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第23話
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「なるほど……本当はセリーヌ様が病気を治していたのに、ステファニーが治したと皆が誤解していたのですね」
実際にはほとんどセリーヌが困窮している患者たちの病気を回復していた。と言っても聖女の手伝いを申し出た気だてのよい令嬢という印象が持たれているだけでした。
「そうであろうな」
「ですが、ドラゴン様なんでセリーヌ様は言わなかったのでしょうか?」
「セリーヌ様はトラブルを避けて、余計な波風を立てないように生活したかったと話してくれた事があったな」
竜が頷き返すとアランがどうして? という顔で尋ねた。セリーヌは自分が能力がある女性だとなんで隠していたのか? すると竜がセリーヌとの交わした会話の断片を思い出して語った。
彼女は人々が笑顔で暮らし、平和な日々が続くことを望んでいた。公爵令嬢でひときわ光彩を放つ美しい顔立ちである。さらに特別な能力を持っていると告白すれば、セリーヌの事をよく思っていない人間が良からぬ噂を流すことを危惧していた。
「そうでしたか」
「彼女は平和的かつ、良心的な性格をしておるからな」
アランはそれで、やっと納得がいった。そう言えばセリーヌは学園生活を送っていた時は、言い寄ってくる男が多かった。彼女の清楚な美しさに胸がキュンとしてしまった男子生徒が、事あるたびに色々なやり方で口説いてきた。
アランは幼馴染としてそのような奴らは、冷たくあしらっておけとセリーヌに言いましたが、彼女はいつも優しい笑顔で接していた。ゆがんだ顔でニキビ面で太って、見るからに暑苦しそうに額に汗を浮かべている男にも、丁寧に一礼して微笑み返して愛想よく断わっていました。
「セリーヌ様に触れられないと叫んでいた者が何人もいましたが、その謎が解けました」
しかしそんなセリーヌの性格を逆手に取って、嫌らしく粘着質に迫ってくる人もいる。断るセリーヌの身体に強引に触れようとした。だが竜に能力を与えられているので、何故か分らないけど男は少しも彼女に触れなかった。
『何で……? 彼女にさわる事ができないんだよおおおおおーっ!!』
何度触ろうとしても見事に空振りをする。セリーヌの手を握ろうとした男はみっともなく奇声を上げて騒ぎますが、その理由は竜の守りによって自分に悪意のある人を自動的に認識して拒絶しているのだった。
「セリーヌ様は昔から、誰よりも素晴らしい女性でしたね……」
「そうであろう。彼女は他の者とは比べられぬ実に気品ある女性だ」
竜とアランはどこか深い部分でわかり合っているような思いであった。最初にアランが竜に言葉をかけた時は、本能的な恐怖に身体が震えて足が竦んでいたが、今はとても和やかな雰囲気に包まれていた。
実際にはほとんどセリーヌが困窮している患者たちの病気を回復していた。と言っても聖女の手伝いを申し出た気だてのよい令嬢という印象が持たれているだけでした。
「そうであろうな」
「ですが、ドラゴン様なんでセリーヌ様は言わなかったのでしょうか?」
「セリーヌ様はトラブルを避けて、余計な波風を立てないように生活したかったと話してくれた事があったな」
竜が頷き返すとアランがどうして? という顔で尋ねた。セリーヌは自分が能力がある女性だとなんで隠していたのか? すると竜がセリーヌとの交わした会話の断片を思い出して語った。
彼女は人々が笑顔で暮らし、平和な日々が続くことを望んでいた。公爵令嬢でひときわ光彩を放つ美しい顔立ちである。さらに特別な能力を持っていると告白すれば、セリーヌの事をよく思っていない人間が良からぬ噂を流すことを危惧していた。
「そうでしたか」
「彼女は平和的かつ、良心的な性格をしておるからな」
アランはそれで、やっと納得がいった。そう言えばセリーヌは学園生活を送っていた時は、言い寄ってくる男が多かった。彼女の清楚な美しさに胸がキュンとしてしまった男子生徒が、事あるたびに色々なやり方で口説いてきた。
アランは幼馴染としてそのような奴らは、冷たくあしらっておけとセリーヌに言いましたが、彼女はいつも優しい笑顔で接していた。ゆがんだ顔でニキビ面で太って、見るからに暑苦しそうに額に汗を浮かべている男にも、丁寧に一礼して微笑み返して愛想よく断わっていました。
「セリーヌ様に触れられないと叫んでいた者が何人もいましたが、その謎が解けました」
しかしそんなセリーヌの性格を逆手に取って、嫌らしく粘着質に迫ってくる人もいる。断るセリーヌの身体に強引に触れようとした。だが竜に能力を与えられているので、何故か分らないけど男は少しも彼女に触れなかった。
『何で……? 彼女にさわる事ができないんだよおおおおおーっ!!』
何度触ろうとしても見事に空振りをする。セリーヌの手を握ろうとした男はみっともなく奇声を上げて騒ぎますが、その理由は竜の守りによって自分に悪意のある人を自動的に認識して拒絶しているのだった。
「セリーヌ様は昔から、誰よりも素晴らしい女性でしたね……」
「そうであろう。彼女は他の者とは比べられぬ実に気品ある女性だ」
竜とアランはどこか深い部分でわかり合っているような思いであった。最初にアランが竜に言葉をかけた時は、本能的な恐怖に身体が震えて足が竦んでいたが、今はとても和やかな雰囲気に包まれていた。
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