幼馴染がヤクザに嫁入り!?~忘れてなかった『約束』~

すずなり。

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彩とおじさま。

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ーーーーー



ゆうちゃんの家を出た私、彩は学校用の荷物が入ってるリュックを背負って学校に向かっていた。

歩いて30分の大学までは街を抜け、河川敷を歩いて行く。

夏手前のこの季節はいろんなところで花が咲いていて、目が楽しいのだ。


「菜の花がいっぱい咲いてるー。」


川沿いをずっと咲いてる菜の花たち。

時々風が吹くと揺らめいていて楽しそうだ。


「ちぎり絵で描いたらきれいかなー?」


菜の花を大きくとって、奥に流れてる川を描くととてもきれいな構図になりそうだ。

そんなことを思いながら歩いてるとき、ふと隣を誰かが歩いてるような気がして視線を変える。

するとそこに見知ったおじさま・・・『東郷さん』が隣を歩いていたのだ。


「・・・あれ?東郷さん?」

「やっと気がついた?今から大学?」

「はい。・・・今日は車じゃないんですか?」


東郷さんはいつも長い車に乗ってる人だ。

『高級車』らしいけど、何が高級なのか私にはさっぱりわからない。

お歳は60過ぎで、私の絵を気に入ってくれてる。


「さっき彩ちゃんが見えたから降りてきたんだよ。新しい家はどう?」

「うーん・・・。画室を作ってもらったんで、前より色々描けるようになりました。」

「そうかいそうかい。」


にこにこ笑いながら隣を歩く東郷さんはまるでおじいちゃんみたいだ。


「・・っと、それは?彩ちゃんが作ったのかい?」

「?・・・これですか?」


東郷さんが気がついたのは私のリュックにつけてあるキーホルダーだった。

紫外線で固まる『レジン』ってやつをお父さんが買ってきてくれて、使い方を知るために試作したものだ。

小さい紙に描いた絵をレジンに閉じ込めてある。


「画用紙に描いた絵なんですけど、にじまないように専用の液があるんですよ。それをキーホルダーにして・・・」


そこまで説明すると、東郷さんは立ち止まって私の両肩をがしっと掴んだ。


「彩ちゃん・・・これ、おじさんに売ってくれない?」


どうやら東郷さんはこのサイズの私の絵を気に入ったらしく、そんな交渉をしてきた。


「えー・・・・。」

「言い値で買うよ!?いくらなら売ってくれる!?」


そう言われ、私はリュックを下ろしてキーホルダーを手に取った。

これは初めてのレジン作品で、空気も入っちゃってるし絵も適当に描いたもの。

売れるはずもなく、売る気もなかった。


「・・・だめ。」

「だめ?どうしても?」

「これは試作なんです。上手に作れるようになったときに東郷さんが気に入るのがあったら買ってください。」


そう言って私はリュックをまた背負った。

大学に向かって歩き出すと、東郷さんはその場で手を振っていた。


「わかったよ。じゃあ彩ちゃん、またね?」

「はーい、行ってきまーす。」

「いってらっしゃい。」


後ろを見るようにして歩くと、東郷さんは少し向こうにある車に向かって歩いて行った。

確かどこかの会社の会長さんをしていて、その会社はいくつかあると前に教えてもらったことがあったことを思い出した。


「・・・いつも買ってくれるけど、そんなに私の絵が好きなのかな?」


そんなことを思いながら歩いて行った。


ーーーーー


そんな彩の後姿を東郷が見つめてる。


「また新しいものを作ってるのかぁ、彩ちゃん。」


東郷が彩と出会ったのは、彩が中学生の時だった。

夏の夕方前にあったゲリラ豪雨のあと、水たまりの水を使って地面に絵を描いていたのをたまたま通りかかった東郷が見ていたのだ。

すぐに消えてしまう『水』で描かれていたからか儚さが強く出ていて、一瞬で虜になってしまったのだ。


「彩ちゃんの風景画は素晴らしい。あれは金の卵以上のものになる。」


先見の目がある東郷は、彩の絵をかなり気に入っていた。

彩の将来性もあったが、その配色や構図が好みだったのだ。

そして直感で感じた。


『この子は絶対に有名になる』と。


「彩ちゃんの絵、もっと高く買ってもいいんだけど・・・なかなかお父さんが了承してくれないからなぁ。」


『彩はお金に無頓着だから』と言って父親は絵を売ることを渋っていた。

でも東郷の頼み込みに負けて、少しずつ原価・・・つまりかかった材料費で売ることを了承したのだ。


「将来、彩ちゃんが何を言い出してもサポートできるようにしっかり稼いでおかないと。」


そう言って東郷は運転手付きの自分の車に乗り込んでいったのだった。




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