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翌日。
朝早くに目が覚めた私は、お城を出てとある場所に向かっていた。
城下町を抜け、公園のような場所を抜け、着いた場所は・・・食堂だ。
「ここしばらく来れてなかったから・・・謝らないと。」
正式なシフトはないものの、ずっと来なかったことで迷惑をかけてるのではないかと思って私はこの食堂に足を運んできた。
お城の人たちには言わずに出てきたけど、まだほとんどの人が寝てる時間だからさっさと戻れば問題ない。
「仕込みがあるからこの時間にはもう起きてるはずだけど・・・。」
そう思いながらお店の周りをぐるっと歩くと、ちょうど店の裏手で店主さんが野菜を洗ってるのが見えた。
おずおずと近づいていく。
「あの・・すみません・・・」
そう声をかけるとお店の人は視線を上げた。
私が視界に入ったのか、持ってる野菜をそのまま地面に落としてる。
「わっ・・!大丈夫ですか!?」
そう聞きながら私は落ちた野菜を拾った。
ついてしまった砂を払ってると、店主さんが私をがしっ・・!と、抱きしめてきたのだ。
「ふぁっ・・!?」
「無事だったんだね!!よかった・・・!!」
ぼろぼろと涙を流してくれる店主さんは、私が攫われたことを聞いて心配してくれていたらしい。
無事に保護されたことも聞いてたけど、自分の目で確認してないものだから不安だったようだ。
「ご心配おかけしてすみません・・・、あと、お店になかなかお手伝いに来れなくて・・」
「いいんだよ。・・・救い人だったんだろ?その金色の瞳が救い人の証だしな。」
「・・・。」
やっぱり救い人だとバレた以上、今まで通りにはならないことを感じていた私は、思わず俯いてしまった。
店主さんはそんな私に気がついたのか、よしよしと頭を撫でてくれてる。
「訳ありかなとは思ってたんだよ?」
「え?」
「何も言わなければそれでいいと思ってた。今までのステラちゃんを見てると悪いことをしたわけじゃなさそうだったから、何を言われても味方でいるつもりだったんだよ?」
「!!」
「だから・・・また来たくなったら遊びにおいで?働いてくれてもいいし、お客で来てくれてもいいし!」
そう言ってもらえ、私は目から涙が零れ落ちた。
「ほらほら、泣かない泣かない。」
「ふぇっ・・・すみませんー・・・。」
涙を拭い、何度も何度もお礼を言って私はお店の表に戻ってきた。
心に引っかかってた何かが取れたようで、気分が晴れやかだ。
「戻らないと・・・。」
もう少ししたらみんなが起きる時間になる。
それまでに戻らないとまた無駄に心配をかけてしまうのだ。
「よし。」
お城に向かって足を一歩踏み出した。
その時、誰かが私の名前を呼んだのだ。
「ステラ。」
声のしたほうを向くと、そこにはタウさんの姿があった。
「---っ!・・・タウさん・・・どうしてここに・・・」
「お前の気配が動いたから追ってきたの。・・・食堂に挨拶か?」
「ご迷惑をおかけしたので・・・謝りたくて・・・」
私はここに来た経緯をタウさんに説明した。
みんながまだ寝てる朝だったらお店の人は起きてるし、騒がれることもないと思ったことも。
「言ってくれたら護衛したのに・・・」
「いや、それは申し訳ないですよ・・・」
レイスさんやタウさんの話では、もし次にディアヘルの人たちが攻めてくるとしたら最短でも1か月は先だと聞いていた。
翌日はさすがにないと思ったのだ。
「ステラと一緒にいれるチャンスなのに?」
「~~~~っ。」
好きだと伝えてから甘々モードに入ってるタウさん。
今まで経験ないことが次々と押し寄せてきてしまい、どう反応するのが正解なのかわからず、私は俯いてしまった。
「ステラ?」
「あの・・っ・・ちょっと・・こういうのは慣れてなくてですね・・・」
誠也さんに言われたことのない言葉の羅列が昨日から続いてる。
否定されたりだとか手をあげられたりだとかの記憶しかなく、『好き』とか『一緒に』とかは言われるとくすぐったい。
「慣れたらいいんじゃない?」
「へっ・・!?」
「照れるステラもかわいいし?」
「~~~~っ!?」
「ははっ。」
どう言い返したらいいのか困ってると、タウさんはスッと手を差し出してきた。
「手、繋いで城に戻ろうか。」
そう言われ、私は差し出された手を見つめた。
ごつごつした大きな手は薄っすらケガの痕がある。
(お仕事で・・ケガとかするのかな。)
騎士団の仕事のすべてを知ってるわけじゃないけど、訓練とか調査とかで動くことが多いのだろう。
この前倒れたやぐらの事故も、崩れた木を起こしたり、ケガをした人を運んだりとか体力勝負な仕事が見て取れた。
きっと・・・多少のケガは仕方ないのかもしれない。
「痛くないですか・・・?」
タウさんの手を取ってケガを見つめると、タウさんは空いてる手で私の頭を撫でてきた。
「痛くないよ。心配してくれてありがとな。」
そう言うとタウさんは私の手をぎゅっと握った。
「ほら、祭りに備えて戻るぞ?」
「~~~っ。・・・はい。」
つながれた手にドキドキと心臓がなり始める。
私に合わせてかゆっくり歩いてくれるタウさんはすごく身長が高くて、私の視線がちょうどタウさんのお腹あたりにあった。
私の手をすっぽり包んでしまいそうなくらいの大きな手は、安心感を感じてしまう。
(好き・・・だから安心するのかな・・・。)
タウさんを見るとほっとする。
タウさんの声を聞くと安心する。
タウさんが側にいると・・・心が躍る。
そんな自分に驚きだった。
(誠也さんは・・・いたら怖かったし・・・。)
機嫌を損ねると何をするかわからなかったから、違ったドキドキ感があった。
初めての安心できる人が向けてくれる優しい笑顔は、甘いドキドキ感で胸を締め付けてくる。
「ん?」
「---っ!なっ・・なんでもないっ・・です・・。」
「そうか?・・・あ、ステラ。」
「はい?」
「夜は一緒に星を見るだろ?城から見たい?それともやぐら?」
「!!」
この国のお祭りは星になった人たちを想い出すお祭りだ。
永遠の命の象徴であるヤドリギの葉を持ち、砂になってしまった人を尊ぶ。
「タウさん、お仕事は・・・」
「夜は休み。だから一緒に見よう?」
「!!」
優しい笑顔を向けられ、私は思わず顔を逸らしてしまった。
タウさんがいないほうを見ながら、夜のことを答える。
「えと・・やぐらは人が多そうなので・・・お城がいいです・・・」
私がやぐらに行くとまた騒がれるかもしれない。
夜だったら気付かれないかもしれないけど、わからないのだ。
「わかった。じゃあ仕事終わったら部屋まで迎えにいくけど・・・夜は部屋にいるのか?」
「多分・・・?もしかしたらヌンキさんのところにいるかもしれないですけど・・・」
お城でお世話になりながらヌンキさんと仲良くさせてもらってる私は、お風呂の掃除を手伝いながらヌンキさんとお喋りしたりしていたのだ。
初めてできた同性の友達とのお喋りは楽しいものなのだ。
「あー・・じゃあとりあえず部屋に行く。いなかったら風呂だな?」
「はいっ。」
「了解。・・・じゃあまたあとでな?」
タウさんがそう言ったとき、私たちはもうお城に足を踏み入れていた。
ゆっくり手が離れていくのが寂しく感じてしまい、手をじっと見つめてしまう。
「・・・ステラ。」
「?」
名前を呼ばれて顔を上げると、タウさんは私の手をぐぃっと引っ張った。
「ひぁっ・・・!?」
タウさんはぐらっと姿勢を崩した私の体をぎゅっと抱きしめ、耳元で囁いた。
「また・・・あとでな?」
「~~~~っ!」
優しい声に私の顔が熱くなっていく。
思わず両手で顔を隠すと、タウさんは笑いながら仕事に戻っていった。
「もうやだ・・・好きって気持ちがどんどん大きくなっていくー・・・」
タウさんに気付かされた気持ちが、タウさんによって育てられていく。
それは時間をかけてではなくて急速に育てられていくものだから私の心がついていけないのだ。
「ヌンキさんのとこ行こ・・・。」
この相談をするため、私はヌンキさんのいるお風呂に足を向けたのだった。
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翌日。
朝早くに目が覚めた私は、お城を出てとある場所に向かっていた。
城下町を抜け、公園のような場所を抜け、着いた場所は・・・食堂だ。
「ここしばらく来れてなかったから・・・謝らないと。」
正式なシフトはないものの、ずっと来なかったことで迷惑をかけてるのではないかと思って私はこの食堂に足を運んできた。
お城の人たちには言わずに出てきたけど、まだほとんどの人が寝てる時間だからさっさと戻れば問題ない。
「仕込みがあるからこの時間にはもう起きてるはずだけど・・・。」
そう思いながらお店の周りをぐるっと歩くと、ちょうど店の裏手で店主さんが野菜を洗ってるのが見えた。
おずおずと近づいていく。
「あの・・すみません・・・」
そう声をかけるとお店の人は視線を上げた。
私が視界に入ったのか、持ってる野菜をそのまま地面に落としてる。
「わっ・・!大丈夫ですか!?」
そう聞きながら私は落ちた野菜を拾った。
ついてしまった砂を払ってると、店主さんが私をがしっ・・!と、抱きしめてきたのだ。
「ふぁっ・・!?」
「無事だったんだね!!よかった・・・!!」
ぼろぼろと涙を流してくれる店主さんは、私が攫われたことを聞いて心配してくれていたらしい。
無事に保護されたことも聞いてたけど、自分の目で確認してないものだから不安だったようだ。
「ご心配おかけしてすみません・・・、あと、お店になかなかお手伝いに来れなくて・・」
「いいんだよ。・・・救い人だったんだろ?その金色の瞳が救い人の証だしな。」
「・・・。」
やっぱり救い人だとバレた以上、今まで通りにはならないことを感じていた私は、思わず俯いてしまった。
店主さんはそんな私に気がついたのか、よしよしと頭を撫でてくれてる。
「訳ありかなとは思ってたんだよ?」
「え?」
「何も言わなければそれでいいと思ってた。今までのステラちゃんを見てると悪いことをしたわけじゃなさそうだったから、何を言われても味方でいるつもりだったんだよ?」
「!!」
「だから・・・また来たくなったら遊びにおいで?働いてくれてもいいし、お客で来てくれてもいいし!」
そう言ってもらえ、私は目から涙が零れ落ちた。
「ほらほら、泣かない泣かない。」
「ふぇっ・・・すみませんー・・・。」
涙を拭い、何度も何度もお礼を言って私はお店の表に戻ってきた。
心に引っかかってた何かが取れたようで、気分が晴れやかだ。
「戻らないと・・・。」
もう少ししたらみんなが起きる時間になる。
それまでに戻らないとまた無駄に心配をかけてしまうのだ。
「よし。」
お城に向かって足を一歩踏み出した。
その時、誰かが私の名前を呼んだのだ。
「ステラ。」
声のしたほうを向くと、そこにはタウさんの姿があった。
「---っ!・・・タウさん・・・どうしてここに・・・」
「お前の気配が動いたから追ってきたの。・・・食堂に挨拶か?」
「ご迷惑をおかけしたので・・・謝りたくて・・・」
私はここに来た経緯をタウさんに説明した。
みんながまだ寝てる朝だったらお店の人は起きてるし、騒がれることもないと思ったことも。
「言ってくれたら護衛したのに・・・」
「いや、それは申し訳ないですよ・・・」
レイスさんやタウさんの話では、もし次にディアヘルの人たちが攻めてくるとしたら最短でも1か月は先だと聞いていた。
翌日はさすがにないと思ったのだ。
「ステラと一緒にいれるチャンスなのに?」
「~~~~っ。」
好きだと伝えてから甘々モードに入ってるタウさん。
今まで経験ないことが次々と押し寄せてきてしまい、どう反応するのが正解なのかわからず、私は俯いてしまった。
「ステラ?」
「あの・・っ・・ちょっと・・こういうのは慣れてなくてですね・・・」
誠也さんに言われたことのない言葉の羅列が昨日から続いてる。
否定されたりだとか手をあげられたりだとかの記憶しかなく、『好き』とか『一緒に』とかは言われるとくすぐったい。
「慣れたらいいんじゃない?」
「へっ・・!?」
「照れるステラもかわいいし?」
「~~~~っ!?」
「ははっ。」
どう言い返したらいいのか困ってると、タウさんはスッと手を差し出してきた。
「手、繋いで城に戻ろうか。」
そう言われ、私は差し出された手を見つめた。
ごつごつした大きな手は薄っすらケガの痕がある。
(お仕事で・・ケガとかするのかな。)
騎士団の仕事のすべてを知ってるわけじゃないけど、訓練とか調査とかで動くことが多いのだろう。
この前倒れたやぐらの事故も、崩れた木を起こしたり、ケガをした人を運んだりとか体力勝負な仕事が見て取れた。
きっと・・・多少のケガは仕方ないのかもしれない。
「痛くないですか・・・?」
タウさんの手を取ってケガを見つめると、タウさんは空いてる手で私の頭を撫でてきた。
「痛くないよ。心配してくれてありがとな。」
そう言うとタウさんは私の手をぎゅっと握った。
「ほら、祭りに備えて戻るぞ?」
「~~~っ。・・・はい。」
つながれた手にドキドキと心臓がなり始める。
私に合わせてかゆっくり歩いてくれるタウさんはすごく身長が高くて、私の視線がちょうどタウさんのお腹あたりにあった。
私の手をすっぽり包んでしまいそうなくらいの大きな手は、安心感を感じてしまう。
(好き・・・だから安心するのかな・・・。)
タウさんを見るとほっとする。
タウさんの声を聞くと安心する。
タウさんが側にいると・・・心が躍る。
そんな自分に驚きだった。
(誠也さんは・・・いたら怖かったし・・・。)
機嫌を損ねると何をするかわからなかったから、違ったドキドキ感があった。
初めての安心できる人が向けてくれる優しい笑顔は、甘いドキドキ感で胸を締め付けてくる。
「ん?」
「---っ!なっ・・なんでもないっ・・です・・。」
「そうか?・・・あ、ステラ。」
「はい?」
「夜は一緒に星を見るだろ?城から見たい?それともやぐら?」
「!!」
この国のお祭りは星になった人たちを想い出すお祭りだ。
永遠の命の象徴であるヤドリギの葉を持ち、砂になってしまった人を尊ぶ。
「タウさん、お仕事は・・・」
「夜は休み。だから一緒に見よう?」
「!!」
優しい笑顔を向けられ、私は思わず顔を逸らしてしまった。
タウさんがいないほうを見ながら、夜のことを答える。
「えと・・やぐらは人が多そうなので・・・お城がいいです・・・」
私がやぐらに行くとまた騒がれるかもしれない。
夜だったら気付かれないかもしれないけど、わからないのだ。
「わかった。じゃあ仕事終わったら部屋まで迎えにいくけど・・・夜は部屋にいるのか?」
「多分・・・?もしかしたらヌンキさんのところにいるかもしれないですけど・・・」
お城でお世話になりながらヌンキさんと仲良くさせてもらってる私は、お風呂の掃除を手伝いながらヌンキさんとお喋りしたりしていたのだ。
初めてできた同性の友達とのお喋りは楽しいものなのだ。
「あー・・じゃあとりあえず部屋に行く。いなかったら風呂だな?」
「はいっ。」
「了解。・・・じゃあまたあとでな?」
タウさんがそう言ったとき、私たちはもうお城に足を踏み入れていた。
ゆっくり手が離れていくのが寂しく感じてしまい、手をじっと見つめてしまう。
「・・・ステラ。」
「?」
名前を呼ばれて顔を上げると、タウさんは私の手をぐぃっと引っ張った。
「ひぁっ・・・!?」
タウさんはぐらっと姿勢を崩した私の体をぎゅっと抱きしめ、耳元で囁いた。
「また・・・あとでな?」
「~~~~っ!」
優しい声に私の顔が熱くなっていく。
思わず両手で顔を隠すと、タウさんは笑いながら仕事に戻っていった。
「もうやだ・・・好きって気持ちがどんどん大きくなっていくー・・・」
タウさんに気付かされた気持ちが、タウさんによって育てられていく。
それは時間をかけてではなくて急速に育てられていくものだから私の心がついていけないのだ。
「ヌンキさんのとこ行こ・・・。」
この相談をするため、私はヌンキさんのいるお風呂に足を向けたのだった。
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