お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。

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幼い頃3。

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鈴(今・・・なんて・・・?)




施設長の言葉を自分の中で巻き戻す。



『あなたの家族が迎えに来たのよ!』




鈴「--っ!!お母さん!?」




笑顔で私を探しにきた施設長だったけど、その笑顔は途端に曇っていった。




施設長「あー・・・『お母さん』じゃないの。あなたのご家族にあたる人よ?」

鈴「・・・家族?」




施設長は私の背中を押して、面談室に連れて行った。




コンコン・・・ガチャ・・・




施設長「お待たせしました、朝比奈さん。」

鈴(朝比奈って・・・私の苗字と同じ・・・。)





中に入ると、紳士な感じのおじさんが1人、椅子に座っていた。




朝比奈 光一「キミが・・・鈴・・ちゃん?」




目を見開きながら私を見てる。




鈴「あの・・?」

施設長「鈴ちゃん、座って?」

鈴「あ・・はい。」




施設長に椅子を引かれて、私は席についた。

顔を上げて、目の前に座ってるおじさんの顔を見る。




鈴(泣いてる・・?)



目に涙を溜めてるように見える表情。

悲しい・・・っていうより、私じゃない誰かを見てるような・・・。




朝比奈 光一「僕は朝比奈 光一。キミの・・・お父さんだ。」

鈴「・・・・お父さん?」




突然のことに何を言ってるのか理解できなかった私は、隣に座ってる施設長の顔を見た。

施設長は首を縦に振ってる。




鈴「私、お母さんを待ってるんですけど・・・。」




『お父さん』の存在は聞かされた記憶がない。

死んでしまってるのか、生きてるのかも知らなかった。



朝比奈 光一「うん。お母さんに会いに行く?」

鈴「・・・会えるんですか!?」



優しい眼差して見てるおじさん。

隣に座ってる施設長の顔をみると、施設長は顔を伏せていた。



鈴「?」

朝比奈 光一「施設長、3時間ほど外出してもいいですか?ちゃんと送りますので。」

施設長「・・・傷つけないでくださいね。」

朝比奈 光一「重々承知しております。・・・行こうか、鈴ちゃん。」




施設長が『いい』って言ったから、変な人ではないと思い、私はおじさんについて行った。

車に乗せられ、お母さんと歩いた坂道を下って行く。




朝比奈 光一「鈴ちゃんは・・・お母さん好きかな?」

鈴「・・・・はい。ずっと待ってるんです。」

朝比奈 光一「『お母さん』以外の家族の話って覚えてる?」

鈴「いえ・・・。」





時々お母さんの話をしては無言になる。

そんなことを繰り返して1時間。

着いた場所は・・・・お墓だった。




鈴「お墓・・・?」

朝比奈 光一「うん。この先にいるよ?」



私はおじさんの後ろをついて歩いた。

広い広い墓地。

だだっ広い芝生の一角でおじさんは足を止めた。




朝比奈 光一「・・・・ここだよ。」

鈴「?」

朝比奈 光一「お母さんは・・・ここで眠ってる。」

鈴「眠ってるって・・・・。」




お墓には『朝比奈 鍾子』って書いてあった。

日付は今から12年前。

私を施設に預けてすぐだ。




朝比奈 光一「お母さんは心臓に悪いとこがあってね、治すために手術したんだけど・・・治らなかったんだよ。」

鈴「治らなかった・・・・?」

朝比奈 光一「そう。・・・突然『亡くなってる』なんて言われても困るよね?」

鈴「いえ・・・。」




『いえ』・・・なんて言ったけど、よくわからなかった。

『死んでる』なんて言われても、もう12年も経ってる。

私の記憶も薄れてるし、涙も出なかった。

心の中で・・こうなってることをわかってたのかもしれない。




朝比奈 光一「・・・そろそろ戻ろうか。施設長が待ってる。鈴ちゃんの引き取りの話もしたいし。」

鈴「引き取り・・・。」




私はまた、車に乗せられ、来た道を戻っていった。

車の中ではおじさんが『私を引き取る』話をいていたけど、イマイチ頭に入って来なかった。










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