四季怪々 僕らと黒い噂達 ボーナストラック『ある山荘』

島倉大大主

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1:山荘

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 はい、ちゅーわけで予告通り、ボーナストラック、ノーカット版『あの屋敷』始まります~。
 ええっと、一応言っておきますと、この音声は副音声の二番です。みんなでダラダラ撮りましたオーディオコメンタリーは本編と同じく一番ですので、お間違いの無いようにお願いいたします。ってか、これ需要あるんですかね? 小学校女子の生声なら、喜んで聞く人も一定数いると思いますが、僕、男なんですよ? 
 え? 
 いや……そういう層に受けるってのは、あまり嬉しくないような……。
 ま、まあ、いいや! はい、とにかく始まり始り~。
 まずは車内の映像からですね。しばらくは雑談とか、情報整理。オジョーさんが車に酔う等のプチイベントを経て山荘の門に到着し、あの管理人さんに会うわけですが、そこまではちょいと経緯の説明で。

 
 えー、事の始まりは、七月中旬、僕達の所に、カニさんが初めてやってきた日ですね。
 僕とばーちゃんが買い物をしてスーパーから帰ってくると、玄関の門の前で汗を拭きながらカニさんが立っていたんですね。
 やあ、どうも、と親しげな態度ですが、僕はまったく見覚えがありません。ですが、ばーちゃんは知っているようで、渋い顔をしております。
「なんだい、まだ、あんたらの世話にはなるレベルじゃないよ」
 カニさんは、汗を拭くと、嘘つきなさんな、結構泥沼じゃないか、と笑いました。そして僕に会釈をすると、こういうもんです、と警察手帳を見せてくれました。
 おお、と僕。カニさんは玄関の横に置いたスイカを指差して、手土産です。家にお邪魔させてくれませんかね? と言いました。
 僕とばーちゃんは顔を見合わせて、買い物袋を広げました。中にはスーパーで買ったカットスイカが入っていました。

「いやあ、生き返りますなあ!」
 スイカを二切れに、麦茶。そしてクーラーの温度は二十四℃です。
 ばーちゃんは、ここで熱いお茶をいれてきました。石田光成のようだ、と言いながらカニさんはお茶をごくごくと飲み、化け番見てるよ、面白いねえ、と煎餅をぼりぼりと食べています。
 ばーちゃんは洗い物を終えると、居間に戻ってきて胡坐をかきました。で? と単刀直入に聞きますと、カニさんも、困った事が起きた、と鞄から書類を出しました。

 なんでも、ある山荘で資産価値の調査中に失踪事件が起きたらしいのです。

 それは警察の出番ですねえ、と僕。
 それが君達の所に来たという事は? とカニさん。
 つーわけで、なるべく緊急に僕達は山荘に向かうことになりました。
 失踪したのは、町の不動産屋さんA氏。山荘自体が広いので助手二人に管理人一人の四人パーティで調査を開始したらしいのですが、二階に行ったA氏が全然降りてこない。変だと思って皆で手分けしても見つからない。
 仕方なく警察に通報しても、やっぱり見つからない。ってか、警官が怯えて捜査拒否を初めてしまいまして、『そういうのならカニを呼べ』ってんでカニさんが行くも、あ、こりゃ駄目だ、と戦略的撤退。
 で、今に至るわけです。A氏の生存を考えるに、早ければ早いほど、なんなら今日にでも、とせっつくカニさんを何とかなだめ、僕達は次の日の早朝、山荘に向かうことになりました。
 ちなみに車はカニさんのバンで、ばーちゃんとキンジョーさんはお留守番です。後で知りましたが、二人はこの時、落書き対策で高圧洗浄機の改造に勤しんでいたそうです。

 車中でA氏の顔写真を全員で確認していると、ヤンさんが、それで、と切りだしました。
「サツの連中がブルって捜査やめるってのは、余程だろ? 何があったんだよ?」
 打てば響くように、ハンドルを握ったカニさんが即答します。
「誰かがじっとこっちを見ている、ってのがメインだな。後は足音を聞いた、ズボンを引っ張られた、小さな人影を見た」
 オジョーさんが手を挙げました。
「小さな女の子の幽霊、もしくは人形の類ですね?」
「人形じゃないかと思う。俺も廊下の奥を影が走るのを見た。人間にしては小さすぎるな」
 ヒョウモンさんが、うわぁと小さく呻きます。
「あたし、そういうの怖くてヤダなあ。家の外で撮影してるから、みんな頑張ってよ」
 委員長が頷きました。
「うん、マジでそれでいいと思う。全員で探した方が速いけど、バックアップが外にいないのは絶対にまずい」
 オジョーさんがポンと手を打ちました。
「なるほど! それで、私はハンマーを持ってくることになったんですね。いざとなったらこれで扉なり壁なりを破壊する、と!」
 オジョーさんの足元には、柄の部分が一メートル以上ある、それはそれは、ごっついハンマーが置いてありました。ヤンさんは自前のバットを手に取ります。
「んじゃ、オジョーとヒョウモンちゃんは外。俺は中だな。いざとなったら、扉は無理かもしれねえが、窓ならいけるだろ。人形もぶっ壊せる。監督、OKか?」
 助手席の僕が頷く横で、カニさんが、儂は何も聞いてなーいと大声で言ってます。

 委員長が、ところで、と手を挙げました。
「この山荘について、ですが、どうも『結界』の欠けている場所の一つっぽいです」
 前にも言いましたが、委員長は例の地図と欠けた丸を取り出して、山荘がその欠けの位置にあることを示しました。ヒョウモンさんは、ふーんと顎を掻きました。
「なら、あたし達は外で壊されたり、落書きされたりしてる祠とか石を――」

「見えた」

 カニさんの言葉に僕達は一斉に前を向きました。
 山の中腹の雑木林、その梢越しにちらちらと屋根のような物が見え――唐突に木立が絶えて山荘が姿を現しました。
 二階建てで、壁は元はクリーム色だったようですが、所々くすんでおり、蔦の類が毛細血管のようにあちこちに這いまわり、パレットの上で乾いてひび割れた絵具みたいな外観になっちゃってました。
 錆びついて、開きっぱなしの鉄の門を抜けると、駐車場も兼ねているらしい前庭に出ます。ここも荒れ放題です。
 ちなみにここで、ヒョウモンさんと委員長が突如ゲラゲラ笑いだしておりますが、これ、中庭の中央にある噴水が原因でして、そこの真ん中に小便小僧的な天使っぽい像があるんですよ。
 で、その小さなアレにも蔦みたいなのが絡まっておりまして、そこの先っちょに偶然にも滅茶苦茶綺麗な青紫の大きな蝶が留まっていたんです。
 それが羽を動かすたびに、笑う人が増えまして、管理人さんが車の前に来た時には、全員が体を二つに追って涙を流して笑っていたというね。
 ちなみにカニさんがそれを教えて、管理人さんもツボに入ったらしく、吹き出してました。
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