19 / 32
第19話
しおりを挟む
「クロエ様、ローラの現状もお伝えいたします」
両親はローラの状況も少し語ってくれた。母の姉である伯母からの手紙では、ローラは生活面までも厳しく管理されて、そのことに対して不満があったためか一度逃げ出そうと、窓から飛び降りるがその際に片脚を折ってしまった。
それから伯母からの長い説教がはじまり、とにかくローラの考え方は根本的に間違っていると、いつまでもくどくどと言い聞かした。その結果、伯母に恐怖心を覚え大声で叫ばれた命令には反射的に従うようになる。
「逃げようなんて考えないことね。最もその足では無理でしょうけど」
これまで伯母はローラに、どちらかと言えば柔らかい口調で接していたので、ローラは伯母の家での生活は安心できる場所を獲得したと軽く考えていた。
ところが徹底的にしごかれる生活を送ることになって、落ち込んだ表情になりがちでした。伯母は情を捨てて口調をがらりと変えた。当然だが両親からの指示で、ローラのことを手加減せず教育してほしいということだった。
「伯母様ってこんなに厳しいの?前は穏やかなお方だったのに……辛くて寂しい……お兄様は今なにをしてるのかしら?」
ローラは小さくつぶやくような声を発する。もう逃げようという意志はないようだ。不意にミカエルのことを考えてしまう。
想う気持ちを言葉にできないまま、生き別れになったローラは兄の温もりを感じるのだった。
「息子とやり直すことはできないのでしょうか?」
「無意識にそのようなことができる時点で駄目ですね」
ミカエルの父は神妙な顔つきで頭を垂れている。その隣には息子のミカエルが床にひれ伏したまま身動き一つしない。
クロエはローラが家に住む経緯をミカエルの口から聞いて、怒り半分呆れ半分の表情で溜息をついて苦笑する。
ここまで根性曲がりな性格の男だったとは思わなかった。クロエは詳しく話を聞くまでは、新たなる気持ちで関係を築き、自分たちの結婚生活を再開しようと告げる決心をしていた。
だが隠しごとを知ってしまったら、それを望むのは無理なこと。信頼感が失われて不信が膨らむ状況では、ミカエルとの結婚を容易に続けるのは不可能だという最終的な結論に達した。
「息子が悪いのですから仕方ありません」
「ミカエルが申し訳ございません」
「私もミカエルのことを愛していたので悲しいです」
ようやく納得した様子で、父が口を開いた。そして母も続けてクロエに今までのミカエルの非礼を詫びる。目には涙を一杯溜めて、唇をかみしめながら言う。
クロエも深い愛を確認し合った相手との別れに、非常に複雑な心境が顔に出ていた。二人は結婚して僅か一ヶ月ほどで正式に離婚することになった。
両親はローラの状況も少し語ってくれた。母の姉である伯母からの手紙では、ローラは生活面までも厳しく管理されて、そのことに対して不満があったためか一度逃げ出そうと、窓から飛び降りるがその際に片脚を折ってしまった。
それから伯母からの長い説教がはじまり、とにかくローラの考え方は根本的に間違っていると、いつまでもくどくどと言い聞かした。その結果、伯母に恐怖心を覚え大声で叫ばれた命令には反射的に従うようになる。
「逃げようなんて考えないことね。最もその足では無理でしょうけど」
これまで伯母はローラに、どちらかと言えば柔らかい口調で接していたので、ローラは伯母の家での生活は安心できる場所を獲得したと軽く考えていた。
ところが徹底的にしごかれる生活を送ることになって、落ち込んだ表情になりがちでした。伯母は情を捨てて口調をがらりと変えた。当然だが両親からの指示で、ローラのことを手加減せず教育してほしいということだった。
「伯母様ってこんなに厳しいの?前は穏やかなお方だったのに……辛くて寂しい……お兄様は今なにをしてるのかしら?」
ローラは小さくつぶやくような声を発する。もう逃げようという意志はないようだ。不意にミカエルのことを考えてしまう。
想う気持ちを言葉にできないまま、生き別れになったローラは兄の温もりを感じるのだった。
「息子とやり直すことはできないのでしょうか?」
「無意識にそのようなことができる時点で駄目ですね」
ミカエルの父は神妙な顔つきで頭を垂れている。その隣には息子のミカエルが床にひれ伏したまま身動き一つしない。
クロエはローラが家に住む経緯をミカエルの口から聞いて、怒り半分呆れ半分の表情で溜息をついて苦笑する。
ここまで根性曲がりな性格の男だったとは思わなかった。クロエは詳しく話を聞くまでは、新たなる気持ちで関係を築き、自分たちの結婚生活を再開しようと告げる決心をしていた。
だが隠しごとを知ってしまったら、それを望むのは無理なこと。信頼感が失われて不信が膨らむ状況では、ミカエルとの結婚を容易に続けるのは不可能だという最終的な結論に達した。
「息子が悪いのですから仕方ありません」
「ミカエルが申し訳ございません」
「私もミカエルのことを愛していたので悲しいです」
ようやく納得した様子で、父が口を開いた。そして母も続けてクロエに今までのミカエルの非礼を詫びる。目には涙を一杯溜めて、唇をかみしめながら言う。
クロエも深い愛を確認し合った相手との別れに、非常に複雑な心境が顔に出ていた。二人は結婚して僅か一ヶ月ほどで正式に離婚することになった。
160
あなたにおすすめの小説
我慢しないことにした結果
宝月 蓮
恋愛
メアリー、ワイアット、クレアは幼馴染。いつも三人で過ごすことが多い。しかしクレアがわがままを言うせいで、いつもメアリーは我慢を強いられていた。更に、メアリーはワイアットに好意を寄せていたが色々なことが重なりワイアットはわがままなクレアと婚約することになってしまう。失意の中、欲望に忠実なクレアの更なるわがままで追い詰められていくメアリー。そんなメアリーを救ったのは、兄達の友人であるアレクサンダー。アレクサンダーはメアリーに、もう我慢しなくて良い、思いの全てを吐き出してごらんと優しく包み込んでくれた。メアリーはそんなアレクサンダーに惹かれていく。
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…
アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。
婚約者には役目がある。
例え、私との時間が取れなくても、
例え、一人で夜会に行く事になっても、
例え、貴方が彼女を愛していても、
私は貴方を愛してる。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 女性視点、男性視点があります。
❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。
私は家のことにはもう関わりませんから、どうか可愛い妹の面倒を見てあげてください。
木山楽斗
恋愛
侯爵家の令嬢であるアルティアは、家で冷遇されていた。
彼女の父親は、妾とその娘である妹に熱を上げており、アルティアのことは邪魔とさえ思っていたのである。
しかし妾の子である妹を婿に迎える立場にすることは、父親も躊躇っていた。周囲からの体裁を気にした結果、アルティアがその立場となったのだ。
だが、彼女は婚約者から拒絶されることになった。彼曰くアルティアは面白味がなく、多少わがままな妹の方が可愛げがあるそうなのだ。
父親もその判断を支持したことによって、アルティアは家に居場所がないことを悟った。
そこで彼女は、母親が懇意にしている伯爵家を頼り、新たな生活をすることを選んだ。それはアルティアにとって、悪いことという訳ではなかった。家の呪縛から解放された彼女は、伸び伸びと暮らすことにするのだった。
程なくして彼女の元に、婚約者が訪ねて来た。
彼はアルティアの妹のわがままさに辟易としており、さらには社交界において侯爵家が厳しい立場となったことを伝えてきた。妾の子であるということを差し引いても、甘やかされて育ってきた妹の評価というものは、高いものではなかったのだ。
戻って来て欲しいと懇願する婚約者だったが、アルティアはそれを拒絶する。
彼女にとって、婚約者も侯爵家も既に助ける義理はないものだったのだ。
醜い私は妹の恋人に騙され恥をかかされたので、好きな人と旅立つことにしました
つばめ
恋愛
幼い頃に妹により火傷をおわされた私はとても醜い。だから両親は妹ばかりをかわいがってきた。伯爵家の長女だけれど、こんな私に婿は来てくれないと思い、領地運営を手伝っている。
けれど婚約者を見つけるデェビュタントに参加できるのは今年が最後。どうしようか迷っていると、公爵家の次男の男性と出会い、火傷痕なんて気にしないで参加しようと誘われる。思い切って参加すると、その男性はなんと妹をエスコートしてきて……どうやら妹の恋人だったらしく、周りからお前ごときが略奪できると思ったのかと責められる。
会場から逃げ出し失意のどん底の私は、当てもなく王都をさ迷った。ぼろぼろになり路地裏にうずくまっていると、小さい頃に虐げられていたのをかばってくれた、商家の男性が現れて……
【完結】精神的に弱い幼馴染を優先する婚約者を捨てたら、彼の兄と結婚することになりました
当麻リコ
恋愛
侯爵令嬢アメリアの婚約者であるミュスカーは、幼馴染みであるリリィばかりを優先する。
リリィは繊細だから僕が支えてあげないといけないのだと、誇らしそうに。
結婚を間近に控え、アメリアは不安だった。
指輪選びや衣装決めにはじまり、結婚に関する大事な話し合いの全てにおいて、ミュスカーはリリィの呼び出しに応じて行ってしまう。
そんな彼を見続けて、とうとうアメリアは彼との結婚生活を諦めた。
けれど正式に婚約の解消を求めてミュスカーの父親に相談すると、少し時間をくれと言って保留にされてしまう。
仕方なく保留を承知した一ヵ月後、国外視察で家を空けていたミュスカーの兄、アーロンが帰ってきてアメリアにこう告げた。
「必ず幸せにすると約束する。どうか俺と結婚して欲しい」
ずっと好きで、けれど他に好きな女性がいるからと諦めていたアーロンからの告白に、アメリアは戸惑いながらも頷くことしか出来なかった。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
【完結】大好きな彼が妹と結婚する……と思ったら?
江崎美彩
恋愛
誰にでも愛される可愛い妹としっかり者の姉である私。
大好きな従兄弟と人気のカフェに並んでいたら、いつも通り気ままに振る舞う妹の後ろ姿を見ながら彼が「結婚したいと思ってる」って呟いて……
さっくり読める短編です。
異世界もののつもりで書いてますが、あまり異世界感はありません。
【完結】姉の婚約者を奪った私は悪女と呼ばれています
春野オカリナ
恋愛
エミリー・ブラウンは、姉の婚約者だった。アルフレッド・スタンレー伯爵子息と結婚した。
社交界では、彼女は「姉の婚約者を奪った悪女」と呼ばれていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる