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突然スタートさせられた異世界生活
敵
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心臓がどくん、と嫌な音を立てた。
私の他にも異世界から来た人がいるの?その人は…。
これだから人間って嫌になる。どこまで強欲なの。私だけじゃなく、他にも被害者がいるなんて!
こいつらは敵だ。
目の前の名前も分からない人を迂回して岸に上がる。そして武器を携えた人間五人相手に、少し腰を落としてファイティングポーズを取る。翼も少しだけ開いていつでも飛べるようにしておく。
ふわっと視界の白い物が移ったと思ったら、私の隣に誰か来た。ぎょっとして隣をみると、ボブヘアのブロンドに、真っ白な足首まであるメイド服とお揃いのヘッドドレス。肌も抜けるように白く、隣で一緒に人間に向かってファイティングポーズを取っている。
何となく思ったことを口にする。
「……シルキー?」
顔だけこちらに向けて微笑んでくれた。どうやら正解だったみたい。家事手伝い妖精って闘えるの?私より華奢に見えるけど。でもかなりの恥ずかしがり屋だって聞いたけど、味方してくれて嬉しい。
五人はこちらに向かって何か話しながら少しずつ近付いてきた。
が、聞く耳持たん!死あるのみ!
と思ったら少し焦げた服を着たツニートが走って着た。ツニートのサイズは2メートルほどに縮んでいた。
『こいつら、襲撃者。手引きした、魔族、いた。捕まえてきた』
走ってきたツニートは私達を背に庇い、前に出た。ツニートが出てきた事で人間達に緊張感が走り、武器に手を掛けた。ツニートは、血こそ出ていないものの服は所々焦げて破れている。攻撃されたことは誰にだって分かる。
私から全てを奪っただけじゃなくて、大切な人まで傷付けるなんて許さない。力強く羽ばたき空中から人間を見下ろす。怒りで翼にかつてないほど力が入る。
ザンッーーーーー!!!!
という衝撃音が下から聞こえた。人間は尻餅をつき、傷は浅いものの血を流しているようだ。何が起きたかいまいち分からない。
下に下りてみると、シルキーが私の頭を撫でグーサインを繰り返す。私がやったんだ…?
『かまいたち。ララ、出来る、思ってた。』
ツニートも誉めてくれる。
人間達は…。
「※※※※※!※※※※※※!!※※※※※※※※※※※※※!!」
怒っていらっしゃる。デスヨネー。
早すぎて何を言っているのかはもう分からない。もう一発お見舞いするか。
今度は空中からではなく地面からかまいたちを放つ。放ったら私も踏ん張りきれずに吹き飛んだ。ら、シルキーが受け止めてくれた。やだ、惚れそう…。
私が放ったかまいたちによって勇者?の一行はツニートに捕獲され、地下に閉じ込められましたとさ。
ていうか、何で抵抗しなかったんだ?武器持ってんのに。謎。
◇◇◇
あれから私は、やっと自分の足で少し歩ける位だったのに湖で長時間泳がされたお陰で全身筋肉痛になり起き上がれず、ベッドの住人になりました。予定だと今日か明日にアノーリオンさん達が戻って来るんだよね。早く戻ってきてくれないかな…。うとうとして一日過ごす。
そんなこんなで夜になりました。熱が出てきたのが自分で分かる。自分の吐く息が熱く感じ、節々が痛む。全身筋肉痛のせいだね。昨日人間達が言っていた事は、ラヴァルさんに聞かないと分からないけど、この先自分はどうしたら良いんだろう、とふと考えてしまった。絶対に日本に、家族の元に帰ると思っていたけれど。
もし万が一。異世界には一人しか帰れなかったら?もし帰れないとしたらその先は?
考えても分からない。でも考えずにはいられなかった。先が見えない事がこんなにも不安で泣きたくなるなんて知らなかった。日本にいた時は、漠然と高校を出たら大学か専門学校に進学してその内就職すると思っていた。そこに自分が希望する所に合格するかという不安はあるにしてもそれ以外は不安も疑問も無かった。
一人ベッドで泣いていると、シルキーが小さく部屋のドアをノックし、ベッドに近付いてきたと思ったら。
頭を撫で撫でされている。シルキーの手はひんやりしていて、気持ちいい。シルキーにそっと抱き締められ、涙がどんどん出てくる。今までもう涙は出ないくらい泣いたのに…。
シルキーは私が落ち着くまで抱き締めてくれていた。
ようやっと落ち着いた頃、何故シルキーが夜更けに部屋を訪れたのかと思ったら、熱冷ましの薬湯を持ってきてくれたらしい。さすがシルキーさん、熱が出るって分かったんだって。お母さんみたい。
この薬湯、くっっっそ苦い。でも効果は抜群らしい。水を大量に飲んだ後もう寝なさい、と促され、そのままストンと眠りに落ちた。
私の他にも異世界から来た人がいるの?その人は…。
これだから人間って嫌になる。どこまで強欲なの。私だけじゃなく、他にも被害者がいるなんて!
こいつらは敵だ。
目の前の名前も分からない人を迂回して岸に上がる。そして武器を携えた人間五人相手に、少し腰を落としてファイティングポーズを取る。翼も少しだけ開いていつでも飛べるようにしておく。
ふわっと視界の白い物が移ったと思ったら、私の隣に誰か来た。ぎょっとして隣をみると、ボブヘアのブロンドに、真っ白な足首まであるメイド服とお揃いのヘッドドレス。肌も抜けるように白く、隣で一緒に人間に向かってファイティングポーズを取っている。
何となく思ったことを口にする。
「……シルキー?」
顔だけこちらに向けて微笑んでくれた。どうやら正解だったみたい。家事手伝い妖精って闘えるの?私より華奢に見えるけど。でもかなりの恥ずかしがり屋だって聞いたけど、味方してくれて嬉しい。
五人はこちらに向かって何か話しながら少しずつ近付いてきた。
が、聞く耳持たん!死あるのみ!
と思ったら少し焦げた服を着たツニートが走って着た。ツニートのサイズは2メートルほどに縮んでいた。
『こいつら、襲撃者。手引きした、魔族、いた。捕まえてきた』
走ってきたツニートは私達を背に庇い、前に出た。ツニートが出てきた事で人間達に緊張感が走り、武器に手を掛けた。ツニートは、血こそ出ていないものの服は所々焦げて破れている。攻撃されたことは誰にだって分かる。
私から全てを奪っただけじゃなくて、大切な人まで傷付けるなんて許さない。力強く羽ばたき空中から人間を見下ろす。怒りで翼にかつてないほど力が入る。
ザンッーーーーー!!!!
という衝撃音が下から聞こえた。人間は尻餅をつき、傷は浅いものの血を流しているようだ。何が起きたかいまいち分からない。
下に下りてみると、シルキーが私の頭を撫でグーサインを繰り返す。私がやったんだ…?
『かまいたち。ララ、出来る、思ってた。』
ツニートも誉めてくれる。
人間達は…。
「※※※※※!※※※※※※!!※※※※※※※※※※※※※!!」
怒っていらっしゃる。デスヨネー。
早すぎて何を言っているのかはもう分からない。もう一発お見舞いするか。
今度は空中からではなく地面からかまいたちを放つ。放ったら私も踏ん張りきれずに吹き飛んだ。ら、シルキーが受け止めてくれた。やだ、惚れそう…。
私が放ったかまいたちによって勇者?の一行はツニートに捕獲され、地下に閉じ込められましたとさ。
ていうか、何で抵抗しなかったんだ?武器持ってんのに。謎。
◇◇◇
あれから私は、やっと自分の足で少し歩ける位だったのに湖で長時間泳がされたお陰で全身筋肉痛になり起き上がれず、ベッドの住人になりました。予定だと今日か明日にアノーリオンさん達が戻って来るんだよね。早く戻ってきてくれないかな…。うとうとして一日過ごす。
そんなこんなで夜になりました。熱が出てきたのが自分で分かる。自分の吐く息が熱く感じ、節々が痛む。全身筋肉痛のせいだね。昨日人間達が言っていた事は、ラヴァルさんに聞かないと分からないけど、この先自分はどうしたら良いんだろう、とふと考えてしまった。絶対に日本に、家族の元に帰ると思っていたけれど。
もし万が一。異世界には一人しか帰れなかったら?もし帰れないとしたらその先は?
考えても分からない。でも考えずにはいられなかった。先が見えない事がこんなにも不安で泣きたくなるなんて知らなかった。日本にいた時は、漠然と高校を出たら大学か専門学校に進学してその内就職すると思っていた。そこに自分が希望する所に合格するかという不安はあるにしてもそれ以外は不安も疑問も無かった。
一人ベッドで泣いていると、シルキーが小さく部屋のドアをノックし、ベッドに近付いてきたと思ったら。
頭を撫で撫でされている。シルキーの手はひんやりしていて、気持ちいい。シルキーにそっと抱き締められ、涙がどんどん出てくる。今までもう涙は出ないくらい泣いたのに…。
シルキーは私が落ち着くまで抱き締めてくれていた。
ようやっと落ち着いた頃、何故シルキーが夜更けに部屋を訪れたのかと思ったら、熱冷ましの薬湯を持ってきてくれたらしい。さすがシルキーさん、熱が出るって分かったんだって。お母さんみたい。
この薬湯、くっっっそ苦い。でも効果は抜群らしい。水を大量に飲んだ後もう寝なさい、と促され、そのままストンと眠りに落ちた。
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