壊れたウォールマン

kuma

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第一羽 都市伝説の絵本

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 第一羽 都市伝説の絵本

 クリスマスイブの夜10時、街から全ての道から人の気配が消える。街頭の光だけが煌々と光る。

 そんな片田舎の一軒家に4人家族が住んでいる。

「良い、夜10時以降は決して外に出てはいけないよ」

 母親は、1冊の絵本を手に取ると膝の上に2人の子どもを乗せる。絵本のタイトルには『鳥と10匹のネズミ』と書いてある。

「なんで?」

 5歳になる兄が首を傾げる。一緒に座る3歳の弟も真似をして首を傾げた。すると、母親は、優しく2人の頭を撫でる。

「いい?二人ともよく聞くのよ。この絵本は、とっても大事なことが書いてあるの」

母親は絵本を開き、静かに語り出す。

_________________________________

鳥と10匹のネズミ
 
むかしむかし、ある村にネズミの家族が住んでいました。
 
この村には、不思議な習慣がありました。それは、夜10時以降には外に出てはいけないという習慣でした。
 
ある日、ネズミの一家の食料が底を尽きてしまいました。今年、10匹の子宝に恵まれたからです。
 
そこでネズミの母さんは、子どもたちにこう言いました。

「これから、母さん出かけるけれど、母さんが帰ってくるまで決してドアを開けては行けないよ。もし、母さんが帰ってきたら
 
ドアを3回ノックするからそれまでは、決して開けてはダメだからね」
 
すると、子ネズミの1匹が母さんに声をかけました。

「どうしてドアを開けてはいけないの?」

「夜になると外には恐ろしい鳥が出るからだよ」

 小ネズミたちは、母さんネズミを見送るとドアに鍵をかけました。ホーホー 外から何かの声が聞こえてきます。
 
暫くするとドアが2回ノックされました。

「お母さんよ、中に入れて」

その声は紛れもなく、母さんネズミの声でした。1匹の子ネズミは鍵を開けようとドアに近づきます。

しかし、別の子ネズミがそのネズミを遮り言いました。

「母さんはノックを3回すると言ったんだ。今のノックは2回だった」

「母さんか間違えただけだよ」
 
子ネズミの1人がドアに近づき耳を当てます。しかし、外からは、何の音もしませんでした。子ネズミたちはホッとしました。
 
すると、再び3回ノックが鳴りました。子ネズミたちは今度は、ドアの隙間から母さんの手が見えました。

「母さんだ!」
 
1匹の子ネズミがドアの鍵を開けました。するとそこには母さんを咥えた鳥が1羽立っていました。
 
それを見ると勇敢な1匹の子ネズミは、すぐさまドアを閉め、鍵を閉めました。子ネズミたちは、身を寄せ合い震えました。
 
するとまた、声が聞こえてきました。

「母さんよ、開けてくれてありがとうね」
 
今度の声は、部屋の中から響いていました。
_________________________________

 
母親は、本を閉じる。弟は、耳を塞ぎ、兄は、涙目で母親を見つめている。母は本を置くと2人の頭を撫でる。

「大丈夫よ、作り話だから。よし、もう寝なきゃね。おやすみ」
 
母親は、電気を消すと部屋から出る。ピーンポーン インターホンが鳴る。

「はーい、」

(頼んでたプレゼントかな?)
 
階段を降りると母親は、玄関のドアノブに手をかけた。
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