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大きな声を聞いたタウさんと私は急いでお城の中に入った。
すると城下町で露店を開いてるおじさんが血相を変えてお城に飛び込んできていたのだ。
「何があった・・!?」
近くにいたワズンさんが声をかけると、おじさんはワズンさんの袖をぎゅっと握りしめた。
「星に近いところまでいけるようにって毎年立てるやぐらが崩れたんだ・・・!」
「なんだって!?」
「下敷きになったやつらがいる!助けてくれ・・!!」
その言葉が聞こえた騎士団の人たちは、一斉に浮かび上がった。
そしてみんな外に向かって飛んでいく。
「俺も行ってくる・・!」
そう言ってタウさんも飛んで行ってしまった。
「下敷きになった人がいるって言ってたけど・・・ケガしてるよね・・・?」
残された私は、どれくらいの事故か想像がついてなかった。
でも下敷きになるっていうくらいだから、もし・・命にかかわるようなケガだったら・・・・
「治せるのは私しかいない・・・?」
そう考えたら心臓がどくどくとうるさく鳴り始めた。
深刻なケガを治せる『ヒール』を使えるのは私だけ。
もしヒールを使うと私が救い人なことがみんなにバレしまう。
バレたあとはどうなるのか想像できなくて、二の足を踏んでしまう。
「でも・・誰かが死んじゃうことに比べたら私一人がどうにかなるほうがいい。」
疎外されるなら一人で暮らせばいい。
珍しいものとして扱われそうなら逃げればいい。
そう考えた。
「よし。」
私は自分の手で両頬をぱんぱんっと叩いた。
そして前を向き、城下町に向かって走り出した。
ーーーーー
「酷い・・・」
城下町に足を踏み入れると戦場のような光景が広がっていた。
崩れたというやぐらに使われていた木は辺りに散乱し、砂ぼこりが舞い上がってしまってる。
ケガをしてるのかいろんなところでしゃがみ込んだり倒れてる人もいて、騎士団の人たちが一人一人に声をかけて安全な場所に連れて行ってるのが見えた。
「誰かっ・・助け・・て・・・っ。」
そう微かに聞こえた声に、私は辺りを見回した。
砂ぼこりが上がってて視界が悪い。
「どこですかっ・・!?」
砂を吸わないように腕を口にあてながら歩いていくと、露店の中から手が出てるのが見えた。
誰かが地面に倒れ込んでそうだ。
「!!・・・大丈夫ですか!?」
そう言って駆け寄ると、中で女の人が倒れていた。
反対の手で足を押さえていて、側に大きな鍋が転がってる。
地面が濡れてることもあって、おそらく・・やぐらが倒れた衝撃でお湯をかぶってしまったみたいだ。
両足が赤くなっていて、水膨れができてしまってる。
「いたいっ・・・!たすけて・・・っ。」
女の人が私の手をぎゅっと掴みながらそう言ったとき、騎士団の人が駆け寄ってきてくれたのだ。
「大丈夫か!?」
「しっかりしろ!!すぐ助けてやるから・・!」
そう言って騎士団の人がお店の中に入った時、やけどが目に入ったようで動きが止まった。
二人して気まずそうに目を見合わせてる。
「これは・・・」
「もう助からないんじゃ・・・」
「!?」
二人はどうしたらいいのか悩んでるようで、じっと女の人を見つめていた。
「助からないってどういうことですか・・・!?」
声を荒げながら聞くと、二人はやけどを指さした。
「ここまでやけどが酷いと助からないんだよ。」
「片足くらいなら落とせばまだ生きれるかもしれないけど、両足となると生きるのは難しい。ならこのまま・・・・」
その言葉を聞いて、私は女の人の足元に向かった。
騎士団の人たちを手で押しのけ、その場にしゃがみ込む。
「おいっ・・!何するんだ!」
「何もしないなら放っておいてください。」
そう言って私は女の人の足に右手をかざした。
「・・お願い、きれいに治って?熱で失った細かい神経まで全部・・・お願い・・・。」
そう願いを込めながら、私にしかできない魔法をかけた。
「ヒール。」
その瞬間、女の人の両足が金色に輝き始めた。
初めての広範囲のヒール魔法に、上手くできるか不安に思っていたけど光はものの数秒で収束していった。
そして女の人の両足は、おそらく元通りのきれいな足になったのだ。
「よかった・・・。」
安堵の笑みをこぼすと、女の人は驚いた顔で自分の足を触っていた。
「痛いところ、ないですか?」
「は・・・はい・・・!ないです!ありがとうございます!!」
嬉しそうに涙をこぼしながら喜んでくれた女の人。
私は騎士団の人たちに視線を向けた。
「ケガした人のところに連れて行ってください!私が治します!」
「はっ・・はいっ!!」
騎士団の人たちに案内してもらい、着いたのは一軒のお店だった。
中の机たちを全て寄せて床にけが人が寝かされていたのだ。
血を流してる人もいれば、足がおかしな方向に曲がってる人もいる。
壁にもたれて顔色が悪い人もいて、みんな深刻なケガをしてそうだ。
(症状がわかる人はいいけど、どこがケガしてるのかわからない人ってちゃんと治るのかな・・・)
そんな不安を抱えながら、私はすぐ近くにいた男の人に声をかけた。
「どこをケガされたんですか?」
体を横向きにしていたこの男の人は背中を丸めていた。
苦しそうに顔を歪めて短い息を繰り返してる。
「む・・むね・・・・」
「胸?ちょっと見てもいいですか?」
そう言って服を少し開けてみた。
でもケガらしきものはどこにもない。
「外にないってことは・・・内臓だよね・・・・。」
早速出会ってしまった外傷のない人。
私はイチかバチか、この人の胸に右手をあてた。
「ケガしてるとこ、全部治して・・・お願い。」
そう祈りながら魔法をかける。
「・・・ヒール。」
その瞬間、私の手から金色の光があふれ出た。
その光はこの男の人を包み込んでいき、数秒時間を経て収束していったのだ。
そして男の人は痛みが消えたのか、ガバッと体を起こした。
「え・・?え?」
「もう痛みはないですよね?」
「あ・・あぁ。」
「よかったですー。」
上手くいってよかったと内心思いながら、私は隣にいる人に声をかけた。
「ケガ、治していきますねー?」
右手をかざし、『ケガが全て治るよう』に願いを込めながらヒール魔法をかけていく。
場所がわからないなら『全て』を願えばいいことに気がついたのだ。
(こうすれば目に見えてるケガ以外も治せるだろうし・・・。)
そう考えて、私はこの部屋にいる人たちに順番にヒールをかけて行った。
ヒールをかけられてケガが治った人たちはみんな『何が起こったのかわからない』という表情でお店から出ていく。
それと入れ替わりに新しいケガ人が中に運ばれてきていた。
「痛いとこないですか?」
「もう大丈夫ですねー。」
「痛いところはないですね?」
そんな言葉ばかりかけ続けていると、私をここに案内してくれた騎士団の人がじっと私を見てることに気がついた。
何か用があるのかと思って視線を合わせたとき、その騎士団の人が大きな声で叫んだのだ。
「!?・・・救い人様・・・!?」
「・・・。」
これだけヒールをかけ続けていたらバレるのは時間の問題だった。
(ケガ人を全員ヒールかけ終わったら出て行こう。)
そう思いながら次の人にヒールをかけようと手を出したその時、私の手をがしっと掴んだ人がいた。
「?」
何かと思って視線を上げると、そこには汗をびっしょりかいたタウさんがいたのだ。
「え・・?タウさん・・?」
「何をしてるんだ・・・!!」
「え・・・。」
「ヒールなんか使ったらバレるだろう・・・!?」
「・・・。」
腕で汗を拭うタウさんは、きっと倒れたやぐらの下敷きになっていた人たちを助けていたのだろう。
服は汚れ、頭は砂ぼこりをかぶっていた。
滴るくらいの汗をかきながら救助をしてる人がいるのに、ヒールが使える私が何もしないなんてこと、できるわけがなかったのだ。
「・・・いいんです。」
「は?いいって・・・」
「私の魔法で誰かが助かるならそれでいい。死んでしまったら・・・次はないし、もう会えなくなるんだから・・・。」
私には二度目の人生がやってきたけど、それはたぶん滅多にどころじゃないくらい滅多にないものだろう。
ハマルおばぁちゃんに会えることももう二度とない経験から、誰も悲しい思いをして欲しくなかったのだ。
「ステラ・・・。」
「私、森に帰ります。ケガをしてる人、全員ヒールかけたら・・・送ってもらえますか?」
そう聞くとタウさんは驚いた顔をして私を見ていた。
そして何か悩むように天を仰ぎ、床を見つめたりを何度も繰り返してる。
「はぁー・・・本気でか?」
「はい。」
「俺としては帰って欲しくないんだが・・・・」
そう言われ、私はこの国に伝わる伝記を思い出した。
救い人が定住する国は栄える的な意味合いのことを。
(まぁそうだよね、救い人がいたほうがいいって思うよね・・・。)
『私自身』を必要とされてないことが少し悲しかったけどそれは仕方ないことだ。
誰だって自国の繁栄は願いたい。
「じゃあヒールかけていきますね。」
そう言って私は順番にヒールをかけていった。
一人、二人、三人とかけていき、気がつけば最初の人を含めて100人は超えていた。
汗一つ垂らさずにかけていくと、最後の一人が運ばれてきたのだ。
「救い人様・・!最後の者です・・!」
一番最後に助け出された人は男の人だった。
頭から血を出していて、微かに呼吸をしてる状態だ。
このままだったら数分で死んでしまいそうな感じだった。
「すぐに治しますからね、がんばってくださいね。」
そう言って私は願いを込めながら魔法をかけた。
「ヒール。」
手から溢れ出た金色の光は男の人を包みこんでいく。
流れ出ていた血は止まり、微かだった呼吸はしっかりしていく。
そして光が収束すると同時にこの男の人はパッと目を開け、飛び起きた。
「うわっ・・!・・・あれ?俺・・死んだ・・・?」
「ふふ、生きてますよ?痛いところとかないですか?」
「え?・・・あ、あぁ・・ないけど・・・」
「そうですか、よかったですー。」
最後の一人のヒールが終わり、ほっとした私は立ち上がろうとして足にぐっと力を入れた。
でもなぜだか上手く力が入らず、その場に座り込んでしまったのだ。
「あれ・・?」
安堵から力が入らないのかと思い、もう一度足に力を入れた。
「よいしょっ・・・。」
気合を入れて立ち上がったとき、目に見える世界がぐるんっと回ったような感覚に襲われた。
「え・・・?」
天井がどこなのか、前に何があるのかさっぱりわからない。
見えてるものがぐるぐると回って見えるのだ。
「ステラ!?大丈夫か!?」
「う・・ぁ・・・・」
「ステラっ・・・!?」
タウさんの声が聞こえる中、私の視界は黒く染まっていってしまった。
深い眠りにつきたくなり、そのまま私は意識を手放した・・・・。
すると城下町で露店を開いてるおじさんが血相を変えてお城に飛び込んできていたのだ。
「何があった・・!?」
近くにいたワズンさんが声をかけると、おじさんはワズンさんの袖をぎゅっと握りしめた。
「星に近いところまでいけるようにって毎年立てるやぐらが崩れたんだ・・・!」
「なんだって!?」
「下敷きになったやつらがいる!助けてくれ・・!!」
その言葉が聞こえた騎士団の人たちは、一斉に浮かび上がった。
そしてみんな外に向かって飛んでいく。
「俺も行ってくる・・!」
そう言ってタウさんも飛んで行ってしまった。
「下敷きになった人がいるって言ってたけど・・・ケガしてるよね・・・?」
残された私は、どれくらいの事故か想像がついてなかった。
でも下敷きになるっていうくらいだから、もし・・命にかかわるようなケガだったら・・・・
「治せるのは私しかいない・・・?」
そう考えたら心臓がどくどくとうるさく鳴り始めた。
深刻なケガを治せる『ヒール』を使えるのは私だけ。
もしヒールを使うと私が救い人なことがみんなにバレしまう。
バレたあとはどうなるのか想像できなくて、二の足を踏んでしまう。
「でも・・誰かが死んじゃうことに比べたら私一人がどうにかなるほうがいい。」
疎外されるなら一人で暮らせばいい。
珍しいものとして扱われそうなら逃げればいい。
そう考えた。
「よし。」
私は自分の手で両頬をぱんぱんっと叩いた。
そして前を向き、城下町に向かって走り出した。
ーーーーー
「酷い・・・」
城下町に足を踏み入れると戦場のような光景が広がっていた。
崩れたというやぐらに使われていた木は辺りに散乱し、砂ぼこりが舞い上がってしまってる。
ケガをしてるのかいろんなところでしゃがみ込んだり倒れてる人もいて、騎士団の人たちが一人一人に声をかけて安全な場所に連れて行ってるのが見えた。
「誰かっ・・助け・・て・・・っ。」
そう微かに聞こえた声に、私は辺りを見回した。
砂ぼこりが上がってて視界が悪い。
「どこですかっ・・!?」
砂を吸わないように腕を口にあてながら歩いていくと、露店の中から手が出てるのが見えた。
誰かが地面に倒れ込んでそうだ。
「!!・・・大丈夫ですか!?」
そう言って駆け寄ると、中で女の人が倒れていた。
反対の手で足を押さえていて、側に大きな鍋が転がってる。
地面が濡れてることもあって、おそらく・・やぐらが倒れた衝撃でお湯をかぶってしまったみたいだ。
両足が赤くなっていて、水膨れができてしまってる。
「いたいっ・・・!たすけて・・・っ。」
女の人が私の手をぎゅっと掴みながらそう言ったとき、騎士団の人が駆け寄ってきてくれたのだ。
「大丈夫か!?」
「しっかりしろ!!すぐ助けてやるから・・!」
そう言って騎士団の人がお店の中に入った時、やけどが目に入ったようで動きが止まった。
二人して気まずそうに目を見合わせてる。
「これは・・・」
「もう助からないんじゃ・・・」
「!?」
二人はどうしたらいいのか悩んでるようで、じっと女の人を見つめていた。
「助からないってどういうことですか・・・!?」
声を荒げながら聞くと、二人はやけどを指さした。
「ここまでやけどが酷いと助からないんだよ。」
「片足くらいなら落とせばまだ生きれるかもしれないけど、両足となると生きるのは難しい。ならこのまま・・・・」
その言葉を聞いて、私は女の人の足元に向かった。
騎士団の人たちを手で押しのけ、その場にしゃがみ込む。
「おいっ・・!何するんだ!」
「何もしないなら放っておいてください。」
そう言って私は女の人の足に右手をかざした。
「・・お願い、きれいに治って?熱で失った細かい神経まで全部・・・お願い・・・。」
そう願いを込めながら、私にしかできない魔法をかけた。
「ヒール。」
その瞬間、女の人の両足が金色に輝き始めた。
初めての広範囲のヒール魔法に、上手くできるか不安に思っていたけど光はものの数秒で収束していった。
そして女の人の両足は、おそらく元通りのきれいな足になったのだ。
「よかった・・・。」
安堵の笑みをこぼすと、女の人は驚いた顔で自分の足を触っていた。
「痛いところ、ないですか?」
「は・・・はい・・・!ないです!ありがとうございます!!」
嬉しそうに涙をこぼしながら喜んでくれた女の人。
私は騎士団の人たちに視線を向けた。
「ケガした人のところに連れて行ってください!私が治します!」
「はっ・・はいっ!!」
騎士団の人たちに案内してもらい、着いたのは一軒のお店だった。
中の机たちを全て寄せて床にけが人が寝かされていたのだ。
血を流してる人もいれば、足がおかしな方向に曲がってる人もいる。
壁にもたれて顔色が悪い人もいて、みんな深刻なケガをしてそうだ。
(症状がわかる人はいいけど、どこがケガしてるのかわからない人ってちゃんと治るのかな・・・)
そんな不安を抱えながら、私はすぐ近くにいた男の人に声をかけた。
「どこをケガされたんですか?」
体を横向きにしていたこの男の人は背中を丸めていた。
苦しそうに顔を歪めて短い息を繰り返してる。
「む・・むね・・・・」
「胸?ちょっと見てもいいですか?」
そう言って服を少し開けてみた。
でもケガらしきものはどこにもない。
「外にないってことは・・・内臓だよね・・・・。」
早速出会ってしまった外傷のない人。
私はイチかバチか、この人の胸に右手をあてた。
「ケガしてるとこ、全部治して・・・お願い。」
そう祈りながら魔法をかける。
「・・・ヒール。」
その瞬間、私の手から金色の光があふれ出た。
その光はこの男の人を包み込んでいき、数秒時間を経て収束していったのだ。
そして男の人は痛みが消えたのか、ガバッと体を起こした。
「え・・?え?」
「もう痛みはないですよね?」
「あ・・あぁ。」
「よかったですー。」
上手くいってよかったと内心思いながら、私は隣にいる人に声をかけた。
「ケガ、治していきますねー?」
右手をかざし、『ケガが全て治るよう』に願いを込めながらヒール魔法をかけていく。
場所がわからないなら『全て』を願えばいいことに気がついたのだ。
(こうすれば目に見えてるケガ以外も治せるだろうし・・・。)
そう考えて、私はこの部屋にいる人たちに順番にヒールをかけて行った。
ヒールをかけられてケガが治った人たちはみんな『何が起こったのかわからない』という表情でお店から出ていく。
それと入れ替わりに新しいケガ人が中に運ばれてきていた。
「痛いとこないですか?」
「もう大丈夫ですねー。」
「痛いところはないですね?」
そんな言葉ばかりかけ続けていると、私をここに案内してくれた騎士団の人がじっと私を見てることに気がついた。
何か用があるのかと思って視線を合わせたとき、その騎士団の人が大きな声で叫んだのだ。
「!?・・・救い人様・・・!?」
「・・・。」
これだけヒールをかけ続けていたらバレるのは時間の問題だった。
(ケガ人を全員ヒールかけ終わったら出て行こう。)
そう思いながら次の人にヒールをかけようと手を出したその時、私の手をがしっと掴んだ人がいた。
「?」
何かと思って視線を上げると、そこには汗をびっしょりかいたタウさんがいたのだ。
「え・・?タウさん・・?」
「何をしてるんだ・・・!!」
「え・・・。」
「ヒールなんか使ったらバレるだろう・・・!?」
「・・・。」
腕で汗を拭うタウさんは、きっと倒れたやぐらの下敷きになっていた人たちを助けていたのだろう。
服は汚れ、頭は砂ぼこりをかぶっていた。
滴るくらいの汗をかきながら救助をしてる人がいるのに、ヒールが使える私が何もしないなんてこと、できるわけがなかったのだ。
「・・・いいんです。」
「は?いいって・・・」
「私の魔法で誰かが助かるならそれでいい。死んでしまったら・・・次はないし、もう会えなくなるんだから・・・。」
私には二度目の人生がやってきたけど、それはたぶん滅多にどころじゃないくらい滅多にないものだろう。
ハマルおばぁちゃんに会えることももう二度とない経験から、誰も悲しい思いをして欲しくなかったのだ。
「ステラ・・・。」
「私、森に帰ります。ケガをしてる人、全員ヒールかけたら・・・送ってもらえますか?」
そう聞くとタウさんは驚いた顔をして私を見ていた。
そして何か悩むように天を仰ぎ、床を見つめたりを何度も繰り返してる。
「はぁー・・・本気でか?」
「はい。」
「俺としては帰って欲しくないんだが・・・・」
そう言われ、私はこの国に伝わる伝記を思い出した。
救い人が定住する国は栄える的な意味合いのことを。
(まぁそうだよね、救い人がいたほうがいいって思うよね・・・。)
『私自身』を必要とされてないことが少し悲しかったけどそれは仕方ないことだ。
誰だって自国の繁栄は願いたい。
「じゃあヒールかけていきますね。」
そう言って私は順番にヒールをかけていった。
一人、二人、三人とかけていき、気がつけば最初の人を含めて100人は超えていた。
汗一つ垂らさずにかけていくと、最後の一人が運ばれてきたのだ。
「救い人様・・!最後の者です・・!」
一番最後に助け出された人は男の人だった。
頭から血を出していて、微かに呼吸をしてる状態だ。
このままだったら数分で死んでしまいそうな感じだった。
「すぐに治しますからね、がんばってくださいね。」
そう言って私は願いを込めながら魔法をかけた。
「ヒール。」
手から溢れ出た金色の光は男の人を包みこんでいく。
流れ出ていた血は止まり、微かだった呼吸はしっかりしていく。
そして光が収束すると同時にこの男の人はパッと目を開け、飛び起きた。
「うわっ・・!・・・あれ?俺・・死んだ・・・?」
「ふふ、生きてますよ?痛いところとかないですか?」
「え?・・・あ、あぁ・・ないけど・・・」
「そうですか、よかったですー。」
最後の一人のヒールが終わり、ほっとした私は立ち上がろうとして足にぐっと力を入れた。
でもなぜだか上手く力が入らず、その場に座り込んでしまったのだ。
「あれ・・?」
安堵から力が入らないのかと思い、もう一度足に力を入れた。
「よいしょっ・・・。」
気合を入れて立ち上がったとき、目に見える世界がぐるんっと回ったような感覚に襲われた。
「え・・・?」
天井がどこなのか、前に何があるのかさっぱりわからない。
見えてるものがぐるぐると回って見えるのだ。
「ステラ!?大丈夫か!?」
「う・・ぁ・・・・」
「ステラっ・・・!?」
タウさんの声が聞こえる中、私の視界は黒く染まっていってしまった。
深い眠りにつきたくなり、そのまま私は意識を手放した・・・・。
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