私を大切にしなかった貴方が、なぜ今さら許されると思ったの?

佐藤 美奈

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後悔しても遅い

「僕が、馬鹿だったんだ! 君が、クロイツベルク家の、こんなにも素晴らしいご令嬢だったなんて……! 知っていたら、あんな……! あんなひどいことを、言うはずがなかった!」

その瞳に浮かぶ涙は、私と母を見下した過ちへの悔いではなかった。彼が後悔しているのは逃した魚の大きさと、目の前の富と地位を失うことへの涙。本当は何も反省していなくて口先だけで謝っているに過ぎない。エリザベートはヴィクトルが実に愚か者に感じた。愚か者は続ける。

「お願いだ、エリザベート! もう一度、僕にチャンスをくれないか! 君を、愛しているんだ! 心から、君を愛している! 僕と、結婚してくれ!」

彼は叫んだ。かつて、私に婚約破棄を突きつけた同じ口で。エリザベートは、自分のドレスに触れる彼の指を、冷たく振り払った。

「おやめなさい。汚らわしい。あなたが愛しているのは、私ではありませんわ、ヴィクトル様。この『クロイツベルク』という世界を統べる名前と莫大な財産だけでしょう?」

私は、床に這いつくばる元婚約者を見下ろした。

「あなたが、あの日に私に言った言葉をお忘れになりましたの?」
「な、なにを……?」
「貧乏で卑しい親子だと侮辱されたことを、私は決して忘れません」
「それは、軽い冗談で……」
「『家格が違いすぎる』と。ええ、まったく、その通りですわ。あなた方ハリントン家と、私たちクロイツベルク家とでは、あまりにもが違いすぎますもの」

恥ずかしい言い訳を繰り返すヴィクトル。私は、二人きりで話した時、彼が私に投げつけた言葉を、そのままそっくり返してあげた。

「あなたとの婚約など、こちらから願い下げですわ。あなたのなど必要ありませんの」

「そん……な……」

ヴィクトルの顔から表情が消えた。彼は計り知れないショックを受けて、希望が断たれた瞬間、力なく崩れ落ちた。

シャーロットが、最終宣告を下す。

「ハリントン伯爵。あなた方の事業計画、大変興味深く拝見いたしました。……結果は、もちろん、不合格ですわ」
「ど、どうかお願いいたします!」
「投資の話は、すべて白紙に撤回させていただきます。娘との婚約があれば、手を差し伸べたでしょうが」
「お願いです、どうか……再考していただけませんか……?」
「先日の顔合わせで事業の話をする予定でしたが、あなた方に侮辱されて、残念ながらその機会は失われました」

母の言葉は、伯爵家の事実上の破産宣告そのものであり、すべては彼ら自身が招いた結果だった。

「ああ……ああ……我らの、ハリントン家が……終わった……」
「いやああああああああああああ!」

ジェラルド伯爵は、うわごとのように呟き、イザベラ夫人は、甲高い悲鳴を上げて気を失った。私と母は、床に転がる三つの哀れな抜け殻を見て、顔を見合わせてから思わず呆れた表情を浮かべた。

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