幼馴染がヤクザに嫁入り!?~忘れてなかった『約束』~

すずなり。

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探し物。

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「えーっと・・・確かこの奥・・・」


植物園から家に帰って来た俺は、部屋で彩の絵を探していた。

思ってた通り、クローゼットの奥に懐かし気な箱がある。


「あ、あったぞ。」


取り出した箱は少し大きめだ。

衣装ケースくらいある箱をクローゼットの前に置くと、彩がワクワクしながら開けていってる。


「ふぁ・・・!いっぱいある!」

「お前がくれたやつは全部あるはずだ。懐かしいんじゃないか?」


彩は1枚1枚丁寧に取り出し、その絵をじっと見つめた。

思い出が蘇ってきてるのか、時々考えるようなそぶりを見せてる。


「うーん・・・あ、これこれ。これだよ。」

「どれ?」


目的の絵を見つけたのか、彩は2枚の絵を横並びに置いた。

両方ピンク色がきれいな桜の絵だ。


「当時の年齢を考えたら両方上手いけど・・・圧倒的にこっちがすごいな。配色が全然違う。」


彩が覚醒した直後の絵なのか、乗せられてる色が全然違ったのだ。

俺が褒めたであろう絵はピンクや赤、それに白がメインで桜の花びらが描かれてるけど、後から描いたほうは何ていうか・・・儚さが見える。


「これね、水で薄めたの。」

「水?」

「うん。極限まで薄い赤を作って、それを乗せたの。」


彩が言うには今まで全部の花びらを同じように塗っていたけど、少しずつ塗る濃さを変えたのだとか。

それで儚さが生まれ、色の濃淡もできて一気に表現力が上がったらしい。


「ゆうちゃんがね、『彩の描く桜、好きだよ』って言ってくれたのがすごく嬉しかったの。あの日のゆうちゃんの笑顔、今でも忘れてないよ。」

「!!」

「あの時、ゆうちゃんが私に彩(いろ)をくれた。あの日からずっとゆうちゃんのこと、大好きだよ。」

「---っ!」


思ってもみない彩の告白。

そんな前から俺のことを好きだったのかと驚くけど、それは俺も同じだった。


「・・・俺も彩が好きだったよ。これからもずっと好きでいる。」

「・・・ふふ。・・・でも私の絵を忘れてたでしょ。」

「!!・・それは・・・・」


少し拗ねるようにしてそう言ってきた彩だけど、すぐにその表情は柔らかいものになった。


「今度、いちごのクレープ食べたいな?」

「!!・・・腹がはち切れるくらい食わせてやるよ。」

「えー・・それじゃあトオルくんのご飯が食べられないよ。」

「じゃあ毎日一個ずつにするか。」

「それだと太るからやだ。」

「俺はもう少し肉があるほうが好きだけどな?」

「肉・・・いちごクレープに焼き肉乗せるの?ちょっとそれは・・・」

「違うから。」


笑いながら見ていった彩の絵をまた大切にしまうと、彩はふと思い出したかのように口を開いた。


「あ・・・個展。」

「個展?考えといてって言ったやつ?」

「うん。個展って絵を売るの?」

「それは主催者によりけりだろうけど・・・売ってもいいし売らなくてもいいんじゃないか?売る用に別で何かを用意する人もいるだろうし。」


記念品としてポストカードのようなものを配る人だっているだろうし、キーホルダーを作って販売する人もいるだろう。


「なんかね、お父さんが『雄介くんの為に絵を売ってもいいよ』って言ってたの。あれってどういう意味かわかる?」

「!!・・・それは・・・・」


うちの暴利をやめさせたいおじさんは、彩の絵の売り上げをうちに入れて収入を確保させようとしてるのだ。

そのことで彩を巻き込みたくはないけど、『警察官の娘がヤクザと付き合ってる』なんて口が裂けても言えないことだろう。


(かといって、うちの利益は結構いろんなところに消えてるしな・・。うちで金を借りる奴なんてろくでもないやつばっかりだし・・・できるだけ利息は下げたくない。)


でも下げなければマークされることは必須。

いや、『行方不明者が出た』ということですでにマークされてるだろう。


「・・・彩は絵を売りたいか?」


ここは彩の気持ちが最優先だと思って聞くと、彩は少し悩んでから答え始めた。


「うーん・・お金は興味ないけど、ゆうちゃんを助けれるなら売りたいかな。お父さんが言ってたし。」

「何て言ってた?」

「『雄介くんが困るなら絵を売りなさい』って。」

「・・・。」


もうこれは確定だ。


(船はしばらくやめるか。行方不明者さえ出なければ大丈夫だろう。)


そう考え、俺は彩を自分の膝の上に乗せた。


「じゃあ初めての個展は絵を売ってみるか?どれくらい売れるかわからないし、もしかしたら誰も買わないかもしれない。それでも彩が傷つかないなら『売る』を前提に個展、開いてみるか?」

「!!・・・うん!」

「よし。」

「あ、でもおじさんのとこのが終わってからね?」

「わかってるよ。」


こうして彩は個展を開くことを決めた。

毎日学校に通いながらも東郷の家の作品パーツを作る。

寝不足な日々が続くものの、作品作りに没頭してる彩に何を言っても無駄なことは周知の事実。

東郷の家に時々行っては徐々に作品を作り上げていく日々を送り、半年ほど経った冬前、彩はその『絵』を完成させたのだった。




ーーーーー



「こんな大きな作品作ったの初めてだったから不安だったけど・・・ちゃんとできたね。」


全ての作業が終わり、完成した作品を俺と東郷は部屋の後ろから眺めていた。

満足そうにいろんな角度から見てる彩を放っておいて、東郷を話をする。


「いや、これほど見事に仕上げてくれるとは思ってなかったからすごいよ、彩ちゃんは。」

「そうですね。濃淡もあり、儚さもあり・・・そして春夏秋冬が一枚で完結してる上に最後、少しだけ春もある。」


壁に描かれていたのは立体の季節の移り変わり。

左から桜の木があり、花びらが少し舞ってる様子が描かれていた。

そしてその舞う花びらの向こうに続くように、紫陽花と池とカエルが描かれてる。

少し雨も降ってるのか、水面には波紋がある。

そして紫陽花が少し右に倒れるようにして描かれている向こうに、今度は紅葉があるのだ。

散りゆく紅葉の葉はいつの間にか雪に変わり、葉を落とした木の上に降り積もってる。

地面にも雪が積もってるけど、壁の端では小さなふきのとうが雪の下に埋もれていた。

この1枚の壁で、凛としながらも儚い感じが描かれていたのだ。


「へへ。おじさん、この前私のキーホルダー、『売って』って言ってきたでしょ?」


東郷と話をしてるときに彩が近づいてきてそう聞いた。


「え?・・・あぁ、言ったね。」

「それから思いついたの。この壁、つるつるしてるから絵具は落ちそうだし、だったら布に絵を描いてレジンで固めたらどうかなって。桜は20000枚くらい必要だったからちょっと大変だったけど、つぼみも散る桜の花もいろいろ作れて楽しかった!」

「に・・2万枚・・・。」

「それも桜だけって・・・」


近くで見ると一つ一つの花びらは大きさも違うし色も微妙に違っていた。

これらを重ね合わせて作り上げたのだから大したものだ。


「次は個展だね、ゆうちゃん。」


決めていたことを終わらせた彩は目を輝かせながらそう言った。

そしてその言葉を聞いた東郷が・・・黙ってはいなかったのだ。


「個展!?彩ちゃん、個展開くの!?」

「うんっ、売るのー!」

「売る!?え・・どういうこと!?」


東郷は彩に聞いても埒が明かないと思ったのか、俺を見た。


「ちょっと・・いろいろありまして・・・」

「え!?どういうこと!?」

「うちの事情も絡んでるんですけど・・とりあえず彩は個展で『売る』と決めたんで、売れる売れないに関わらずやってみようということになりまして・・・。」

「!?」


彩の『個展話』を聞いて興奮気味の東郷は、突然彩の肩をガシッ・・!と、掴んだ。


「わぁ?」

「いつ!?いつ開くの!?絶対行くから!!」

「いつかはちょっとわからないですー。」

「教えてよ!?絶対だからね!?」

「はーい。」


東郷がすべて買い占めそうな雰囲気を漂わせてる中、俺たちは東郷の家を後にした。

もう作品を作り終わったからか、彩は個展に向けていろいろ考えてるようだ。


「風景画かなぁ・・それも空想画・・・」

「空想画?」

「人物画・・うーん・・・?」


首を傾げながら悩んでる彩。

俺はそんな彩の頭をぽんぽんっと撫でた。


「個展に向けて頑張るのもいいんだけど、学校もな?卒業したいだろ?」


そう聞くと彩は真っ直ぐ前を見ながらとんでもないことを言った。


「卒業までの単位は全部終わってるから大丈夫だよ?」

「・・・は!?いやっ・・・結構単位あったと思うけど・・・!?」

「テストと課題さえ出せば単位くれるって先生が言ってたから、全部出したの。課題は最初の一週間で100個出したら『テストはもういいから在籍だけしてくれ』って言われて、学校に行ってるー。」

「まじかよ・・・。」


とんでもない逸材だと先生も気が付いたのか、大学の名前に箔をつけようと彩を繋ぎとめてるようだ。

こうなってしまうと彩はもう個展のことしか考えなくなってしまう。


「いいか?彩。個展の為の絵を描くのは構わない。でも夜は12時を回ったら寝ること。どうしても無理な時は仕方ないけど、できるだけ手を止めて寝ること。いいな?」

「えー・・・。」

「守らないとトオルのメシ、食わせないからな?」

「!!・・・寝る!」

「よし、いい子だ。」


こうして彩は俺との約束を守りながら個展の為の絵を描いていった。

俺は俺でその個展をどこで開くかを考えなくてはいけなく、仕事をしながら準備を進めていったのだった。








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