偽物の僕は本物にはなれない。

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彼方ルート3

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このままではらちがあかないと、僕は意を決して起き上がる事にした。
……だって本当に何も喋らないし流石に僕手を握られたままは……心臓が痛い。
改めて僕はまだ彼方が好きなんだと認識させられて、ずんっと心が沈む。

「……大和?」
「…なに?…ごめん、僕はもう行くから手を離してくれる?」
「………」

ぐいっと手を引いても彼方は握った手を離す気はないらしい。
なんなんだよ、もう。彼方は何がしたいの?
何かを喋る訳でもないし…。
僕は眉間にシワが寄るのを感じながら彼方を見る。

「……やま、とは…」
「……?」
「もう、俺が、嫌い…?話したく、ない?」
「…は……それを…っ…それを!君に言われたくない!」

僕を裏切っていたのは彼方の方だろ!なのに、なんで!
なんで僕が彼方を傷つけたみたいな言い方をされるんだよ…!
逃げないって決めた筈なのに……逃げ出したくて、たまらない。
ぎゅっと目を瞑ったままはぁはぁと荒い息を整えていると彼方がそっと僕を抱きしめた。

「…俺…なんで大和がいなくなったのか、分かんなくて……こうやって大和が戻って来てくれるまで見つける事も出来なくて………そんなんだから、大和嫌になっちゃったのかな…ごめん、ごめんな…」

肩が濡れる。
……彼方が、泣いてる?

「……彼方は、水無月さんと付き合う事が出来たんだろ?なら、もういいじゃん。僕なんかに構わなくても」
「…え…?」
「だって僕は水無月さんの身代わりでしょう?…あぁ、身代わりにもなれてないか。偽物だもん」
「なに、言って……」
「ふふ、なんで驚いてるの?…彼方はさ、親友の僕を手放したくなくて引き止める為に付き合おうって言ってくれたの分かってるよ。それに甘えちゃったのは僕。僕が悪い。だから彼方は何にも気にしなくていいんだよ。水無月さんと付き合ったって、僕にはもう関係ないもの」
「やまと……やまと…?聞いて、違う。違うんだ…」

ああ、もう。面倒だ。もういい。もういいんだよ、彼方。

ボロボロと泣いている彼方の背中をぽんぽんと2、3回叩いてそっと体を離す。
今度こそ、終わらせよう。
僕のあの終わらせ方は確かに彼方を傷つけてしまったかもしれない。

ぎこちないかもしれないけど、僕は笑みを浮かべて彼方を見つめた。


「彼方、ごめんね。彼方と付き合えて、本当に嬉しかったんだよ。…僕、彼方がずっと好きだったから……今更だけどさ。仮初めの恋愛でも、僕は十分だったよ、だから今度こそ彼方は本当に好きな人と幸せになってね」

呆然と僕を見る彼方を僕はしっかりと目に焼き付ける。
これで、最後。




「ばいばい、彼方」



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