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第41話 初めてのダンジョン
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迷宮都市のダンジョンは都市の最北部の山の中にあった。
その山全体が強固な結界で覆われていて、魔物が外に出られないようになっていた。
山の麓にダンジョンの入り口があり、許可のある者だけが結界を抜けて出入りできた。
「黒と金の風」はダンジョンの入口前にいた。
受付でパーティー名とメンバーを記入し、入場税を払い、あとは並んで入場を待つだけだった。
シリルとダンは顔を見合わせ、不満そうに呟いた。
「入るのにお金を取られるって、せこくない?」
「ダンジョンの結界の維持とか管理に使われるって、講習で習ったでしょ?」
ゼノアに指摘されて、二人は「しまった」と思い目を反らした。
ダンは恥ずかしくて講習の内容がほとんど耳にはいっていなかったし、シリルはシリルで途中から興味がなくなって上の空だった。
メル、アルバ、ガダルはクスクスと笑いを堪えていた。
「シリルさんって、子供っぽいんですね」
「精神年齢がいつまでたっても子供で困ってしまうわ。ダンは真似したらダメよ」
「ゼノア姉ちゃん、そこまで言わなくてもいいじゃん」
シリルは頬を膨らませて不貞腐れ、みんな大笑いした。
そうこうしてる間にダンジョンに入る順番が来た。
ダンジョンの入口は大きな洞穴で、入ると松明で照らされた大きな広間に出た。
ここ1階は小さなネズミの魔物しか湧かないから、歩いている冒険者に蹴られて、即倒されていた。
ほとんどの人はネズミには興味を示さず、その先にある坂道を下りていった。
ダンたちも前の冒険者に続いて2階へと坂道を下りていった。
しばらくすると大広間に出た。ヒカリゴケのおかげで、うっすらと明るく松明は必要なかった。
ダンたちが一番右側の洞穴を進んでいくと、既に魔物との戦いが始まっていた。
ここは初心者が訓練に使う場所らしく、ダンたちのような少年少女が戦っていた。
初めて真近に魔物との戦いを見て、メル、アルバ、ガダルは緊張し、武器を持つ手に力が入った。
「そんなに緊張しなくても大丈夫よ。さっきの訓練を思い出して、落ち着いてやればできるわ」
ゼノアは優しくみんなの背中を叩きながら、安心させるように微笑んだ。
そして、毅然とした足取りで先頭を歩き、次の部屋へ向かって進んだ。
誰もいない広間は静寂に包まれていたが、ゼノアの透き通る声が響いた。
「さあ、武器を構えて。来るわよ」
ラージラットが3体突進してきた。
アルバ、ガダルは木の盾で1体ずつ受け止めた。
1体が二人の間を抜けたが、ダンが剣で斬りつけた。
ラージラットは一端離れて、再び襲ってきた。
アルバ、ガダルは木の盾で2体を止め、抜けた1体をダンが斬った。
彼らはこの戦法を繰り返した。
そして1体が死んだ。
残り2体のラージラットの突進をアルバ、ガダルは木の盾で受け止めると、横からダンが一体を切り殺した。
最後の1体も同様にして倒し、戦闘は終了した。
ゼノアとシリルが拍手した。
「やったじゃん!」
「いい連携だったわ。上出来よ」
「やった~!」
ダン、アルバ、ガダルは拳を上げて喜び抱き合った。
しかしミミは腰を落として項垂《うなだ》れていた。初めて魔物に襲われて恐怖で足が竦んでしまい、何もできなかったからだ。
ゼノアが優しくメルの手を取り起こした。
「大の大人でも魔物は怖いわ。メルが怖がっても何も恥じることなんてないの」
「はい」
「次はみんなを信頼して、しかり魔法を唱えましょう」
「はい、がんばります」
魔石を回収して、先に進んだ。
次もラージラットが3体だった。
メルが水壁を全面に展開し、アルバとガダルが盾を構えた。
ラージラットは水壁で勢いを削がれ、出てきたところを盾で地面に叩きつけられた。そこをすかさずダンが斬りかかり1体を倒した。
2体は起き上がると、素早く離れ、また突進してきた。
しかし水壁で勢いを殺され、盾で押しつぶされ、ダンの剣でとどめを刺さされた。
最後の1体は、袋叩きにあって死んだ。
「やった~できたわ!」
「練習通りの連携ができて、素晴らしかったわ」
ゼノアとシリルが拍手をして褒めると、メルは3人に抱きつき大喜びした。
次はラージラットが5体だったが、時間はかかったもののメルの水壁のおかげで誰も怪我をせずに討伐できた。
全部で30体のラージラットを倒したところで、ゼノアは帰ることを提案した。
男の子3人は、まだまだ元気だったので、不満をもらした。
「もう少しやりたい」「全然元気だから、まだ大丈夫」「お願い、もう少しだけ」
しかしゼノアは、メルの様子を見て首を横に振った。
「このパーティーの要はメルの水壁よ。メルはそろそろ限界だから、今日はここまで」
メルが申し訳なさそうに俯いているのを見て、男の子たちは諦めるしかなかった。
シリルが上目遣いで、少し悪戯っぽい笑みを浮かべながらゼノアを見た。
「ゼノア姉ちゃん、ちょっと探索してきてもいいかな?」
ゼノアは呆れかえった顔でシリルを見返した。
「子供たちが諦めたのに、大人のあなたが駄々をこねて、恥ずかしくないの?」
「えぇ、そんなぁ」
「シリル姉ちゃん、本当に子供っぽいな」
ダンが冷やかすと、みんなが笑った。
ゼノアがパンと手を叩いた。
「これから初ダンジョンのお祝いをしましょう!」
「わお! やったぁ!」
初ダンジョンの記念に魔石を1個ずつ貰って、残りは換金し四等分した。
四人は手にしたお金を見つめ、これが彼らの努力の結晶だと思うと、胸が熱くなった。
その夜、アルバの宿で祝勝会が開かれた。
その山全体が強固な結界で覆われていて、魔物が外に出られないようになっていた。
山の麓にダンジョンの入り口があり、許可のある者だけが結界を抜けて出入りできた。
「黒と金の風」はダンジョンの入口前にいた。
受付でパーティー名とメンバーを記入し、入場税を払い、あとは並んで入場を待つだけだった。
シリルとダンは顔を見合わせ、不満そうに呟いた。
「入るのにお金を取られるって、せこくない?」
「ダンジョンの結界の維持とか管理に使われるって、講習で習ったでしょ?」
ゼノアに指摘されて、二人は「しまった」と思い目を反らした。
ダンは恥ずかしくて講習の内容がほとんど耳にはいっていなかったし、シリルはシリルで途中から興味がなくなって上の空だった。
メル、アルバ、ガダルはクスクスと笑いを堪えていた。
「シリルさんって、子供っぽいんですね」
「精神年齢がいつまでたっても子供で困ってしまうわ。ダンは真似したらダメよ」
「ゼノア姉ちゃん、そこまで言わなくてもいいじゃん」
シリルは頬を膨らませて不貞腐れ、みんな大笑いした。
そうこうしてる間にダンジョンに入る順番が来た。
ダンジョンの入口は大きな洞穴で、入ると松明で照らされた大きな広間に出た。
ここ1階は小さなネズミの魔物しか湧かないから、歩いている冒険者に蹴られて、即倒されていた。
ほとんどの人はネズミには興味を示さず、その先にある坂道を下りていった。
ダンたちも前の冒険者に続いて2階へと坂道を下りていった。
しばらくすると大広間に出た。ヒカリゴケのおかげで、うっすらと明るく松明は必要なかった。
ダンたちが一番右側の洞穴を進んでいくと、既に魔物との戦いが始まっていた。
ここは初心者が訓練に使う場所らしく、ダンたちのような少年少女が戦っていた。
初めて真近に魔物との戦いを見て、メル、アルバ、ガダルは緊張し、武器を持つ手に力が入った。
「そんなに緊張しなくても大丈夫よ。さっきの訓練を思い出して、落ち着いてやればできるわ」
ゼノアは優しくみんなの背中を叩きながら、安心させるように微笑んだ。
そして、毅然とした足取りで先頭を歩き、次の部屋へ向かって進んだ。
誰もいない広間は静寂に包まれていたが、ゼノアの透き通る声が響いた。
「さあ、武器を構えて。来るわよ」
ラージラットが3体突進してきた。
アルバ、ガダルは木の盾で1体ずつ受け止めた。
1体が二人の間を抜けたが、ダンが剣で斬りつけた。
ラージラットは一端離れて、再び襲ってきた。
アルバ、ガダルは木の盾で2体を止め、抜けた1体をダンが斬った。
彼らはこの戦法を繰り返した。
そして1体が死んだ。
残り2体のラージラットの突進をアルバ、ガダルは木の盾で受け止めると、横からダンが一体を切り殺した。
最後の1体も同様にして倒し、戦闘は終了した。
ゼノアとシリルが拍手した。
「やったじゃん!」
「いい連携だったわ。上出来よ」
「やった~!」
ダン、アルバ、ガダルは拳を上げて喜び抱き合った。
しかしミミは腰を落として項垂《うなだ》れていた。初めて魔物に襲われて恐怖で足が竦んでしまい、何もできなかったからだ。
ゼノアが優しくメルの手を取り起こした。
「大の大人でも魔物は怖いわ。メルが怖がっても何も恥じることなんてないの」
「はい」
「次はみんなを信頼して、しかり魔法を唱えましょう」
「はい、がんばります」
魔石を回収して、先に進んだ。
次もラージラットが3体だった。
メルが水壁を全面に展開し、アルバとガダルが盾を構えた。
ラージラットは水壁で勢いを削がれ、出てきたところを盾で地面に叩きつけられた。そこをすかさずダンが斬りかかり1体を倒した。
2体は起き上がると、素早く離れ、また突進してきた。
しかし水壁で勢いを殺され、盾で押しつぶされ、ダンの剣でとどめを刺さされた。
最後の1体は、袋叩きにあって死んだ。
「やった~できたわ!」
「練習通りの連携ができて、素晴らしかったわ」
ゼノアとシリルが拍手をして褒めると、メルは3人に抱きつき大喜びした。
次はラージラットが5体だったが、時間はかかったもののメルの水壁のおかげで誰も怪我をせずに討伐できた。
全部で30体のラージラットを倒したところで、ゼノアは帰ることを提案した。
男の子3人は、まだまだ元気だったので、不満をもらした。
「もう少しやりたい」「全然元気だから、まだ大丈夫」「お願い、もう少しだけ」
しかしゼノアは、メルの様子を見て首を横に振った。
「このパーティーの要はメルの水壁よ。メルはそろそろ限界だから、今日はここまで」
メルが申し訳なさそうに俯いているのを見て、男の子たちは諦めるしかなかった。
シリルが上目遣いで、少し悪戯っぽい笑みを浮かべながらゼノアを見た。
「ゼノア姉ちゃん、ちょっと探索してきてもいいかな?」
ゼノアは呆れかえった顔でシリルを見返した。
「子供たちが諦めたのに、大人のあなたが駄々をこねて、恥ずかしくないの?」
「えぇ、そんなぁ」
「シリル姉ちゃん、本当に子供っぽいな」
ダンが冷やかすと、みんなが笑った。
ゼノアがパンと手を叩いた。
「これから初ダンジョンのお祝いをしましょう!」
「わお! やったぁ!」
初ダンジョンの記念に魔石を1個ずつ貰って、残りは換金し四等分した。
四人は手にしたお金を見つめ、これが彼らの努力の結晶だと思うと、胸が熱くなった。
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