溺愛×甘彼は最強!?初めての彼氏はレスキュー隊!

すずなり。

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再会の兆し。

翌朝。
昨日の夜はあまり眠れなかった。
火事のことを思い返しては胸がざわつき、黒崎さんとのやりとりも思い出すたびに顔が熱くなって、結局2時間ほどしか寝られなかったのだ。

それでも朝早く起きて、昨日の補聴器をハンカチで丁寧に包みなおし修理屋へと向かう。
通り慣れた道なのに、今日はどこか違って見えてしかたない。
それはたぶん、手の中にあるこの補聴器がもう音をくれないとわかっているからだろう。

「すみません…補聴器の修理をお願いしたくて」

受付の人に伝え、奥から出てきた年配の技師にハンカチごと差し出す。
技師は無言でそれを受け取り、手元にあるライトで中をのぞき込んだ。
私の心臓の音だけが、どくんどくんとやけにうるさく響く気がする。

「これは……」

ゆっくりと動く唇に、私は反射的に身をこわばらせた。

「だいぶ前のモデルですね。内部のチップがむき出しになっていて、コネクタ部分も損傷しています。修理は……厳しいかと…」

「そうですか……」

「部品の在庫もおそらくもうないですね。これ、海外製ですよね?」

「……はい」

「だいぶ古いですし……国内で部品の調達は難しいですね。申し訳ないですが……」

技師の人が丁寧に謝るけれど、その声は私の中を素通りしていく。
どこかで覚悟はしていたことだった。
でも、もしかしたら…もしかしたらと期待してしまった自分がいたのだ。

私は小さく頭を下げて、修理不能となった補聴器を再びハンカチで包み、鞄にしまった。

(補聴器…どうしよう…)

壊れてしまったけど、この補聴器を捨てることはできない。
思い出も、時間も、全部が詰まったこの補聴器を、私はどうしても手放すことができないと思ったのだ。

そのまま私は、次の目的地である病院へと向かった。
煙を吸い込んだ肺に問題がないか、念のため診てもらう必要があると昨日言われていたからだ。

朝の光に包まれて静かなロビーの椅子に腰を下ろし、名前が呼ばれるのを待つ。

(……何か、方法はないのかな。補聴器、新しく買うとしてもあのレベルのはきっと無理だし…そうなると金額が…)

手の中のハンカチをそっと握りしめたとき、名前を呼ばれて診察室に入ったのだった。


そんな美織の様子を廊下の端でじっと見ていた外国人の姿があった。
彼の名前はアレク。
日本に来ていた際に交通事故に遭い、この病院に搬送された経験がある。

その後、一度は帰国したもののまた仕事で来日し、世話になった病院に足を運んで経過を報告しに来たところだった。

〖あれは…ミオリ?〗

オランダ語で呟く彼に、秘書兼通訳を務める女性が声をかける。

〖どうかされましたか?代表〗
〖いや、事故のあと、この病院まで付き添ってくれた女性がいると話したことがあっただろう?〗
〖えぇ。確か、代表が無理矢理連れてきたと…〗
〖そんな人聞きの悪いことを……〗
〖その女性がどうかされましたか?流暢なオランダ語を話していたときいた記憶がありますが…〗

秘書の言葉に、彼は美織が入っていった診察室に視線をおく。

〖…似てる女性がいたんだ〗
〖似てる…ですか〗
〖もしかしたら本人かもしれないが…〗
〖なら本人では?聞きますか?〗
〖そうだな、ここで出てくるのを待って―――〗

そのとき、病院のスタッフがアレクに声を掛けに行った。

「すみません、アレク様でしょうか?医師が呼んでおります」

その言葉を秘書が通訳すると、彼は秘書に〖あの診察室から出てくる若い女性に名前を聞いておいてくれ、もしミオリ・ナルミと名乗ったら、私の名刺を渡してくれ〗と言い、スタッフと共に別の診察室に入っていった。

言伝を頼まれた秘書は、言われた診察室の扉をじっと見て待つ。
すると、すこし時間が経ってから一人の若い女性が出てきたのだ。
秘書はすかさず、その女性に声をかけにいく。

「すみません、ちょっと人を探しているのですが、あなたはナルミ・ミオリさんですか?」

しかし、彼女は首を傾げて横に振った。

「違いますが…」
「お名前を伺っても?」
「来間柚葉です…けど…」
「…」

その名前を聞いた秘書はアレクの勘違いだったと認識し、頭を下げる。

「失礼いたしました」
「いえ…では……」

そう言って去って行ったのは、高校の制服を着た女子高生だ。
秘書は、アレクが言った診察室の扉を間違えてしまっており、美織が入った隣の診察室から出てきた女性に声をかけてしまっていた。
その女子高生と秘書が会話をしているうちに美織は診察が終了し、病院をあとにしてしまう。

(代表の見間違いだったのね。…できればお礼を言いたかったけど…それはまたの機会になりそう)

そんなことを考えながら、秘書は先ほどの場所に戻る。
すると、ちょうどアレクが戻ってきたのだ。

〖ミオリだったかい?〗

期待の眼差しで秘書に問うアレク。
しかし、秘書は目を伏せて首を横に振った。

〖いいえ、ユズハという名前の女の子でした〗
〖そうか…違ったのか…〗
〖こちらの病院で処置を受けたのですから、病院側に聞いてみてはいかがですか?〗
〖とっくにそうしてるさ。だが、個人情報だからと教えてもらえないんだ〗
〖なるほど…〗

『諦める』
その選択が頭をよぎったとき、アレクの目に思いもよらぬ光景が飛び込んできた。
なんと、病院の入り口からオレンジ色の服を着たレスキュー隊が入ってきたのだ。

〖…彼らだ〗
〖はい?〗
〖彼らが私を助けてくれたんだ!きっとミオリのことも知ってるはず…!〗

そう確信したアレクは、迷うことなくレスキュー隊に声をかけにいく。

〖キミたち!ちょっと聞きたいことがあるんだ…!〗
「?」

その言葉に振り返ったのは…黒崎だった。

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