妹に婚約者を奪われましたが、私の考えで家族まとめて終わりました。

佐藤 美奈

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第11話 職場の女帝失脚

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次なるターゲットは、メイド長のドロテア夫人だ。彼女は継母イザベルの腰巾着で、屋敷内の情報をイザベルに流すスパイの役割を果たしている。さらに、リネン類や備品の管理を任されているのをいいことに、屋敷の物を私物化していた。

私は、執務室にドロテアを呼び出した。彼女は、見るからに不満を抱えていると分かる表情のまま部屋に入ってきた。制服の着こなしも乱れており、身だしなみに気を配る様子はない。本来なら模範となるべきメイド長であるはずなのに、その姿からはだらしない印象しか受けなかった。

「お呼びでしょうか、お嬢様。私も忙しいのですが」
「ええ、忙しいでしょうね。屋敷のシーツやタオルを、実家の宿屋に横流しする作業で」

私は単刀直入に切り出した。変化球は投げなく、剛速球で眉間を撃ち抜くのみだ。

「な、何を馬鹿なことを! 侮辱ですわ!」
ならあるわ」

私は机の上に、一冊の帳簿と数枚の伝票を叩きつけた。

「リネンの補充頻度が、使用頻度に比べて異常に高い。先月だけでシーツを五十枚も『破損のため廃棄』として処理しているけれど、この屋敷で毎晩シーツ引き裂き大会でも開催されているのかしら?」

「そ、それは……質の悪い生地だったのです! すぐに破れてしまって……」

「その『破れたシーツ』が、なぜあなたの実家の宿屋で、新品同様に使われているのかしら? 昨日、使いの者に泊まらせて確認させたわ。刺繍の裏にあるフォンテーヌ家の紋章、消し忘れていたようね」

ドロテアの顔が凍りついた。彼女の実家は下町の宿屋で、私はそこへ内密に調査員を送り込んでいたのだ。

「窃盗罪で衛兵を呼んでもいいのだけれど、家の外聞に関わるわ。だから、慈悲をあげましょう」

私は、羊皮紙とペンを彼女の前に押しやった。

「自己都合による退職届を書きなさい。そうすれば、警察沙汰にはしない。ただし、二度とこの屋敷の敷居は跨がないこと。そして、継母かあ様には『実家の母の介護で急遽帰ることになった』と伝えること」

「そ、そんな……奥様が許すはずがありません!」
「あの人があなたを庇うと思う? 『私の指示で横流しをしていました』と自白するつもりなら止めないけれど、そうなれば継母様も共倒れね。……あのプライドの高い継母様が、あなたを守るために泥を被るかしら? それとも、トカゲの尻尾切りにするかしら?」

ドロテアは震え出した。彼女も分かっているのだ。イザベルという人間が、いかに薄情で自己中心的かということを。自分が助かるためなら、忠実な手下であろうと平気で切り捨てるだろう。

「……わかり、ました……」

彼女は涙目でペンを取り、震える手で退職届にサインした。文字が歪んでいるが、法的効力には問題ない。

「ご苦労様。荷物はジェラルドに点検させてから出て行くように。銀食器の一つでも紛れていたら、その時は衛兵を呼ぶわ」

ドロテアは逃げるように部屋を出て行った。これで、イザベルの手足であり、目耳となっていた最大の情報源を断った。情報遮断ブラックアウトは、戦いにおける基本的な戦術だ。これからは、イザベルは屋敷の中で何が起きているか、正確に把握できなくなるだろう。相手が何も知らずに右往左往している間に、こちらは静かに盤面を整える。
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