妹に婚約者を奪われましたが、私の考えで家族まとめて終わりました。

佐藤 美奈

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第38話 人生で幸せを感じる瞬間

「わ、笑うところではありません!」
「いや、すまない。まさかここまでだとはな」

シュナイダー様は立ち上がって、おとぎ話の王子様みたいに私の手を取って膝をついた。

「セリーヌ、こちらのセリフを奪わないでくれ。私も、最初からそのつもりだった」

彼は私の指に指輪をはめた。大きなサファイアの指輪で、その輝きは彼の瞳と同じ色をしていた。

「愛している、とは言わない。そんな不確かな言葉よりも、もっと『確実な約束』をしよう」
「……どんな?」
「私の人生の半分を貴方に預ける。そして、貴女の人生の半分を私が背負う。二人の能力を掛け合わせれば、幸福の総量は二乗になる。そういう計算式だ」

なんて理屈っぽくて、色気のないプロポーズだろう。でも、私にはそれが何よりも甘くて愛おしく響いた。

「……計算が合っていますわ。その方程式、採用させていただきます」

私が答えると、彼は嬉しそうに私の手を引き寄せて、今度は薬指にキスをした。

――それから一年後。私は北の辺境、バイオレッド公爵領にいた。ここの気候は厳しいが、人々は温かくて活気に満ちている。そして何より、ここには“やりがいのある仕事”が山ほどあって忙しくても楽しい。

「閣下! 都市開発計画の予算案ですが、第三工区のコストが見積もりより一割超過しています!」
「何をしている! 資材の調達ルートを見直せと言ったはずだ!」
「現場からは『地盤が固くて工事が難航している』との報告が……」
「言い訳無用だ! 仕方ない……セリーヌ、悪いが現場へ行って修復してくれ」
「了解しました! その前に、今夜の夕食のメニューですが」
「……シチューがいい」
「畏まりました、あなた」

執務室で怒号を飛ばし合いながら私たちは笑い合う。これが私たちの日常だ。恋人であり、夫婦であり、戦友であり、最高のビジネスパートナーでもある。シュナイダー様(今はと呼んでいる)と一緒に、領地を豊かにしてみんなを守るんだ。忙しくも充実した日々は、実家での虚しい労働とは比べ物にならないほど輝いていた。

たまに風の噂で、昔の家族たちがどうなったかを聞くことがある。エドガーは、鉱山での過酷な労働に耐えられなくて逃げようとして失敗し、そのせいでさらに刑期が延びたらしい。今では「昔は伯爵だったんだ」と言って、年寄りみたいにぶつぶつ言っているそうだ。イザベルとローザは、『死の大地』で毎日泥だらけになりながら芋を掘っているって聞いた。ローザは激痩せして今ではスリムな体型を手に入れたらしいけど、それを飾るドレスはもうなかった。

「ざまぁみろ」とは思わない。彼らは彼ら自身の選択の結果(アウトプット)を受け取っただけだ。因果応報。入力されたデータ通りに人生は出力される。

私のお腹の中には小さな命が育っていた。誰にもまだ言っていないけど、これから家族が増える。

「セリーヌ、どうした? 手が止まっているぞ」
「いいえ、なんでもありません……ただ、今の私の『幸福度』を計算していたのです」
「ほう、結果は?」

私は満面の笑みで夫に答えた。

「測定不能(インフィニティ)ですわ」

私たちの人生という壮大な愛と計算の数式は、これからも続いていく。どんな難問が待ち受けていようとも、二人なら正解を導き出せるはずだ。

最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
この物語を、皆さまと共有できたことが何よりの幸せです。
またどこかの物語でお会いできますように。

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