怠惰な召喚術師は最強を飼っている~ファンタジー化した現代で膨大な魔力と召喚スキルを与えられた少年の生きる道~

すー

文字の大きさ
15 / 29
第1章~捕らわれた少女と召喚術師~

第15話:忘れても、いつかきっと

しおりを挟む




「空亡見つけた」

 イデアと万が空亡へいつになく真剣な表情を向けている。

 なんだか可笑しくなって笑おうとしたが、それよりも体内に入ってきた侵入者を排除しなければならい。

(侵入者って誰のことだ? まさか)

――殺せ

――殺せ

――殺せ

(いや、この人たちはあああでもこいつらはダンジョンを壊そうとしてあああ違う違う)

「来……るな」
「大丈夫、必ず助けるから」

 空亡は攻撃衝動を抑えるので精一杯だ。 守るべき対象であるイデアを攻撃することだけは絶対に空亡はしたくなかった。

 万とイデアが助けに来てくれたことは心底嬉しかった。 しかし空亡にとって大事な彼らを傷つけるくらいならば死んだ方がマシなのだ。

(頼むよ……お願いだから――)

「あなたは私を助けてくれた。 今度は私の番……私はあなたに守られるだけの存在じゃない。 私と空亡は友達だから助け合うの」

「もしも全てを忘れても」

「私はあなたと共にある」

「いつか思い出して」

「私はいつだってあなたを助けたい」

「私はいつかあなたと星の河を見たい」

「私はいつだってあなたの側にいるから」

 誰か――イデアの手が体に触れて、温かい何かが流れ込んでくる感覚を最後に空亡は意識を失ったのであった。





――君は誰だ?

 空亡は少女の手を引いていた。

 その少女の顔は靄に隠されていてよく見えない。

――君たちは誰だ?

 教室で空亡は少女と少年、二人と笑い合う。

 顔は見えない。

「私と一緒に○○に行こう!」

 少女のセリフの大事な部分が抜け落ちたように聞こえない。

 大事なことだったような気がするのに、空亡はどうしても思い出せなかった。

 三人は空亡に何か言って、背を向けて遠ざかっていく。

 空亡は置いていかれたくなくて、手を伸ばした。

 しかしその手は誰にも届かない。

――行かないで

――独りにしないで

――――――

――――

――


「夢……?」

 目から溢れる生暖かさに、空亡の意識は覚醒した。

「ここは」

 真っ白な部屋、いくつかのベッドの並べられ開けられた窓際でカーテンが揺れている。

「ここは病院だよ」

 白衣の男性が丁度部屋に入ってきて、優しく微笑んだ。

「君は一ヶ月もの間眠っていたんだ。 目を覚まして良かった」
「そんなに……一体何がーー」

 何があったのか思い出そうとしても思い出せず、頭痛を感じて空亡は頭を押さえた。

「落ち着いて。 少し話そうか」

 それから医師にいくつかのことを確認された。

 何人もの名前を上げられ、覚えているか。
 魔力値を図ったり、スキルを使ってみたり、色々試した結果、医師は眉を寄せて言った。

「うん、記憶障害が起きているけれど、魔力やスキルに可笑しなところはない。 少なくとも体に問題はなさそうだ」
「記憶障害ですか……」
「そう、君は約一ヶ月ほどの記憶を断片的に失っているみたいだね」

 施設にいたことは覚えている。 そこを脱出しようとしたことも、そして田舎町で過ごしたことは分かる。

 しかし具体的なエピソード、その時感じた想い、そして関わった人たちの顔が、名前がどうしても思い出せなかった。


「空亡」

 
 頭を悩ませていると懐かしい声で、名前を呼ばれて空亡は跳ねるように顔を上げた。

「父さん……?」
「久しぶりだな」
「母さん……?」
「大きくなったね。 元気そうで本当に良かった」

 約四年ぶりに会った両親は、少し白髪が増えて、しわが増えたように見えた。 しかし元気そうな様子に空亡は安堵すると共に、脳内では走馬灯のように幼少期の思い出が駆け巡っていた。

 当然込み上げてくるものがあるわけで、空亡は目に涙を溜め、両親に飛びつこうとした――その時、後ろから見知らぬ小さな男の子がひょっこり顔を出した。

「お母さん、この人だれ?」

 その男の子は空亡の母に近寄り、袖を引いて首を傾げた。

「彼は山本空亡……あなたのお兄ちゃんよ」
「ふーん?」
「仲良くするんだぞ? さあ空亡、家に帰ろう」

 三人が並んでいる姿は家族だった。

 空亡はかすかな胸の痛みに気づかない振りをして、笑顔を作ったのだった。

――家は引っ越したんだ、一軒家だぞ?

――空亡の部屋を作らないとな!

――これからは家族四人一緒だからな!

 新しい家、新しい家族の形、新しい生活――求めていたものが手に入ったというのに、空亡はなぜか心から喜ぶことができないでいた。

「ここが僕の部屋か」

 物置となっていた部屋は、すぐにベッドが机が入れられ空亡の部屋へとなった。

 それから空亡の新しい生活が始まった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

俺の家に異世界ファンタジーガチャが来た結果→現実世界で最強に ~極大に増えていくスキルの数が膨大になったので現実世界で無双します~

仮実谷 望
ファンタジー
ガチャを廻したいからそんな理由で謎の異世界ガチャを買った主人公はガチャを廻して自分を鍛えて、最強に至る。現実世界で最強になった主人公は難事件やトラブルを解決する。敵の襲来から世界を守るたった一人の最強が誕生した。そしてガチャの真の仕組みに気付く主人公はさらに仲間と共に最強へと至る物語。ダンジョンに挑戦して仲間たちと共に最強へと至る道。 ガチャを廻しまくり次第に世界最強の人物になっていた。 ガチャ好きすぎて書いてしまった。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。 ※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。

Sランクパーティーを追放された鑑定士の俺、実は『神の眼』を持ってました〜最神神獣と最強になったので、今さら戻ってこいと言われてももう遅い〜

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティーで地味な【鑑定】スキルを使い、仲間を支えてきたカイン。しかしある日、リーダーの勇者から「お前はもういらない」と理不尽に追放されてしまう。 絶望の淵で流れ着いた辺境の街。そこで偶然発見した古代ダンジョンが、彼の運命を変える。絶体絶命の危機に陥ったその時、彼のスキルは万物を見通す【神の眼】へと覚醒。さらに、ダンジョンの奥で伝説のもふもふ神獣「フェン」と出会い、最強の相棒を得る。 一方、カインを失った元パーティーは鑑定ミスを連発し、崩壊の一途を辿っていた。「今さら戻ってこい」と懇願されても、もう遅い。 無能と蔑まれた鑑定士の、痛快な成り上がり冒険譚が今、始まる!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

処理中です...