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突然スタートさせられた異世界生活
噂は広まる、どこまでも
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朝食が終わり、マリーナとキャロルには一旦下がって貰った。彼女らにはこの隙に噂を広めて欲しいので。
ラヴァルさんも訪ねてきてくれたが、今日の会議という名の揚げ足取り大会は欠席するお許しを貰った。
「これはこれでいいネタになります。うちの聖女様を精神的に追い詰めるなんて、ね。」
今日の報告を楽しみにしていて下さいね、と言ってクククッと笑いながら会議に向かったラヴァルさんにゾッとしたのは秘密。
昼過ぎまで部屋に閉じ籠っていたが、噂の広がり具合を確める為、庭園まで散歩に出る事にした。眉を下げて泣きそうな顔をするオプション付き。
すると面白い具合にすれ違う侍女達が心配そうな憐憫の視線を向けてくる。
あの二人の口は私の想像以上に良く回ったようだ。自分の侍女にするには口が軽すぎて信用できないが。今日一日でどこまで広がるかなと思いながら、庭園の人目につく所でこれ見よがしにため息をついてみる。
庭園が見える王宮の廊下には侍女だけではなく文官や騎士の人まで来て人だかりになっていた。 皆が何を話しているかまでは聞こえないが私の噂でほぼ間違いないだろう。
ガーラさんの的確な人選に感謝しかない。
翌朝、またマリーナとキャロルを呼び、着替えを手伝ってもらう名目で二人から情報収集する。
「嫌だわ…。何だか城の皆が私の噂をしてるみたいなの……。ねぇ、どんな噂か知っていて?」
さも悲しげな顔で聞いてみる。すると二人は私に関してどんな噂が流れているのか、少し興奮気味に顔を紅潮させて言った。
「違うのです!!皆、聖女様のご心痛に思い至れなかった自分を恥じ、少しでもお力になりたいと思っているのです。決して聖女様を貶めようとしている訳ではありません!!」
「そうです!!皆、聖女様を心配しているのです!!聖女様がお心の平穏を取り戻す事を願っているのです。聖女様を傷付ける意図はありません。」
「でも……。その噂も私が流していると思われたらと思うと……。もう城中に広まっているのでしょう?」
さも可哀想でしょ?という風にわざとらしく言ってみれば、
「そんな事あるはずがありません!通いの者もおりますから、城下にも伝わっているかもしれません。ですが!噂になったとて聖女様を悪く言う者はおりません。むしろ味方が増えるのですから悪いことばかりではありません!」
と力説するキャロル。
「そうです!気になるのであれば、一度城下を訪れてみてはいかがですか?皆の心配する気持ちがきっと聖女様にも伝わると思います!!」
さらに熱血に力説するマリーナ。
正直にいうと、城下町に興味は全くない。むしろ自分が売り飛ばされた村がこの国のどこかにあると思うだけで焼き討ちしたくなる。
さて、どうするかな。頼れるガーラさんに聞いてみるか。
「ガーラはどう思う?」
一応、私の方が身分が高いので人目がある時は呼び捨てです。
「ふむ…。」
ガーラさん達アマゾン族にとってはこの国に集落を何度も襲われているのだ。敵国で物見遊山などしたくはないだろう。その表情は暗く、固い。
「……ララランド様が行きたいと仰られるのであれば…。」
「では行ってみたいです。」
疲れるし面倒だけど、敵を知り己を知れば百戦危うからず。きっと得るものもあるだろうと思うことにする。
「……聖女様のご心痛を考えれば私がこのようなことを言うのは烏滸がましいとは思うのですが……。私は聖女様に、この世界を知って、少しでも好きになって頂きたいのです……。」
私は考え事に夢中で、マリーナが呟くように言った言葉に気が付かなかった。
マリーナとキャロルがすぐに許可を取って参ります、と言って退出した。
すぐにガーラさんが
「宜しいのですか?もう少し体調が回復してからの方が宜しかったのではありませんか?長時間歩くのはお辛いでしょう?」
「皆には迷惑をかけるけれど、見てみるのも悪くないと思うの。確かに私はこの国の、いいえ、この世界の暗い部分しか知らない」
「ララランド様……。」
ガーラさんが泣きそうな顔でこちらを見る。咄嗟に出た言葉だったが、確かに、と自分で納得する部分もあった。
私たちの犠牲を知らずのうのうと生きている人達を見ておきたい。
いずれ私の苦しみを理解してもらうのだから。
ラヴァルさんも訪ねてきてくれたが、今日の会議という名の揚げ足取り大会は欠席するお許しを貰った。
「これはこれでいいネタになります。うちの聖女様を精神的に追い詰めるなんて、ね。」
今日の報告を楽しみにしていて下さいね、と言ってクククッと笑いながら会議に向かったラヴァルさんにゾッとしたのは秘密。
昼過ぎまで部屋に閉じ籠っていたが、噂の広がり具合を確める為、庭園まで散歩に出る事にした。眉を下げて泣きそうな顔をするオプション付き。
すると面白い具合にすれ違う侍女達が心配そうな憐憫の視線を向けてくる。
あの二人の口は私の想像以上に良く回ったようだ。自分の侍女にするには口が軽すぎて信用できないが。今日一日でどこまで広がるかなと思いながら、庭園の人目につく所でこれ見よがしにため息をついてみる。
庭園が見える王宮の廊下には侍女だけではなく文官や騎士の人まで来て人だかりになっていた。 皆が何を話しているかまでは聞こえないが私の噂でほぼ間違いないだろう。
ガーラさんの的確な人選に感謝しかない。
翌朝、またマリーナとキャロルを呼び、着替えを手伝ってもらう名目で二人から情報収集する。
「嫌だわ…。何だか城の皆が私の噂をしてるみたいなの……。ねぇ、どんな噂か知っていて?」
さも悲しげな顔で聞いてみる。すると二人は私に関してどんな噂が流れているのか、少し興奮気味に顔を紅潮させて言った。
「違うのです!!皆、聖女様のご心痛に思い至れなかった自分を恥じ、少しでもお力になりたいと思っているのです。決して聖女様を貶めようとしている訳ではありません!!」
「そうです!!皆、聖女様を心配しているのです!!聖女様がお心の平穏を取り戻す事を願っているのです。聖女様を傷付ける意図はありません。」
「でも……。その噂も私が流していると思われたらと思うと……。もう城中に広まっているのでしょう?」
さも可哀想でしょ?という風にわざとらしく言ってみれば、
「そんな事あるはずがありません!通いの者もおりますから、城下にも伝わっているかもしれません。ですが!噂になったとて聖女様を悪く言う者はおりません。むしろ味方が増えるのですから悪いことばかりではありません!」
と力説するキャロル。
「そうです!気になるのであれば、一度城下を訪れてみてはいかがですか?皆の心配する気持ちがきっと聖女様にも伝わると思います!!」
さらに熱血に力説するマリーナ。
正直にいうと、城下町に興味は全くない。むしろ自分が売り飛ばされた村がこの国のどこかにあると思うだけで焼き討ちしたくなる。
さて、どうするかな。頼れるガーラさんに聞いてみるか。
「ガーラはどう思う?」
一応、私の方が身分が高いので人目がある時は呼び捨てです。
「ふむ…。」
ガーラさん達アマゾン族にとってはこの国に集落を何度も襲われているのだ。敵国で物見遊山などしたくはないだろう。その表情は暗く、固い。
「……ララランド様が行きたいと仰られるのであれば…。」
「では行ってみたいです。」
疲れるし面倒だけど、敵を知り己を知れば百戦危うからず。きっと得るものもあるだろうと思うことにする。
「……聖女様のご心痛を考えれば私がこのようなことを言うのは烏滸がましいとは思うのですが……。私は聖女様に、この世界を知って、少しでも好きになって頂きたいのです……。」
私は考え事に夢中で、マリーナが呟くように言った言葉に気が付かなかった。
マリーナとキャロルがすぐに許可を取って参ります、と言って退出した。
すぐにガーラさんが
「宜しいのですか?もう少し体調が回復してからの方が宜しかったのではありませんか?長時間歩くのはお辛いでしょう?」
「皆には迷惑をかけるけれど、見てみるのも悪くないと思うの。確かに私はこの国の、いいえ、この世界の暗い部分しか知らない」
「ララランド様……。」
ガーラさんが泣きそうな顔でこちらを見る。咄嗟に出た言葉だったが、確かに、と自分で納得する部分もあった。
私たちの犠牲を知らずのうのうと生きている人達を見ておきたい。
いずれ私の苦しみを理解してもらうのだから。
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