幼馴染がヤクザに嫁入り!?~忘れてなかった『約束』~

すずなり。

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作品。

ーーーーー



「・・・・デカい家だな。」


彩と一緒に東郷の家にやって来た俺は、その家のデカさに驚いていた。

まるでどこかの美術館だといわれても納得してしまいそうな大きさだ。


「おじさんには連絡してあるの。」


そう彩が言った瞬間、東郷本人が玄関から出迎えにやってくるのが見えた。

画像でしか見たことのない人物が目の前にいる。


「彩ちゃん!1か月後じゃなかったのかい?」

「ちょっと試したいことがあって。いい?」

「もちろんだよ!!・・・っと、そちらの男性は?」


東郷が俺のことを彩に聞いた。

彩がなんて答えるのか気になって何も話さずにいると、彩は俺の予想の斜め上の言葉を言い放ったのだ。


「結婚するの。」

「・・・結婚!?」

「だよね?ゆうちゃん。」


真顔でそう聞かれ、俺は笑いを堪えながら首を縦に振った。


「くくっ・・・そうだな・・・ははっ。」

「?・・・ゆうちゃん、笑い病?」

「んな病気あるかよ・・・。」


笑いながら俺は車から荷物を下ろした。

彩が準備した物だ。


「どこに運ぶんだ?」

「おじさんに頼まれた部屋。」

「俺は知らないだろう?」

「あ、そっか。こっちだよ。」


先頭を切って歩き始めた彩についていくようにして俺も歩き始める。


「すみません、お邪魔させていただきます。」


そう東郷に言うと、東郷は俺の真横を歩き始めた。


「君は・・・九条組若頭の九条雄介くんかい?」

「!!・・・俺を知ってるんですか?」

「知ってるも何も・・・君は有名人だからいろいろ噂は入ってきてるんだよ。まさか彩ちゃんと繋がってるとは思ってなかったけど・・・。」

「あー・・・昔馴染みなんですよ。彩が生まれた時から知ってるんです。」


彩が病院から初めて家に来た日も知ってるし、ハイハイしてるのも見てきた。

初めて言葉を喋ったときも聞いてたし、彩が絵に目覚めた時も・・・もちろん知ってるのだ。


「前に彩ちゃんが君のことを『私に彩(いろ)をくれた人』って言ってたけど・・・どういう意味か教えてくれないかい?彩ちゃんの絵の根元のような気がするんだよ。」

「彩(いろ)ですか?ちょっと覚えがないんですけど・・・」


一体何の話かわからなかった。

彩が絵を描き始めたのは3歳くらいのときからなことは覚えてるけど、その時から上手かったことくらいしかわからないのだ。

俺の記憶も曖昧になってきてそうだ。


「そうか・・・わからないか・・・。」

「すみません。」

「いや、いいんだよ。彩ちゃんが大事に想ってる人だし、いつでもうちに来ていいよ。私としても九条組と繋がりができるのは面白いしね。」

「おも・・・!?」

「冷酷冷徹と言われてるのをよく聞くけど、誰よりも優しそうじゃないか。まぁ、彩ちゃんにだけかもしれないけどね。」

「!!」


年の功は侮れない。

洞察力も観察力も経験に比例して伸びるものだからか、東郷は『俺』を見抜いてるようだった。


(これは敵に回したくないな・・・。)


そんなことを考えながら家の中を歩いてると、彩が一つの部屋に入っていくのがわかった。

それに続いて入ると、彩は一つの壁をじっと見つめていたのだ。

おそらくあの壁に絵を描くことになってるのだろう。


「彩、ここに荷物置いとくからな?」

「うん。」


荷物を置くと、彩は中から接着剤をいくつか取り出した。

そして作った花びらも出し、それらを壁に貼り付け始めたのだ。


(なるほど・・・貼り付けて絵にするつもりなのか。)


彩が何をしようと思ってたのかを理解した俺だったけど、一つ気になることも出てきた。

それは・・・


「足りるのか?」


そう、問題は持ってきた花びらの数だ。

壁は上にも横にもデカい。

花びらの大きさと数から考えたらとてもじゃないけど『足りる』とは思えなかったのだ。


「足りないよ?今日は壁の大きさと花びらの大きさを知りたかったの。あと、くっつくかどうか。」


彩は壁に付けた花びらを指でちょっと押してみた。

すると花びらは動くことなくしっかり壁にくっついていたのだ。


「あとは・・・。」


彩は茶色い枝のようなものも取り出し、壁に付けた。

それは木の幹だったようで、いくつか横並びにつけたのだ。


「空間が開きすぎじゃないか?」


茶色い枝のようなものの間に壁の色が見えてしまっていた。

それはあまりにも粗末すぎる幹になってしまう。


「ここはこれがいいかなって。」


そう言って彩は荷物の中から白い粘土を取り出した。

茶色い絵具を足してねり、それを枝の間に埋めていったのだ。

急に木の感じが増してくる光景に、思わずため息が漏れる。


「すごいな。」


今日は『感じ』だけ掴みたかったのか、彩は部屋の後ろに立って壁を見たり、端から見たりしてる。

その目は芸術家そのものだ。


「ゆうちゃん、帰ろー?」


満足したのか彩は荷物をまとめ始めた。


「もういいのか?」

「うん。あとどれくらいいるのか分かったから、今日はもういいー。おじさん、月初めの土曜日、迎えに来てね。」

「了解、彩ちゃん。」


まとめた荷物を持とうとする彩から荷物を奪い取り、俺たちは東郷の家を後にした。

約束通り、デートしながら帰路につく。


「あんなデカい壁に何描くんだ?」


車を運転しながらそう聞いた俺。

とりあえず桜の木を描くことはわかったけど、それだけじゃなさそうな気がしたのだ。


「春と夏と秋と冬、描くのー。」

「春夏秋冬?あの壁一面に?」

「そうっ。」

「へぇー・・・。」


一体どんな作品になるのかと思いつつ、俺は今考えてることを彩に話していった。


「・・彩、個展とか興味ないか?」

「個展?自分の作品を展示するやつ?」

「そう。彩ならきっと有名になると思う。」


東郷が目をつけてる時点で彩は金の卵なのだろう。

今はまだ大学に通ってる学生だけど、卒業と同時に画家としての活動が望ましそうだ。


「うーん・・・おじさんの作品が終わらないとわからない。」

「まぁ、二つのことを同時に考えられねー性格だからな、彩は。ちょっと気にかけてるくらいでいいよ。」

「うん。」


できれば彩のデビューは俺が飾りたいところ。

東郷にこの役目を持っていかれないためにも計画だけは進めておきたいのだ。


「今日、ゆうちゃん家に泊っていい?トオルくんのご飯、食べたいっ。」

「トオルのメシ?いいよ?食って帰ろうかと思ってたけど家で晩飯にするか。」

「うんっ。」

「じゃあそれまでデートだけどどこか行きたいとこは?」

「うーん・・・あ!植物園!」

「植物園か。よし。」


俺は車を植物園に向けて走らせた。

助手席にいる彩はいつも通り、窓の外を眺めてる。


「そう言えば彩って『自然』の絵を描くのが好きだよな。うちの中庭でも落ち葉使って風景描いてたし・・。」


気が付けば『自然関連』の絵をよく見ていたことを思い出した。

まだ俺が引っ越す前も、彩は絵を描いてはよく見せに来てくれていたのだ。


「?・・だってゆうちゃん、私が描く風景画が好きでしょ?昔言ってたじゃない。」

「え・・・?」

「私が幼稚園の時、ゆうちゃんに絵を見せた時あったでしょ?」

「いや、お前の絵は山ほど見てきたからどれかわからないけど・・・」

「あの時、ゆうちゃんがすごく喜んでくれて、私の絵に彩(いろ)が乗ったの。」


彩が言うには、俺がものすごく褒めた絵があるらしく、その瞬間、自分の絵の色が違って見えたそうだ。

単なる平面の絵のハズなのに、息をしてまるで生きてるかのように見えたらしい。


「・・・あ、もしかしてその絵のあと、満開の桜の絵を描いた?なんか彩の絵が変わった瞬間があったのは覚えてる。」


彩の絵に急に動きができて目を奪われたのだ。


「むぅ・・。同じ絵だもん。」


その言葉を聞いて俺は驚いた。

あまり覚えてはいないけど、『同じ絵』という認識はなかったのだ。


「え!?同じ!?」


彩を見ると明らかに拗ねたような表情を漏らしてる。

その顔もまたいい・・・じゃなくて、拗ねさせると厄介だから機嫌を取りに行く。


「あっ・・俺、取ってあるよ!?彩が昔描いた絵たち!」


そういえば取ってあったことを思い出した俺は彩にそう告げた。

確かクローゼットの奥にしまってある。


「え?あるの?」

「あるある。ちょっと探さなきゃだけど、あるよ。」


捨てた記憶はない。

だから探せば出てくるハズだ。


「!!・・・見たい!」

「え?あ、じゃあ一緒に探す?」

「うんっ!」

「じゃあ植物園の後な?何か見たいのあるんだろ?」


見たいものがあるから『植物園』と口にしたハズ。

そう聞くと彩は思い出したような顔を見せた。


「は!!見たいのある!」

「そっちが先な?」


俺は彩を植物園に連れて行き、その後一緒に探し物をするために帰路についたのだった。





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