が動きを止めた。

『いいだろう』

 そしてどこからか声がしたかと思うと、空亡に向かって雨のように枝が降り注いだ。





「ここは……?」

『ここはダンジョンコアの表層である大木の中……奥にあるコアに魔力を注げ』

 空亡の疑問に答える声の主は誰なのか、そんなことより倒れ伏す二人の安否確認が先だ。

 しかし体を揺らしても二人はピクリともしない。

『死んではいない。 魔力枯渇によって気を失っているだけだ。 こいつらはもう不要だ――


――さあ、助けたいのならばその手をコアに』
「……分かってる」

 空亡が魔力を注ぎ始めると、獲物を捕らえる鎖のように枝が体に巻き付いた。

 そして二人は地面にずぶずぶと呑み込まれて、消えた。

「ちゃんと外に出したんだろうな……?」

 不安な消え方だったが、返事はなく空亡は彼女らの無事を願うしかない。

 そして強烈な睡魔に襲われた空亡は、魔力を吸い込まれる脱力感も相まって抗うことができずに瞼を閉じるのであった。


***


「あれ、ここは……外? 木霊!」

 鳥羽玉藻は廃神社の境内で目を覚ました。

「ん……玉藻ちゃん?」
「うん、うん! 良かった……良かったよぉ」
「どうしたの……?」

 泣きじゃくる玉藻の頭を撫でながら、木霊は周囲を見回して首をかしげた。

「あれ、山本くんは?」
「え……? 空亡くん? 空亡くん!」

 空亡はどこにも見当たらない。

 目の前には虹色の光を放つ不思議な塊が、徐々に輝きを強めていた。

ーー空亡は取り残された。

「助けを呼ばなきゃ」

 助けに行きたくても、玉藻自身の力では助けられないことは分かっている。

 誰かに話したら怒られるとか、信じてもらえるかとか、四の五の言っている場合ではない。

 そして幸いこういう未知に詳しい大人が一人いる。

『はい、言葉万です』
「マンおじさん! 助けて!」


***


――空亡くん!

 呼び声に空亡が目を覚ますと、必死な玉藻と、何がなんだか分からず呆然とする木霊が見えた。

「ん……ああ、良かった」

 空亡は自分がダンジョンと融合しつつあることを感覚的に理解していた。

 この視点も空亡のものではなくダンジョンのものなのだろう。
 まるでカメラを切り替えるように、ダンジョンの様々な場所に視点を変えることができた。

「僕はこれからどうなるんだろ……?」
『死ぬまで苗床になってもらう』
「お前はなんなんだ」
『私はダンジョン妖精――人にはダンジョンマスターなどと呼ばれることもある』
「そっか……なんだかすごく眠いよ」
『ならばゆっくり眠ると良い――永遠に』

 空亡は再び強烈な眠気によって、意識が遠くなっていく。

――僕、死んじゃうんだ

(イデアともっと色々なことをしたかった)

(色んなところに行きたかった)

(せっかく冒険者になるという夢を見つけて、玉藻という仲間も出来たのに、始まる前から終わるのか)

(結局親にも会えていない)

(言葉さんにちゃんと感謝を伝えておけばよかった)

(シェイプスター、サキュバス、ククルカン、スライム、アモン……)

(彼らは僕が居なくなってどう思うのか)

(なんとも思わないのか)

(それとも少しは悲しんでくれるだろうか)

 走馬灯のように色々な想いが湧き上がってきたが、その全てが眠気に押し流されていく。

(少し休んだら、また考えたらいいよね)

 空亡は心の中で独り言ちると、意識を完全に手放したのだった。


***


「はは、これはマズいねぇ」

 玉藻の拙い説明を聞いて駆け付けた言葉万は、現場に着き虹色の光を放つソレを確認して呟いた。

「お願い空亡を助けて!」
「お願いします!!」

 涙で顔をぐしゃぐしゃにした玉藻と木霊に縋りつかれて、困ったように笑って万は「どうにかなりそう?」と共に駆けつけたイデアに尋ねた。

「うん、助けるよ」
「おっけい。 作戦は?」
「空亡は今、ダンジョンと一つになりかけている。 だからダンジョンだけを封じる」

 イデア曰く、封じること自体は難しくないが苗床となっている空亡に何の影響もなく行うとなると、難度は飛躍的に上がるらしい。 下手をすれば扱いを誤まれば空亡の意識、記憶、魔力、スキルの何かが失われかねないとのことだった。

「まあ大丈夫でしょ、神だし」
「……行こう」

 万の軽口に答えることなく、イデアは虹色の塊へと手を伸ばすのであった。


***

 

 

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