妹に婚約者を奪われましたが、私の考えで家族まとめて終わりました。

佐藤 美奈

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第29話 彼の衝撃的な頼み

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障害物(ローザ)を排除したシュナイダー様は、何事もなかったかのように私の前まで歩いてきた。そして、さっきの冷たい顔を変えて、少しだけ口角を上げてニッと笑った。

「……見つけたぞ、セリーヌ」
「ごきげんよう、シュナイダー様。先ほどは……素晴らしい切れ味でしたわ」
「邪魔な石ころが転がっていたのでな……あれはなんだ?」
「義妹のローザが失礼な振る舞いをいたしました。お許しいただければ幸いです」
「別に気にしていないさ。ただ、あのような義妹がいるとなると、セリーヌもしているのだろうな」
「ええ、そうですね。が絶えませんわ」
「……それより、今日の貴女は悪くない」

彼は私のドレスを上から下まで眺めた。

「華やかな飾りに頼らず、素材そのものの良さを大切にしている。貴女の合理的で芯の強い性格がよく表れている」
「お褒めいただき光栄です(たぶん褒められているのよね?)」
「単刀直入に言おう。私と踊れ」

彼は手を差し出した。周囲にどよめきが広がった。誰もがシュナイダー様の言葉に驚き、予想外だったかのように反応している。

「あの氷鉄公爵が、ダンスを?」
「フォンテーヌ公爵家のセリーヌ嬢ではなくて?」
「先ほどの“恥ずかしい妹”の姉でいらっしゃるのでしょうか?」
「あれが家族の一員だなんて信じられませんわ」
「あんなに品のない振る舞いを見せられると、家族としての“しつけ”や”教育”がどうなっているのか、つい疑ってしまいますわね」

本当に見とれてしまうほど美しくて上品なご婦人方は、ローザへの皮肉を忘れることはなかった。

「……よろしいのですか? 私と踊れば、シュナイダー様の評判に傷がつくかもしれませんわ。我が家は今、色々と『噂の的』ですから」

「他人の評価など、私の人生における変数ではない。私が評価するのは、私の目で見た事実だけだ」

シュナイダー様は言い切った。声には迷いがなく自信に満ちた姿は、どんな困難でも乗り越えられるかのようだ。彼が無敵のヒーローのように頼もしく見えた。何があっても怖くないと、そう思わせてくれる強さが感じられた。彼はそのまま言葉を続けた。

「貴女はとても優秀で美しくて、しかも、ちょっと変わった魅力を持つだ。正直、私でもあなたの頭の中は謎だらけだよ。だから、私が踊りたいのは貴女だけなんだ。これは命令じゃなくて、お願いだ。どうか、一緒に踊ってくれないか?」

ローザには上から目線で偉そうだったが、私には下からお辞儀をして頼んでいる。その違い(ギャップ)に衝撃を受けた。でも引き寄せられるようなカリスマ性を持っている彼に、断る理由なんてどこにも見つからなかった。私は扇子を閉じて、彼の手の上に自分の手を重ねた。

「喜んでお受けしますわ。……ただし、ひとつだけ条件がございます。もし私の足を踏んだら、その場で慰謝料を請求させていただきますから、その覚悟はしておいてくださいね。足元にも気を使わないと、あとで大変なことになりますわよ?」

「フッ……相変わらずだな。安心しろ、心配しなくても、計算通りにリードしてやるよ。もちろん、無理に引っ張ったりはしないさ。君のペースを大事にして、なるべく気を使いながら、優しくてゆっくりとね。だから、安心して任せてくれ」

彼の言葉には、どんなリスクも承知しているかのような余裕が感じられた。

私たちがホールの中央に進み出ると、楽団がワルツを奏で始めた。彼の手は大きくて温かくて、何もかもお見通しのようにかっこよく引っ張ってくれた。それなのに私の呼吸に合わせて、私が思ったことを先に読んでくれるかのようだった。すごく気持ちよくて、周りのことを忘れてしまったような感じがした。

(エドガー様と踊った時のような『足を踏まれないか気にするストレス』とは、まるで比べ物にならない。頼もしくも、さりげなく先導してくれるシュナイダー様に身を任せるだけで、舞踏会の主役になった気分だわ)

私たちは回転してステップを踏んだ。彼の黒と私の深い青色の組み合わせはシンプルだけど、それが逆に大人っぽくて洗練されて見えた(そうだと思いたい)。会場の人たちの目が私たちに集中しているのが感じられた。その中には、悔しそうに泣いているローザもいるだろう。そんな中で、私は最高の気分だった。

曲が終わり、私たちが一礼をした瞬間、みんなが大きな拍手を始めた。でも、その拍手の中から、突然怒った声が飛んできた。

「――またお前か! セリーヌから離れろ! 荒々しい野生のような手を離せ!」

エドガー様だ。彼は人がたくさんいる中を、道を作るように押しのけて進んできた。顔を真っ赤にして目はギラギラしていて、怒りでどうにかなりそうな顔をしていた。

「セリーヌは僕のだと言ったのを忘れたのか!? 僕のものだ! 泥棒猫男め、他人の女に手を出すな!」

エドガー様はシュナイダー様に掴みかかろうとした。
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