妹に婚約者を奪われましたが、私の考えで家族まとめて終わりました。

佐藤 美奈

文字の大きさ
31 / 38

第31話 男は泣き叫ぶ

しおりを挟む
「――男性機能の不調か。腰も振れなくなった無能なオス犬に同情はするが、彼女を裏切った事実に変わりはない」

シュナイダー様は厳しく言い放った。でも、その言葉の通りで、エドガー様が私を裏切ったという事実は変わらない。男性としての不調を理由に、ローザとの関係をごまかしてはいけない。ローザとベッドに入ったという事実は、どんな言い訳をしても消えることはないし、二人で一緒に私を見下していたことは、絶対に許せることではないのだ。

シュナイダー様は私の方を向き、腰に手を回して引き寄せた。

「おいっ! 何をしてるんだ! 僕のに手を出すなんて、絶対に許さない!」

エドガー様は恥ずかしい気持ちを感じていたが、それ以上に私を取られてしまいそうだという怒りが強くなっていたようだった。

「彼女は今日から、私の『最高財務顧問』に就任する予定だ(本人未承諾だが)。貴様のような破産寸前のオス犬が、気安く近づいていい相手ではない」

「僕のセリーヌが……最高財務顧問……?」

「そうだ。私の領地の全権限に近い決裁権を持つポストだ。つまり、今の彼女は、貴様の一族全員を買い取れるほどの価値があるということだ」
 
シュナイダー様の言葉に、会場が一斉にざわつき、あちこちから声が聞こえた。

「バイオレッド公爵家の財務顧問!?」
「セリーヌ嬢が?」
「まさか、あのような立場を得るなんて……」
「これはまさに、“大出世”というほかありませんわ」
「素晴らしい成果でございますね」

誰もがその言葉の重さに圧倒され、驚きと興奮しているのが伝わってきた。

「う、嘘だ……そんなの認めない! セリーヌ、君も言ってやってくれ! 僕を愛してるって! 僕とやり直したいって!」

エドガー様は口をパクパクさせている。彼にとって私は『便利な財布』でしかなかったが、それが今や『手の届かない高嶺の花』になったことを突きつけられたのだ。

「エドガー様が私にできることは一つだけです。私に借金を返すこと。それ以外に、貴方との接点を持つつもりはありません」

「セ、セリーヌぅぅぅ! お願いだよ、僕を見捨てないで! だって、もし君が僕を見捨てたら、僕はどうすればいいんだよ!?」

エドガー様は、私にすがりつこうとした。その惨めな姿を見て、以前は愛していたと思っていた顔も、今では欲望の塊にしか見えない。

「エドガー様。私の辞書から『復縁』という項目は削除されました。バックアップもございませんわ」

ローザとベッドに入ったことも裏切りに他ならないが、これまで彼が私を軽んじてきた行為そのものが許しがたいことだった。

「セリーヌだけがなんだ! お願いだ、頼むから、助けてくれぇ! もうどんな約束でもするから!」

「そのような汚れた手で私にさわらないでください」

「な、なんで!? 婚約者の僕に、そんなひどいことを言うんだ!?」

「お分かりでしょう? 貴方のような者に、私の肌を汚されることは耐え難いことなのです」

「そうだ! 君の好物のチョコレートを、僕が毎日作るから許してくれぇぇ! パティシエから教わったレシピで、ちゃんと本格的に作るんだ! だからお願い、もう一度チャンスを! ど、どうしてそんな冷たい目で僕を見てるんだ! 明日から毎日『君のことが世界で一番大切だ!』って言うから! お願いだよ、許してくれぇぇぇ!」

「エドガー様のことは愛していませんと申し上げましたわよね? それを、貴方がいまだに理解できていないというのは驚きですわ。いくらなんでも頭が悪すぎますよ?」

「どうして僕をこんなにも傷つけるんだあああああ!! 男の大事な部分が立たなくて僕は苦しんでいるのに!!」

「エドガー様が、男性としての自信を失ったのは、日頃の振る舞いがあまりにも無責任であったからに他なりませんわ」

「こんなこと、あり得ないよぉ! 僕は何も悪くないのに、なんでこんな目に遭うんだよぉぉ! やだ、やだよぉ! お願いだよ、セリーヌぅぅぅ! こんなに愛しているのに、どうしてわかってくれないんだぁぁぁぁぁ!」

「貴方の品位を欠く行動や態度が、こうした結果を招いたのでしょう」

「うわああああああああああああ」

そして、先ほどエドガー様の告白に深く同情していた美しい御婦人方にも、次第にその表情が変わり始めた。

「な、なんですか!? あの下品なオス犬は?」
「まったく恥知らずな男ですわね!」
「エドガー様は、本当に情けない限りですわ」
「セリーヌ様を裏切っていたのは、本当のようですわね」
「しかも、相手が義妹のローザ様だなんて……」
「セリーヌ様のお気持ちを思うと、心が痛みます」
「元気をなくした男のシンボルでも、『我慢しなさい!』と言いたい気分ですわ」
「ベッドに入った事実がある以上、言い逃れはできませんね」
「もしであったなら、間違いなくそのようなことをしていたことでしょうね」

最初は、エドガー様の男性機能の不調に対して、優しい目で見守っていた御婦人方も、エドガー様の言動があまりにも不誠実に感じられた。同情の気持ちはすっかり薄れ、代わりに彼への不信感が広がっていったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなた方が後悔しても私にはどうでもいいことです

風見ゆうみ
恋愛
チャルブッレ辺境伯家の次女である私――リファーラは幼い頃から家族に嫌われ、森の奥で一人で暮らしていた。 私を目の敵にする姉は、私の婚約者や家族と結託して、大勢の前で婚約を破棄を宣言し私を笑いものにしようとした。 しかし、姉たちの考えなどお見通しである。 婚約の破棄は大歓迎。ですが、恥ずかしい思いをするのは、私ではありませんので。

婚約破棄されたので昼まで寝ますわ~白い結婚で溺愛なんて聞いてません

鍛高譚
恋愛
「リュシエンヌ・ド・ベルナール、お前との婚約は破棄する!」 突然、王太子フィリップから婚約破棄を告げられた名門公爵家の令嬢リュシエンヌ。しかし、それは義妹マリアンヌと王太子が仕組んだ策略だった。 王太子はリュシエンヌが嘆き悲しむことを期待するが—— 「婚約破棄ですね。かしこまりました。」 あっさり受け入れるリュシエンヌ。むしろ、長年の束縛から解放され、自由な生活を満喫することに! 「これでお昼まで寝られますわ! お菓子を食べて、読書三昧の生活ができますのよ!」 しかし、そんな彼女の前に現れたのは、王太子のライバルであり冷徹な公爵・ヴァレンティン・ド・ルーアン。 「俺と婚約しないか?」 政略的な思惑を持つヴァレンティンの申し出に、リュシエンヌは「白い結婚(愛のない形式的な結婚)」ならと了承。 ところが、自由を満喫するはずだった彼女の心は、次第に彼によって揺さぶられ始め——? 一方、王太子と義妹は社交界で次々と醜態をさらし、評判は地に落ちていく。 そしてついに、王太子は廃嫡宣告——! 「ええ? わたくし、何もしていませんわよ?」 婚約破棄された令嬢が、のんびり自由を謳歌するうちに、 いつの間にか勝手にざまぁ展開が訪れる、痛快ラブストーリー! 「婚約破棄……むしろ最高でしたわ!」 果たして、彼女の悠々自適な生活の行方は——?

身代わりの恋だと思っていました〜記憶を失った私に、元婚約者が泣いて縋る理由〜

恋せよ恋
恋愛
「君を愛している。一目惚れだったんだ」 18歳の伯爵令嬢エリカは、9歳年上のリヒャルト伯爵から 情熱的な求婚を受け、幸せの絶頂にいた。 しかし、親族顔合わせの席で運命が狂い出す。 彼の視線の先にいたのは、エリカの伯母であり、 彼の学生時代の恋人で「初めての女性」だった……ミレイユ。 「あの子は私の身代わりでしょう」「私はあなただけなの」 伯母ミレイユの甘い誘惑と、裏切りの密会。 衝撃の事実を目撃したエリカは、階段から転落し、 彼と過ごした愛しくも残酷な二年間の記憶だけを失ってしまう。 「……あの、どちら様でしょうか?」 無垢な瞳で問いかけるエリカに、絶望し泣き崩れるリヒャルト。 裏切った男と、略奪を企てた伯母。 二人に待ち受けるのは、甘い報復と取り返しのつかない後悔だった。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

婚約破棄と暗殺で死んだはずの公爵令嬢ですが、前に出ずに全てを崩壊させます

鷹 綾
恋愛
フォールス・アキュゼーション。お前に全ての罪がある」 王太子フレイム・ファブリケイト・ロイヤル・ロードは、自らの失策を公爵令嬢フォールスに押し付け、婚約を破棄。 さらに証拠隠滅のため、彼女を追放し、暗殺まで差し向ける。 ――彼女は、死んだことにされた。 だがフォールスは、生き延びた。 剣も魔法も持たず、復讐に燃えることもない。 選んだのは、前に出ないという生き方。 隣国で身を潜めながら、王弟エクイティ・フェアネス・ロイヤル・ロードのもと、 彼女は“構造の隣”に立つ。 暴かず、裁かず、叫ばない。 ただ、歪んだ仕組みを静かに照らし、 「選ばなかった者たち」を、自ら説明の場へと追い込んでいく。 切れない証人。 使えない駒。 しかし、消すこともできない存在。 これは、力で叩き潰すザマアではない。 沈黙と距離で因果を完成させる、知的で冷静な因果応報の物語。 ――前に出ない令嬢が、すべての答えを置いていく。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵令息から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

【完結】愛人の子を育てろと言われた契約結婚の伯爵夫人、幼なじみに溺愛されて成り上がり、夫を追い出します

深山きらら
恋愛
政略結婚でレンフォード伯爵家に嫁いだセシリア。しかし初夜、夫のルパートから「君を愛するつもりはない」と告げられる。さらに義母から残酷な命令が。「愛人ロザリンドの子を、あなたの子として育てなさい」。屈辱に耐える日々の中、偶然再会した幼なじみの商人リオンが、セシリアの才能を信じて事業を支援してくれる。

誰からも必要とされていないから出て行ったのに、どうして皆追いかけてくるんですか?

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢ミリーシャは、自身が誰からも必要とされていないことを悟った。 故に彼女は、家から出て行くことを決めた。新天地にて、ミリーシャは改めて人生をやり直そうと考えたのである。 しかし彼女の周囲の人々が、それを許さなかった。ミリーシャは気付いていなかったのだ。自身の存在の大きさを。

処理中です...