病弱な幼馴染を守る彼との婚約を解消、十年の恋を捨てて結婚します

佐藤 美奈

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死ぬ覚悟で全てを賭ける

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アルディンはグラディウス家の壮麗な屋敷の前に立っていた。リーシャを説得できていないことに焦りを感じながらも、せめて自分自身の過去の行いを謝りたかった。

グラディウス家の屋敷を前にして、アルディンは改めて自分の転落を痛感した。セフィーナと婚約していた時は、何の気なしに通り抜けていたこの門が、今は遥かに高く遠いものに感じられた。

「この豪華な屋敷を見ると、自分の家なんて足元にも及ばないと実感する。上級貴族の館にさえ劣らない、いや、それ以上の荘厳さを誇る邸宅だ」

改めて見ると、セフィーナの家は素晴らしい。もちろん、アルディンの家よりも何倍も立派で、上級貴族にも劣ることはない。セフィーナの祖父が、一代で莫大な財を成し遂げたと、前に彼女から聞いたことを思い出していた。

「セフィーナお嬢様はお出かけ中です。お引き取りくださいませ!」

案の定、アルディンは門前払いされてしまった。応対したメイドは冷ややかな顔でアルディンを見つめ、軽蔑の感情を隠すことなくその視線に表してきた。

それは当然の結果だ。婚約を解消した原因が自分にあるし、大事なセフィーナお嬢様を長年にわたって、道具のように扱ったことが使用人たちにも知られているに違いない。冷たくされても、それに反論することはできなかった。

「情けないが、これしか方法はないか。私は死んだようなものだし、死ぬ気になったら何でもできる」

アルディンは、全てを賭けて命がけという思いで最後の手段を取る決意をした。使用人が何かの用事で出てきた瞬間を見計らい、彼はその前で土下座した。恥ずかしい思いをするが、これが最善の手段だと閃いた。

「お願いです! セフィーナお嬢様が今どこにいらっしゃるのか、教えていただけませんか?」

これほどまでに低姿勢を見せるのは、あり得ないほど稀なことだ。たかがメイドに、伯爵家の嫡男がこのように頭を下げるなんて。先ほど応対したメイドではなく、若く小柄な新人のメイドだった。いきなりの貴族だろう男の土下座を見て驚きに顔を固くした。その若いメイドは整った顔立ちの美人だが、顔のパーツがやけに中心に寄っていた。

驚きで言葉を失っていたメイドも、アルディンの切羽詰まった様子に押し切られたのだろう。

「ここで私が話したことを、絶対に他の人には言わないなら……」
「約束する! 絶対に言わない!」

メイドは、やれやれと深いため息をつきながら、セフィーナが王都のカフェで友人とお茶をしていることを教えてくれた。メイドは、私が教えたことを決して誰にも話さないように、何度も念を押してきた。アルディンはその場の雰囲気に流されて真剣な顔で返答したが、実際にはあまり深刻に考えていなかった。

教えられたカフェにたどり着き、不審者ではないと自分に言い聞かせながら、通り沿いの木々の陰からそっと中の様子を伺う。そこには、オープンカフェでお茶を楽しんでいるセフィーナの姿があった。パラソルの下、友人たちと和やかに話しながらくつろいでいる。

「いた!」

その瞬間、アルディンの胸は強く締め付けられるように痛んだ。セフィーナが、心からの明るい笑顔を浮かべている。自分と一緒にいた頃には決して見せなかったような、無邪気で幸せそうな表情だ。

「そうか、セフィーナは婚約を解消して、新たな幸せを見つけたんだな」

自分が彼女の隣にいた十年間は、彼女から笑顔を奪い、心に暗い影を落としていたということを、痛感せずにはいられなかった。
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