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第1章~捕らわれた少女と召喚術師~
第15話:忘れても、いつかきっと
しおりを挟む「空亡見つけた」
イデアと万が空亡へいつになく真剣な表情を向けている。
なんだか可笑しくなって笑おうとしたが、それよりも体内に入ってきた侵入者を排除しなければならい。
(侵入者って誰のことだ? まさか)
――殺せ
――殺せ
――殺せ
(いや、この人たちはあああでもこいつらはダンジョンを壊そうとしてあああ違う違う)
「来……るな」
「大丈夫、必ず助けるから」
空亡は攻撃衝動を抑えるので精一杯だ。 守るべき対象であるイデアを攻撃することだけは絶対に空亡はしたくなかった。
万とイデアが助けに来てくれたことは心底嬉しかった。 しかし空亡にとって大事な彼らを傷つけるくらいならば死んだ方がマシなのだ。
(頼むよ……お願いだから――)
「あなたは私を助けてくれた。 今度は私の番……私はあなたに守られるだけの存在じゃない。 私と空亡は友達だから助け合うの」
「もしも全てを忘れても」
「私はあなたと共にある」
「いつか思い出して」
「私はいつだってあなたを助けたい」
「私はいつかあなたと星の河を見たい」
「私はいつだってあなたの側にいるから」
誰か――イデアの手が体に触れて、温かい何かが流れ込んでくる感覚を最後に空亡は意識を失ったのであった。
〇
――君は誰だ?
空亡は少女の手を引いていた。
その少女の顔は靄に隠されていてよく見えない。
――君たちは誰だ?
教室で空亡は少女と少年、二人と笑い合う。
顔は見えない。
「私と一緒に○○に行こう!」
少女のセリフの大事な部分が抜け落ちたように聞こえない。
大事なことだったような気がするのに、空亡はどうしても思い出せなかった。
三人は空亡に何か言って、背を向けて遠ざかっていく。
空亡は置いていかれたくなくて、手を伸ばした。
しかしその手は誰にも届かない。
――行かないで
――独りにしないで
――――――
――――
――
「夢……?」
目から溢れる生暖かさに、空亡の意識は覚醒した。
「ここは」
真っ白な部屋、いくつかのベッドの並べられ開けられた窓際でカーテンが揺れている。
「ここは病院だよ」
白衣の男性が丁度部屋に入ってきて、優しく微笑んだ。
「君は一ヶ月もの間眠っていたんだ。 目を覚まして良かった」
「そんなに……一体何がーー」
何があったのか思い出そうとしても思い出せず、頭痛を感じて空亡は頭を押さえた。
「落ち着いて。 少し話そうか」
それから医師にいくつかのことを確認された。
何人もの知らない名前を上げられ、覚えているか。
魔力値を図ったり、スキルを使ってみたり、色々試した結果、医師は眉を寄せて言った。
「うん、記憶障害が起きているけれど、魔力やスキルに可笑しなところはない。 少なくとも体に問題はなさそうだ」
「記憶障害ですか……」
「そう、君は約一ヶ月ほどの記憶を断片的に失っているみたいだね」
施設にいたことは覚えている。 そこを脱出しようとしたことも、そして田舎町で過ごしたことは分かる。
しかし具体的なエピソード、その時感じた想い、そして関わった人たちの顔が、名前がどうしても思い出せなかった。
「空亡」
頭を悩ませていると懐かしい声で、名前を呼ばれて空亡は跳ねるように顔を上げた。
「父さん……?」
「久しぶりだな」
「母さん……?」
「大きくなったね。 元気そうで本当に良かった」
約四年ぶりに会った両親は、少し白髪が増えて、しわが増えたように見えた。 しかし元気そうな様子に空亡は安堵すると共に、脳内では走馬灯のように幼少期の思い出が駆け巡っていた。
当然込み上げてくるものがあるわけで、空亡は目に涙を溜め、両親に飛びつこうとした――その時、後ろから見知らぬ小さな男の子がひょっこり顔を出した。
「お母さん、この人だれ?」
その男の子は空亡の母に近寄り、袖を引いて首を傾げた。
「彼は山本空亡……あなたのお兄ちゃんよ」
「ふーん?」
「仲良くするんだぞ? さあ空亡、家に帰ろう」
三人が並んでいる姿は家族だった。
空亡はかすかな胸の痛みに気づかない振りをして、笑顔を作ったのだった。
――家は引っ越したんだ、一軒家だぞ?
――空亡の部屋を作らないとな!
――これからは家族四人一緒だからな!
新しい家、新しい家族の形、新しい生活――求めていたものが手に入ったというのに、空亡はなぜか心から喜ぶことができないでいた。
「ここが僕の部屋か」
物置となっていた部屋は、すぐにベッドが机が入れられ空亡の部屋へとなった。
それから空亡の新しい生活が始まった。
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