溺愛モードな警察官彼氏はチョコレートより甘い!?

すずなり。

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束の間のデート・・・?

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ーーーーー



「おかしいな・・・。もう0時近くになるのに来間さんが通らない。」


ほぼ毎日同じ時間に帰って来る来間さんを出迎えるために交番前に立ってるけど、今日はまだ通ってないのだ。

いつも遅いのに更に遅いとか、不安になってくる。


「もっと早い時間に通ったとか?」


それなら事務仕事をしていて気づかなかったかもしれない。


「・・・。」


気になった俺は三橋さんに交番をお願いし、彼女のアパートに向かうことにした。

歩いていき、アパートの電気がついてるかどうかを確かめる。

でも・・・


「ついてない・・・。」


裏から見ても彼女の部屋の電気はついてなかったのだ。


「まだ仕事してるとか・・・?」


気になって仕方ない俺は交番に戻り、前に見せてもらった領収書の店名から住所を割り出した。

彼女がまだ家に帰ってないことを三橋さんに伝えると、『確認しに行こう』という話になり、二人で来間さんの仕事場に向かう。


「いつだっけ?来間さんのお店の店頭販売。」

「今週の土日だったと思います。」

「今日は3日前か。最後のチェックとかでまだ仕事してそうだねぇ、彼女、真面目だから。」

「そうですね・・・。」


自分の仕事に誠心誠意向き合ってることは、普段を見て知っていた。

相談事を持ち掛けてきたのは2回ほどだけど、どれも真剣で・・・それでいて俺たちの意見に素直に耳を傾けていたのだ。


「で?あれから結構時間が経ってると思うけど・・・何かしら進展はあった?」


歩きながらそう聞いてきた三橋さん。


「進展って・・・何もないですよ。ほぼ毎日顔を見るくらいです。」


一警察官が私情で声をかけるわけにはいかない。

だから『立番』をして顔を見るくらいしかできないのだ。


「もうちょっと砕けてもいいと思うけどなぁ。」

「砕けてもって・・・三橋さんが砕けすぎでは?」


三橋さんはよく近所の人たちと世間話をしてる。

どれもこれもあまり仕事に役立たそうにないけど、笑顔で聞いてることが多いのだ。


「情報ってどこからやってくるかわからないからね。人から話を聞くのが一番早いんだよ。」

「・・・そうですね。」


そんな話をしてるうちに俺たちは来間さんの仕事場に辿り着いた。

工場なだけあって窓なんてなく、入り口らしき勝手口に足を向ける。


「すみませーん!来間さん、いますかー?」


三橋さんが声をかけると、中からバタバタと走って来る音が聞こえてきた。

この慌てようは・・・きっと来間さんだ。


「はっ・・・はいっ・・・!」


ガチャ・・・!と、扉を開けたのは予想通り来間さん。

仕事をしていたのか調理をするような真っ白い服を身に纏い、バンダナキャップで髪の毛を全部しまいこんでいた。

おでこが全開のスタイルに少し大人びて見える上に、顔のパーツがはっきりしていて思わず視線を反らしてしまう。


「ごめんね?まだ交番の前を通らないから心配で見に来ちゃったんだよ。もう帰るなら家まで送るよ?」


三橋さんはいつもの笑顔で来間さんに聞いた。


「あ・・・今日はもう泊まろうかと思ってまして・・・・」

「『泊まる』?泊まれるような部屋あるの?」

「いや・・・椅子で・・・?」

「・・・。」


泊まれるような部屋は無いと判断した俺たちだったけど、これは個人の自由の域だ。

『泊まる』というなら強制的に家に帰すわけにはいかないし、『帰る』と言うなら送ることもできる。


「うーん・・・一度家に帰るのをおススメしたいところだけど・・・仕事したいのかな?」


三橋さんの問いに、来間さんは首を縦に振った。


「『帰る』なら僕たちが家まで送るよ?抑止力にもなるし。」

「『抑止力』?」

「あぁ、こっちの話。どうする?」


来間さんは少し悩むような仕草を見せたけど、すぐに顔を上げてバンダナキャップを脱いだ。


「帰ります。ここにいたいですけど、いたらずっと仕事してしまいますので・・・。」

「うん。じゃあここで待ってるから用意してきてね?」

「はい。」


彼女は工場の中に戻っていき、少ししてから荷物を持って戻ってきた。

扉の鍵を閉め、俺たちに挟まれる形で帰路につく。


「えっと・・すみません、ご心配おかけしまして・・・」


申し訳なさそうな顔で俺たちを見上げる来間さん。

俺と三橋さんは口裏を合わせていないのに同じ言葉を口にした。


「全然?」

「全然大丈夫。」

「!!・・・ふふ。ありがとうございます。道としては慣れてるんですけど、やっぱり不安になる時もあるので・・・。」


合わせてくるような足音が聞こえると怖い感じがすると教えてくれた彼女。

その『合わせるような足音』は、俺と三橋さんには若干の心当たりがあったのだ。


「基本的には常駐するようにしてるから、何かあったら駆け込んで来るんだよ?」


三橋さんの言葉に、来間さんは安心したような笑みをこぼした。


「はい。ありがとうございます。お二人が近くにいると思うと安心です。」

「それはよかった。」


二人の会話と彼女の笑みを見ながらも、俺は背後の気配が気になっていた。

さっき来間さんの仕事場の近くにあった気配が、ずっとついてきてるのだ。


(単なる偶然だったらいいんだけど・・・。)


そんなことを考えてると、ふと二人の会話が耳に入ってきたのだ。


「来間さんの好きなタイプってどんな人?」

「私ですか?えーと・・・あまり考えたことないですけど・・・」

「『考えたことない』?彼氏とかいなかった?」

「いっ・・いません!いません!お店のことで必死だったんで・・・」

「あぁ、なるほど。じゃあどんな異性が好みかな?優しい人とか、年上年下とか?」

「あー・・・そうですね・・・。うーん・・・」

「逆を考えると楽かもよ?『こんな人は嫌だ』とか。」


話に入りたいところだけど彼女の答えが気になりすぎて、俺は何も言えないでいた。

『こんな人は嫌だ』の中に俺が当てはまらないことを願う。


「嫌な人・・・そうですね、嘘をつく人とかは苦手ですかね。」


その言葉を聞いて、俺は内心胸をなでおろした。

嘘やごまかし、言い訳なんかは嫌いなのだ。


「他は?」

「他・・うーん・・・」

「言い方変えようか、もし誰かに『付き合って欲しい』って言われたらどうする?受ける?」

「えっ・・・」


来間さんはまた考えるようにして下を向いた。

どう答えるのかまた気になってると、彼女は真っ直ぐ三橋さんを見つめて答えたのだ。


「心を許してる人だったら・・・お受けするかもしれません。でもその時にならないとわからないですね。・・・とういうか、私にそんな話は来ないと思いますし?」

「ははっ、案外すぐに来るかもよ?」

「?」


三橋さんの言葉の意味がわからない彼女は俺と三橋さんを交互に見て悩んでいた。

三橋さんの言葉の意味が分かってる俺はひやひやして仕方ない状態で彼女を家まで送り届けたのだった。








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