眠った者達の図書館

日向 紫音

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桜の下にいる少女

どのようなご要件ですか?

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 暑い夏。

 私は冷たいミントティーを口にし、清涼感を感じていた。

 ここは、《カフェ・Iris》。京都のどこかにあるカフェである。誰もお客さんが来ない時間なので音楽を聞いている。レコードプレイヤーで流れているのはチャイコフスキーのくるみ割り人形金平糖の踊りである。

 もう夕方でお客様がいないので、キッチンで一息着いていた。

 ここには様々なお客様がいらっしゃる。

 お茶を楽しみに訪れる方や、が知りたいと来られる方。

 このカフェはそんなの為にあるカフェである。
 も

 そろそろ閉店時間なので、《CLOSE》の札を掛けようと立ったところドアのベルがなり、一人の男性が入ってこられた。

「すみません。もう閉店ですか?」

 真っ白でシワの無いシャツ、汗の性か襟首ら辺が少し濡れているを着ている成人男性だった。
 カバンは手提げでは無く、リュックでしっかりしているが新品には見えない。まだ使って数ヶ月位だろう。新社員か新教員かその辺だろう。

「いえ、まだ大丈夫ですよ」

 私はニッコリと笑って答える。

「どうぞお掛け下さい」

 そう言いながらカウンターのイスを指す。促されるようにその方は座り言った。

「何かお飲みになられますか?」

 汗をかいていてシャツが少し濡れている。

「そうですね・・・、暑かったので何か冷たい物をお願いします」
「かしこまりました」

 そう言うと、私はさっきまで私が飲んでいたミントティーを冷蔵庫から出し、グラスに入れてコースターを下にして出した。

「どうぞ、ミントティーです」

 外がとても暑かったのか、すぐにゴクゴクと半分近く飲まれた。

「これは!凄く爽やかですね!!ミントティーなのに甘いです」

 それもその筈だ。
 このミントティーは濃いめに淹れた緑茶に砂糖を入れ、その後にペパーミントを生で入れたのだ。

「甘いのは砂糖を入れたからですよ。飲みやすいでしょう」
「はい、とても飲みやすいです。今日はとても暑かったので体に染み渡りました」
「確か今日は最高気温更新でしたね」
「はい、今日は外がとても暑かったので熱中症を懸念して中で活動する事になりました」
「『中で活動』とは?」
「ああ、僕すぐそこの小学校の国語の教師なんです」

 なるほど、だからスーツか。

「それは大変でしたね」
「はい・・・、子供達が暑さで授業に集中出来なかったと、先生が嘆いてました」

 と、笑いながら言った。

「それで、今日はどのようなご要件ですか?」

 その場の空気が一瞬ピリッとした。

「・・・・・・どうしてそんな事聞くんですか?ここはカフェなんですよね、それなら、ここに来るのに理由は一つですよね?」

 確かに、その通りだ。
 但しそれはここが

「・・・・・・昔、聞いた事があるんです。京都のどこかにあるカフェに行くと、死者と逢えると」

 なるほど、それでこんなカフェに来られたのか。
 このカフェは細い路地を通った先にある。
 一見それはただの家に見えるが、くるべきして来られるお客様にはカフェとしての姿に見られる。
 勿論、からの常連の方は何もなくとも来られてお茶を楽しまれていかれる。

「っ本当に、本当に彼女に会えるんですか!?」
「・・・彼女が何方かは分かりませんが、

 男性は息を飲んだ。

「あ、ある意味ってどうゆう事ですか?」
「彼女に逢えるのは本当です」

 男性は喜びの表情を浮かべた。

「じゃあ・・・!」
「・・・・・・ただし、彼女の記録でございます」

 沈黙が広がった。
 その間わずか10数秒だったが、もっと長く感じただろう。

「・・・・・・き、記録ってどうゆう事ですか?」

 男性は何か恐ろしい事を聞くように尋ねた。

「''彼女''が生まれてからお亡くなりになられるまでの記録でごさいます。''彼女''が覚えていない事でも''彼女''がその時発した、あるいは思っていた言葉が全て綴られています」

 男性は化け物を目の前にしているかの様に顔が青ざめていた。

「全部って、本当に全部ですか?」
「・・・・・・はい」

 男性はカウンターをバンッと叩いて立ち上がった。

「っじ、じゃあ!彼女が最後に思っていた事も分かるって事ですよね!?」
「はい・・・・・・。''彼女''が亡くなるその瞬間まで思っていた事がそれには記されています」

 男性は息を飲んで言った。

「お願いです。彼女の記録を読ませて下さい」

 男性は綺麗に直立し、90度に体を折り曲げた。

「・・・・・・そこまでかしこまらなくてもよろしいのですよ」

 男性は顔を勢いよく上げた。

「じゃあっ!」
「はい。貴方に''彼女''の記録をお見せしましょう」

 ・・・・・・と言うか、は十分にあります。と、小さく付け足した。
 男性は少し泣きかすれ声で言った。

「ありがとうございます・・・・・・」
「・・・・・・その前に何ですが」
「は、はい」
「貴方のお名前と''彼女''に会いたい訳をお聞かせ願いますか?」

 涙を拭き彼はポツポツと話し始めた。

「僕の名前は椎名 圭と言います。僕と彼女は同じ小学校だったんです。彼女はいつも一人でした。別に虐められてたとかそんなんじゃないんです・・・・・・多分。転校して来たばかりでいつも下を向いていました。でも、彼女本を読んでいる時と本やアニメの話をする時はすっごく楽しそうで僕も嬉しかったんです。最初は同情とかだったと思うんです。けど、彼女と一緒に居る時は凄く楽しかった。段々彼女は人と喋る様になりました。僕との会話がリハビリみたいなのになっていたのでしょう。僕も最初は彼女の友達が増えて嬉しかったんです。けど、彼女が遠くに行ってしまうようでした。元々の彼女は優しくて、明るい、顔も可愛かったんです。周りと話していくと彼女の良さに気づく奴が増えていって彼女・・・・・・数人の男子に告られたんです。それは断ったらしいんですけど僕は焦っていました。中学になっても僕らの友達関係は続いていました。彼女は告られる回数も多くなっていつ付き合うのかとハラハラしていました。中1の夏に僕は覚悟を決めて彼女に告白する事にしたんです。手紙で人が全然来ない学校のガレージの桜の木の下ひ呼び出しました。僕はその日運悪く先生の手伝いをさせられてしまって呼び出した時間に少し遅れてしまったんです。急いでガレージに行きました。そしたら彼女まだ待っててくれたんです。嬉しくて声をかけようと駆け出したその瞬間でした。凄く大きな音がしてビックリして見たら暴走トラックがガレージに突っ込んで来ました。彼女は・・・・・・彼女は暴走したトラックの真下に居ました。トラックの運転手は心筋梗塞で、死んでいました。彼女も脳や内臓の損傷が酷く病院に搬送されましたが・・・・・・」

 後半は涙声になっていたが聞き取れた。
 彼女に会いたいのそう言う事か。
 彼女が自分の事をどう思っていたのか、彼女が自分の事を恨んでないのか。
 でも、何故今更何だ?

「・・・・・・少しお聞きしても宜しいですか?」
「はい・・・・・・」
「ここの事は昔教えてもらったと仰いましたよね?」

 男性はそれがどうした。と言う顔でこちらを見、言った。

「はい」
「では何故、今さらここに来られたのですか?」
「ああ、ここの事は生徒に聞いたんです」
「生徒さんに・・・・・・」
「はい・・・・・・。それでここの話を昔聞いたのを思い出しまして」
「そうですか。ここは分かりずらかったでしょう」
「はい、じいちゃんの話を何とか思いだして見つけました」
「そうなんですか、おじい様が・・・・・・」
「ここの事生徒さんは何と?」
「えーと、確か『私の知り合いのお姉ちゃんが死者に一度だけ会える場所を知ってる。先生、彼女の事を見てあげて来て』って言われまして」

 なるほど、あの子か。
 まったくここの事はあまり言いふらすなと言っておいたのに。

「その子は結衣と言う名前ですか?」

 先生は驚いた表情を浮かべた。

「は、はい」

「その子は私の姪です」

 ポカンとしていたがすぐに答えた。

「結衣ちゃんの親戚の方でしたか」
「はい。結衣は私の兄の娘です。考えがしっかりしていていい子何ですけど、たまに突っ走ってしまったりする子で・・・・・・」

 結衣がいつもお世話になっています。と、付け足して言った。

「いえ、学校でも結衣ちゃんの明るさには助けられる事が多いんです。この間もここの事を教えてくれて・・・・・・」
「ちなみに結衣はどうして先生にここの事を話したのですか?」

 先生は思い出しながら話し始めた。

「この前6年生だけの学校宿泊学習があったんです。その時に結衣ちゃんが・・・・・・」





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